**** バック ****
[ウォズニアッキの両手打ちバックハンド]
 ウォズニアッキ(CAROLINE WOZNIACKI)は、19歳でランキングを12位にまで上げた。ジュニア時代からスーパージュニアや、ジャパンオープンジュニアで来日しているため、彼女のプレーを生で見た人は多いだろう。ジュニア時代は安定感のあるプレーで勝利を収めていたが、WTAツアーに舞台を移した、ここ数年は身体つきもしっかりとしてきて、ショットにパワーが付いてきている。
 連続写真を見てみよう。高いボールだが、ベースラインから下がらずに打っている。それも、ジャンプしつつ前に押し出すようにスイングすることで、ただ返球するだけではないパワーのあるボールになっている。着地後もバランスが崩れていない点も見事だ。
[クルム伊達公子のバックハンドのダウンザライン]
 全日本選手権で見事優勝したクルム伊達公子のキラーショット、バックハンドのダウンザラインです。プロテニスプレーヤーの世界では、このダウンザラインを効果的に打てるか否かで、試合の勝率にも大きく影響してきます。連続写真を見てもわかるように、しっかりとボールを自分のふところに呼び込み、クロス、ストレートのどちらも打てる体勢から、ダウンザラインへと打ち込みます。無理やり打つのではなく、タイミングを見極めることが重要です。(スマッシュ1月号P44にて詳しい解説をしています)
[ディナラ・サフィーナのバックハンド]
 東レPPOで優勝したサフィーナ(Dinara Safina)が現在ランキングを自己最高の2位に上げている。今シーズン初めは、何もかもがうまくいかなくてどん底状態だったのが、コーチが決まってからは、グングンと成長している。コーチへの信頼や、家族については、現在発売中のスマッシュ12月号にインタビューが掲載されているので、興味を持った人は読んでみてほしい。
 さて連続写真を見てみよう。これはバックの逆クロスに打ったと思われる。踏み込み足である右足が、逆クロスの方に踏み込まれているし、打球後も逆クロスの方向に向けてラケットをしっかりと押し出している。この踏み込む方向とスイングの方向が一致しているところが、パワーロスを最小限に抑えることにつながっているのだ。打つ前は完全に背中が見えているが、肩甲骨のあたり、かなり鍛えていることがわかる。
[錦織圭のバックハンドストローク]
 AIGオープンで3回戦に進出した錦織圭のバックハンドストロークです。有明のような速いサーフェスでは、回り込む余裕もなく、リカバリーも大変なので、バックハンドの安定感が必要です。これまでもウィークポイントでは決してなかったのですが、相手に攻撃されないボールを打ち続け、次第にラリーの主導権を握っていく、というバックハンドが打てていました。(スマッシュ12月号P80で詳しい解説をしています)
[ホアン・マルティン・デルポトロのバックハンド]
 デルポトロ(Juan Martin Del Potro)が上昇中! 全米オープンでは錦織圭と対戦し、AIGオープンでも決勝に残ったので、記憶している人は多いだろう。全米前には4大会に優勝しており、現在20歳で、すでに9位にランクイン。今後ナンバー1を狙える選手なのだ。
 身長198cm、78kgとかなり体格がいい。ポイント間はのっそり動いている感じがするが、プレーが始まると素早い動きに早変わりする。大柄な選手にありがちな動きの鈍さがない点が彼のすごいところ。
 連続写真を見てみよう。ベースラインから下げられている状態だが、左足の軸がしっかりと決まっており、ヒザを曲げてタメを作れている。後ろから前へとスイングして、身体の回転も十分に使っているため、重いボールが打てていることがわかる。このポジションでも良いボールが打てる上、リーチがあるため、ベースラインより後方にいても、攻撃できてしまう優位さがある。
[トーマス・ベルディフのバックハンド]
 チェコ出身でモナコ在住のベルディフ(Tomas Berdych )は、昨年AIGオープンでベスト4に入っており、今年も出場予定。195cm、90kgと、テニス選手の中でも体格に恵まれているため、1球1球に重みがあるようなショットを打つ。しかし、1発狙いというわけではなく、丁寧さもあるため、一時はATPランキング9位にまでいったことがある。
 連続写真を見てみよう。とにかくヒザの曲げ方がすごい。ボールが深いと判断し、後ろに下がろうとしている最初の段階で、すでに十分にヒザが曲がっている。一歩目は大きく下がり、二歩目でボールとの距離を調整して後ろ足をセット。最初から最後まで後ろ足のヒザが十分に曲がっているため、重心が低く保たれている。上半身だけのパワーに頼らずに、丁寧に打っていることがわかるバックハンドだ。
[S・バウリンカの片手バックハンド]
 2008年5月12日付けで初めてトップ10入りしたバウリンカ(Stanislas Wawrinka)です。今までそれほどメジャーではなかったので、プロフィールを紹介しましょう。1985年3月28日、スイス生まれ。182cm、79kg。2002年にプロ転向。父親がドイツ人で、母親がスイス人、祖父母はチェコ人です。1歳上の兄はテニスを教えており、2人の妹は学生さん。彼は8歳でテニスを始め、15歳でテニスに集中するために学校に行くのをやめて、サテライトサーキットを回りはじめました。聞いた話では、フェデラーと一緒に練習することもあるようです。
 2003年の全仏オープンJr.に優勝しており、クレーを最も得意にしています。そして、ベストショットはバックハンド。では、彼の連続写真を見てみましょう。テイクバックの段階で肩がしっかりと入っています。振り出す前のラケットの位置と、打点でのラケットの位置がそれほど変わっていないことから、厚い当たりでパワーのあるボールが打てています。打点時には身体の右側に壁が作れているため軸がぶれることなく、左手を後ろ側にキープしておくことで、身体の回りすぎを抑えることで、鋭いスイングを行なえています。
[T・ハースの片手バックハンド]
 フォームがとてもキレイで一般の我々にも参考にできる点が多いハースです。一時はランキング2位になったこともあるのですが、故障で思うようにランキングが維持できず、08年4月で30歳になります。ドイツ出身で、現在はアメリカのボロテリーで練習しており、日本の錦織も一緒に練習してもらうこともあるそうです。
 さて、片手バックハンドの連続写真です。素早く準備をしており、ヒザもしっかりと曲がり、上半身もひねられています。インパクトに向けてヒザの曲げと共に、身体のひねりも開放していますが、身体の右側を軸にして、身体の左側を流されずに留めることでよりスピードとパワーを出しています。打ち終わった後は、左足を横に出して次のショットの準備を行なおうとしていることがわかります。
[T・ハースの片手打ちバックハンド]
 インパクトで最大限の力を発揮しようと思ってしまうと、打点でそれ以上ボールを押すことができません。大切なのはインパクトの直前に最大限の力を発揮し、スイングスピードを最速にするという意識です。このハースのスイングのように、インパクトポイントはボール2個分手前にあると思いましょう(スマッシュ3月号20ページで詳しい解説をしています)。
[錦織圭のバックハンド]
 07年のAIGオープンでプロに転向し、久々に日本のファンの前でプレーを披露した錦織圭。彼のプレーを楽しみにしていた人も多かったのではないでしょうか。残念ながら1回戦負けとなってしまいましたが、将来の可能性を感じさせてくれました。フォアハンドは以前に紹介しているので今回はバックハンドの連続写真です。テイクバックでラケットヘッドが十分に下がっており、打点に向けて左手が力強く働いていることがわかります。最初の段階からヒザがしっかりと曲がっており、打点まで軸がまっすぐに保てているため、パワー負けしないのでしょう。打球後は身体を流して次のショットの準備にかかっています。
[J・エナンのバックハンドストローク]
 バックハンドをエナンのように厚いあたりで強打しようとすると、打点の範囲が狭くなります。エナンは最高の打点で打つ能力が高い選手です。しかし、それは彼女の並外れた身体能力と、フットワークの良さがそうさせていると言えます(詳しいことはスマッシュ11月号P16で解説しています)。
[N・ジョコビッチのバックハンドリターン]
 USオープンで自身初のグランドスラム決勝に進出した20歳のジョコビッチ。フェデラーに敗れてしまいましたが、大きな可能性を見せてくれました。現在のランキングはフェデラー、ナダルに次いで3位に位置しており、8月に開催されたマスターズ・カナダでは決勝でフェデラーに初めて勝利しています。彼もイバノビッチ、ヤンコビッチと同様に今最も勢いがあるセルビア人です。連続写真はバックハンドのリターン。素早く左足をボールの後ろにセットし、ヒザも十分に曲げてタメを作っています。打点は力が入りにくい肩の高さですが、タメた力をボールにぶつけ、右足を前に出しながら打っているため、しっかりとパワーのあるボールになっています。高い打点で捕らえるときにも、最初はヒザを曲げてタメを作るということを参考にしてください。バランスが崩れることなく最後まで打てている点も見事です。
[杉山愛のバックハンドリターン]
 速いサービスをリターンできるようになると、試合で有利になります。リターンミスの多くは準備が遅いこと。ボールに合わせて十分な準備ができれば、自分のボールにして返すことができるのです。杉山愛の連続写真を見ていただければわかるように、スプリットステップをした後すぐに身体をひねり、準備をしています。速いサービスではタイミングを早く取ることで、その後の展開が有利になります(07年スマッシュ6月号P24にて詳しく解説しています)。
[A・チャクベターゼのバックハンドストローク]
   彼女は昨年末から急激に力をつけてきている選手です。ティアVの大会でツアー初優勝を飾ったすぐ後に、母国モスクワで並み居る先輩ロシア勢を負かして、ノーシードから優勝しました。今年20歳になる若手有望株で、今季の全豪オープンではベスト8に進出。同じロシア人で同じ年のシャラポワに敗れたものの、ランキングを13位にまで上げてきています。連続写真は、バックハンドのリターン。コンパクトなテイクバックで、打つ前は背中が完全に見えるほど上半身のひねりができています。ラケットを振り出すと同時に左足を蹴って、右足を前に出しているため、身体が前に行く力も利用しています。高い打点で打っていますが、下から上のスイングでしっかりとスピンがかかっていることもわかります。
[杉山愛のバックハンドストローク]
   両手バックハンドストロークがクロスにしか打てなくて悩んでいる方は、右手だけでラケットを引っ張っている方が多いようです。もっと左手を使ってバックハンドを打つようにすると、コントロール力が磨かれていきます。杉山選手のバックハンドは、その良いお手本となるもので、インパクト後、左手でラケットを前に押し出すようにすると、ストレートへのコントロールも可能になり、加えて威力も増します(詳しくはスマッシュ3月号P18-19にて解説しております)
[M・サフィンの両手打ちバックハンド]
   一般プレーヤーが陥るスランプの一つに、「ハードヒットが入らない!」という症状があります。打ち込もうと思ったボールに限って、当たりがかすれたり、ふかしたりしてしまうのです。その症状の改善策の一つに「打点を遅らせてみる」というのがあります。前で捕らえようとしすぎると、身体のひねり戻しがうまく使えず、ボールが伸びず、スピンもかからないのです。この連続写真のサフィンのように、少しタイミングを遅らせて、ボールを打ってみてはいかがでしょうか?(詳しくはスマッシュ2月号P12-13にて解説しております)
[A・イワノビッチのバックハンド]
    ブレイクするかと思われた06年は、それほど目立った成績は出せませんでしたが、高いポテンシャルを持っているため、いつトップクラスに入ってきてもおかしくない選手です。07年東レPPOにも出場を予定しており、もしかしたら、そこでブレイクすることだってあるかもしれません。身長183cm、体重73kgという体格からも想像できるようにパワフルなテニスをします。連続写真をみてください。後ろ足をセットした後、前足のヒザをグッと落としているために、重心が低くできており、タメを作れています。そこで作ったパワーを無駄にすることなく、見事に体重移動ができています。身体全体で打ったショットであることがわかります。
[R・ナダルのバックハンドストローク]
    テニスでは、ボールがどこに飛んでくるか、そしてボールにどう入るかということが、ショットを成功させる大きな要素となってきます。ナダルはバックサイドに来ると判断した直後、すぐに動き出し、下半身を軸がブレないようにセットしてから、ラケットを振り出しています(詳しい解説はスマッシュ1月号P16に掲載しております)。
[A・ロディックのバックハンドボレー]
    両手打ちバックハンドストロークの方はバックボレーを両手で打ったほうが安心するとは思いますが、初級者の段階から片手で打つ習慣をつけることをおすすめします。ロディックもバックハンドストロークは両手ですし、ボレーも決して得意とは言えないのですが、そのぶん基本に忠実に、丁寧に打とうとしていることがわかります。左手をインパクトの直前までラケット面に添え、安定させています。(スマッシュ12月号P32-33にて詳しい解説をお届けしております)
[T・ヘンマンのバックハンド]
    AIGオープンで準優勝したヘンマンです。現在は少しランキングを落としていますが、まだまだ頑張る32歳。彼はもともとサーブ&ボレーヤーですが、ここ数年ベースラインでもプレーを展開しています。この連続写真はリターン。バックに来るとわかった瞬間にテイクバックを開始し、同時にふんばる左足をセットしています。上体を十分にひねっているため、小さめのテイクバックでもパワーのあるボールが打てています。自分の身体よりも前でボールを捕らえた後、ストレートに打つために、しっかりとラケットが前方に振り出されています。
[A・アガシのバックハンド]
    今年の全米オープンで引退すると発表したアガシです。ウインブルドンでは3回戦でナダルに敗れ、ウインブルドンの舞台から観客の拍手に包まれて去っていきました。全米オープンではどんな最後の姿を見せてくれるのか楽しみです。アガシが36歳までプレーできた理由の一つに、早いタイミングで打てるストロークが武器だったことが挙げられるでしょう。このタイミングを可能にしているのは、最小限のテイクバックです。このテイクバックでもパワーがあるショットが打てるところが天才的なところです。打球後には左腕がまっすぐ前方に伸びており、後ろから前にしっかりと押し出すスイングをしていることがわかります。
[O・ロークスの片手バックハンド]
    片手バックハンドのプレーヤーで、高い打点を苦手とする選手が多いようです。これをうまく返すには、165cmの身長であるにもかかわらず、ATPツアーで活躍しているO・ロークスのスイングを参考にしてください。ラケットを高くセットし、そのまま一直線に振りぬいているのがわかります。(スマッシュ6月号P18にて詳しい解説をお届けしております)
[杉山愛のバックハンド]
   杉山選手がナスダック-100(ティアT)でベスト8に進出しました。今季のスタートがあまりよくなかっただけに、この大会で勢いに乗ってほしいところです。彼女のバックハンドは安定しており、最大の武器でもあります。注目してほしい点は、早い段階で後ろ足のポジションが決まっていること。多少食い込まれた状態で打っていますが、後ろ足を踏ん張ることで軸を作り、ラケットを前方に押し出してスイングできています。打ち終わった後もバランスが取れているため、次のショットへの対応もすぐに行なえる状態になっています。
[M・ヒンギスのバックハンド]
  2006年から復帰した元女王のヒンギス。また彼女のプレーを大舞台で見られるのは楽しみです。ここでは、以前のヒンギスの連続写真を紹介しましょう。長い距離を走っていますが、スイングをスタートさせた時点では、左足を踏ん張り、壁を作ってバランスを保てています。ラケットを下から出してスイングしていますが、最後は左手で前に押しているため、ショットにパワーも加わっているでしょう。打ち終わった後に、着地した左足で勢いをつけ、すぐにセンターに戻ろうとしていることがわかります。
[A・モーレスモのバックハンド]
  最終戦でとうとうビッグタイトルを手にすることができたモーレスモ。メンタルの弱さが、大舞台で力を発揮できない要因だといわれていましたが、これで彼女も自信がついてグランドスラムタイトルも取れるかもしれません。彼女は女子選手では珍しい、片手バックハンドです。早い段階でテイクバックが完了しており、余裕を持って打ちにいけています。身体の中心に軸があり、その軸が保たれているため、速いスイングスピードが可能になっています。
[マラット・サフィンのジャックナイフ ]
より高い打点で叩きこみたい場面で使われる、プロならではの技術、ジャックナイフです。 本来ならばバックハンドストロークの軸足となる左足を空中に上げて打つので、一般の方がやると軸や打点がブレがちなのですが、サフィンは姿勢を保ちながら身体をひねりこむことで、バランスよく打っています。このショットを成功させるコツは、地面に足をつけて普通に打つことを完璧に身に付けていることが必要です(スマッシュ11号P14-15にて詳しい解説があります)。
[キム・クリステルス ]
全米タイトル獲得に向け、準備は万端
左手首の故障から今年2月に復帰し、インディアンウェルズ、そしてマイアミと2連勝して怪気炎を上げたものの、フレンチオープン直前に右ひざを故障するというハプニングに見舞われたキム・クリステルス。しかし、夏の訪れとともに、再び復活ののろしを上げた。カリフォルニアで行なわれたバンク・オブ・ウェスト・クラッシックではビーナス・ウィリアムズをストレートで下し今季3勝目。USオープンでのタイトルも期待できる。
彼女のリターンの素晴らしさは、この連続写真でもわかるように、フォロースルーの長さだ。左腕全体で押し出すようにするこのフォロースルーが、ボールに威力を与え、コートのラインぎりぎりに落ちる深いボールを生み出している。フラつかない、安定した下半身も重要なポイントだ。
[セレナ・ウィリアムズのバック ]
 03年のウインブルドン以来、今年の全豪で久々のGSタイトルを奪取したセレナ。彼女の特徴は意外にも、全てのプレーが基本に忠実という点だ。まるでジュニアの選手のように、全てのプレーを丁寧に行ない、少しもいい加減な部分がない。彼女ほどのパワーの持ち主なら、いい加減にスイングしてもそれなり以上のボールを作れると思うのだが、まるで小さな子供が先生のいいつけを忠実に守ろうとでもしているかのように、手抜きをせず、しっかりと打っている。逆に言うと、そうやってプレーできている時の彼女は本当に強い。
 さて、この場面では実に素早くラケットをテイクバックしている。いわゆるテイクバックした状態でボールを待っている形だ。運動連鎖のコンテクストで言うと、この場面では彼女は引くのが早過ぎたために一度動作が止まり、動きが一度途切れてしまっている。普通であれば、ここからパワーのあるボールは作りにくいのだが、彼女は「振り遅れるほうが嫌だ」というつもりで、テイクバックを早くしているのだろう。彼女はこの「二度引き」の傾向の強い選手で、ここから持ち前のパワーを爆発させる能力を持っている。彼女が使うラケットがその身体の割にパワー系のラケットだったりする理由も、案外このスタイルに理由があるのかもしれない。
[マラット・サフィンのバックハンド]
 お手本のような、とよく形容されるのがサフィンのバックハンド。全体にコンパクトで打球までの動作に全く無駄がない。これでミスすることなどあり得なそうにも見えるほどだ。彼はテイクバックからインパクトまでは同じ動作で、そこから先の動作でコースや深さを打ち分ける選手だが、全体でスイングを作っていく中で、前に大きく出せば深く、そして強く、コンパクトに上に振り上げれば短く、あるいは角度をつけたショットになっていくというわけだ。しかし、テイクバックからインパクトまでの動作ではどちらの方向に打って来るのか予測がしにくい。彼が強いのは、そのパワーに起因するものだけではなく、ほとんどパーフェクトなテクニックがバックボーンになっているのは、もっと再評価されるべきではないかとも思われる。メンタルの不安定さが足を引っ張っている形だが、 妙におとなしくなったサフィンは見たくない気もする。このままで強くなって欲しいが……。
[アルベルト・コスタのバックハンド]
 クレーコートのシーズンと言えばコスタ。パッと見ただけだとなぜ彼がクレーでそんなに強いのかが理解しにくいかもしれませんが、まず、とにかく心身がタフなこと。5セットマッチの最後まで戦っても切れないスタミナと、2セットダウンしても「まだ勝てる」と考えられるメンタルの両面が彼の強みの出発点。技術的には「両サイドにフォアを持つ男」という異名が彼の凄味を表しています。つまり、バックハンドをフォアと同じように打てるということ。普通、片手バックハンドではショートアングルは打ちにくいし、打点の自由度も低い選手がほとんどですが、彼の場合はフォアとほとんど変わらない打角をバックにも持っているのです。確かにフォアの方が強力で、彼自身スキあらばフォアに回り込んで強打してきますが、バックからでも自在に展開できるのです。この能力が彼をクレーの上では絶対的な選手にしているのでしょう。
[ドキッチのバックハンド]
 最近は影が薄くなりがちですが、当たった時の威力では屈指のストロークを持つのがこのドキッチ。ライジングというよりも、トップ打ちの彼女の場合、威力以上に相手を左右に振り回す自在なコントロールが要。ライン上に打ち分けられている時の彼女はトップ10級の強さを見せられる選手です。最近は身辺が落ち着かないことがブレイクしきれない理由かも。
[マリア・シャラポワのバックハンド]
 先日のAIGジャパン・オープンで優勝したマリア・シャラポワ選手のバックハンドです。これはやや差し込まれた場面ですが、スイング自体をコンパクトに調整して、強気に攻撃に出ています。こんな場合にはいくつかの選択肢があるものですが、一度つなぐか、あくまでも攻め切っていくかとなった場合、彼女はほとんどのケースで攻撃を選択するようです。ここはアメリカでテニスを学んだ選手らしい部分と言えるかもしれません(彼女はロシア生まれですが)。ただし、つなぐと言っても現在のプロの世界では「ただ返すだけ」では意味がないため、つないでおいて次のチャンスに結びつけるためには、実はかなりの技術が必要なのも事実。どちらの方がリスクが高いか、となった時に、彼女はまだ「つなぐ」という選択をできないのかもしれません。