**** ボレー&スマッシュ ****
[錦織圭のフライングジャックナイフ]
 スピード化が叫ばれる現代テニスにおいて、浮いた球をより速いタイミングで仕留める必殺技がこのフライングジャックナイフです。錦織選手の代名詞ともなりうるこのショットですが、恐ろしいことにこんなに飛んでいても身体の軸がまったくブレていません。これは錦織選手だからできるのであり、誰でもマネをして簡単にできるものではないので注意してください。1本鋭いショットで相手を追い込んでおいて、ネットに出てきてこのショットを放つ。錦織選手はこのパターンを大きな武器としているのです。(スマッシュ5月号P16-17において詳しい解説をしています)
[A・マリーのバックボレー]
 イギリス期待の選手であるA・マリー。もう3年も前になりますが、2005年のウインブルドンで、当時312位だった彼が突然3回戦に進出し、ヘンマンの後継者として注目を集めました。その後順調に成長し、現在(2008.1.7.)はATPランキング9位にまで到達。今年は早速ドーハで優勝しているので、ますます活躍が期待できそうです。
 今回はバックハンドボレーの連続写真です。まずは、フットワーク。ネットへと詰めているときにも、前傾姿勢になることなく軸が保たれているため、視線が上下にブレていません。サービスライン付近までは大またで移動していますが、その後に細かいステップで調整しており、余裕を持ってボレーを打つ体勢に入っていることがわかります。バックボレーは力が入りづらいショットであるため、テイクバックの段階で上半身をしっかりと捻り、最後は大きなステップでボールに力を伝えています。右手と対照的に左手を後ろに引っ張るようにすることで、バランスが取れている点にも注目してください。
[F・ゴンザレスのフォアハンドボレー]
 中級レベルになったら、ボレーにスライス回転をかけて、深さの調節ができるようになって欲しいものです。ポイントとしては、ラケット面の角度を変えずに、上から下へボールを押し運ぶようにすること。感覚がわからない人はある程度大げさにやってみることも必要です。右手をボールの高さに合わせてセットし、ラケット面でインパクトすると、自然とラケットが上から下へと降りていき、スライス回転がかかります。ゴンザレスの連続写真を見てください。手の高さに一度ラケットをセットして打ちに行っていることがわかります。また、足をしっかり使ってボレーしているところは大変参考になります(詳しくはスマッシュ12月号、P32-33にて解説しております)。
[M・バグダティスのローボレー]
  ボレーを苦手とする方は、打点の位置がつかめていないことが多いようです。ボレーの基本となる打点は、踏み込み足の前。バグダティスのローボレーを見ていただければわかるように、足の前でボールを捕らえています。ローボレーは特に普段のボレーよりも前で捕らえることを意識しましょう(スマッシュ5月号 P24−25で詳しく解説しています)。
[M・アンチッチのフォアハンドボレー]
  長身ながらも基本をしっかりと押さえている、アンチッチのフォアハンドボレーです。最も注目して欲しいのが、ラケットセットです。右足を前に出すと同時にコンパクトにラケットが準備され、左手でバランスをとっています。準備が身体の後ろになるとボールに遅れることが多く、パワーが逃げてしまい、ボールをブロックすることができません。あくまでも身体の前にラケットをセットし、インパクトすることが大切です(スマッシュ9月号付録P6−7にて詳しい解説をお届けしております)。
[マッケンローのボレー]
  今月は調査団のコーナーでリクエストのあった、マッケンローのボレーをお届けします。彼のボレーが「マジカル」と言われた理由を知りたいということでのリクエストでしたが、彼のボレーはほとんど彼オリジナルの感性によるもので、いわゆる「基本」とは違っている部分が少なくありません。彼は手首で面を平気で操作し、ラケットを寝かせて打ったり、顔とラケットを遠ざけるような打ち方でボレーしてみたりと、変幻自在にボレーしました。そのため、「特殊で誰にも真似ができない」と言われたのです。しかし、改めて考えてみれば、これは「飛んでいくボールが最も効果的な所に飛べばよい」という非常に合理的な考え方が元にあったとも考えられます。彼は自分のやり方でそれを実行していただけで、彼自身にとっては何ら特殊な部分はなかったはずです。ただ、これだけは言っておきたいのですが、下手に彼のフォームを真似しようなどとは思わないこと。すでに過去20数年間、数多くのマッケンローファンがそれに試みて失敗してきた歴史があります。彼のプレーができるのは、彼だけなのです。
[ティム・ヘンマンのローボレー]
 一般プレーヤーでは、上級者になるほどラケット捌きでごまかしてしまいがちになるのが低いボレー。もちろん、それでいいという場面もありますが、1ポイントを争うプロたちの場合、一般プレーヤーより置かれた条件がよりシビア。彼らがしっかりと低い姿勢を作ってボレーするのはそのためです。低い姿勢を作って普通のボレーと同じ上半身の状態を作れば、難しい低いボレーでもミスの可能性を減らせます。よりていねいにボールを扱おうとしているわけです。打ち方以前の問題で、彼らのこうした考え方やテニスに対する姿勢、プレーのシビアさに思いを馳せてみてください。いい加減な打ち方をしている選手は、意外に成績もそれなり、という感じがしませんか?