**** フォアハンド ****
[N・ジョコビッチのジャンピングフォアハンド]
 スピード化が進むテニス界において、このジャンピングショットは代表的な技術と言えます。少しでも高い打点でボールを捕え、フラット気味に強打できるのがこのショットの特徴です。ポイントとなるのは、ただジャンプするだけでは良いスイングにならない、ということです。身体のひねりと連動させないと、スイングの加速が不可能です。ひねり戻しを使うことによって、うまく飛びながら打つことができます(詳しくはスマッシュ6月号、12ページで解説しております)。
[A・ラドワンスカのフォアハンドリターン]
 08年の全豪オープンで初のグランドスラムベスト8に入ったラドワンスカ。彼女は元ジュニアナンバー1で、05年にウインブルドンJr.、06年にフレンチオープンJr.に優勝しています。父のコーチの元、4歳でテニスを始めて、05年4月の16歳でプロに転向。妹のウルズラもテニス選手でJr.ナンバー1の座を獲得しているテニス家族です。
 ラドワンスカはベースライナーで安定感があるプレーをします。素早くテイクバックし、ラケットはボールの高さと同じ場所にあるため、前にスイングすればいいだけの状態になっています。小さいスイングながらパワーも出せているのは、左足を踏み込みながら打っているから。ただし、初級者の方が同じように踏み込みながら打つとミスの元となるので注意してください。
[M・キリレンコのフォアハンドストローク]
 スピンをかけようとしすぎて手首をこねて打ってしまうと、ボールが散らばってしまい、自分の打ちたい方向にコントロールできない場合があります。それを改善するには、キリレンコのスイングのように、正しい打点の形に手首を維持して、テイクバックをすること。そのまま押し出せば打ちたい方向にコントロールできます(詳しい解説はスマッシュ4月号P16にて掲載しています)。
[A・チャクベターゼのチャンスボール]
 スクエアスタンスでチャンスボールを打とうとするとうまくいかない方に試していただきたいのが、このように右足を前にセットし、身体のひねり戻しを使ってスイングする方法です。身体の近づきすぎや、手打ちになってしまう方には効果てきめんです(詳しい解説はスマッシュ1月号P24-25にて紹介しています)。
[D・フェレールのフォアハンド]
 AIGオープンで優勝したD・フェレールです。決勝の試合を見た人は彼のプレーの良さに驚いたのではないでしょうか。自分でも「今が最高」と言っているだけあって、素晴らしいプレーでした。特に感動したのが、あのフットワークです。彼の身長は175cmで日本人にとってはちょっと親近感が持てると思います。それでも現在のランキングは7位。その強さはどんなボールでも取れてしまえるフットワークにあるのでしょう。
 連続写真を見てください。深いボールが来たと判断した時点で後ろにステップしています。最後の一歩は広く取り、軸となる右足にグット力を入れています。かなりライジングで捕らえていますが、これが返球可能なのは、右側に作った壁がブレていないため。打ち終わった後に左足が上がった段階でも、壁が崩れていない点にフィジカルの強さを感じさせられます。
[M・キリレンコのフォアハンドストローク]
 スピンをかけるためにマスターしたいスイングがワイパースイングです。打球後、身体の前で円を描くようなスイングのことで、これによってボールに回転がかかります。この連続写真のポイントはフィニッシュの形。ヒジが口のあたりまで上がり、逆にラケットヘッドは下がっています。大きなスイングでスピン回転をかけたことがわかります(詳しくはスマッシュ10月号P22-23で解説しております)
[ラファエル・ナダルのフォアハンドストローク]
 クレーコートでのサービスは、打った後の動きを重視しているため、次に備えてあまり大きくはありません。ナダルはサービスを打った後、大きく回り込んでいます。弧を描くようにフットワークを使い、ラケットを大きく振りきっています。ナダルは1本で決めようなどとは思わず、打ち合って打ち合って相手にダメージを与えるタイプ。この軽快なフットワークこそが、彼の大きな武器なのです(スマッシュ8月号P76−77にて詳しい解説をしています)。
[A・ロディックのフォアハンドストローク]
 ボールにうまくパワーが伝わらないと悩んでいる方は、強烈なスピンをかけつつも、スピードのある重いボールを打つロディックのフォアハンドストロークを参考にしてください。ボールの後ろに入り、後ろ足から前足へ体重移動しながら打っていることがわかります。また、下半身でためたパワーを腰を回転させることにより、スイングに伝えています(07年スマッシュ7月号P18−19にて詳しく解説しています)。
[N・ジョコビッチ]
 07年3月に開催されたパシフィックライフ・オープンで準優勝、ソニーエリクソン・オープンで優勝と、現在最も乗っている19歳といえば、ジョコビッチ。ランキングも自己最高の7位にランクインしています。まだ認知度はそれほど高くないと思いますが、今年はグランドスラムで大暴れするかもしれません。
 彼は一つのショットがずば抜けているタイプではなく、全てのショットがハイレベルで安定して打てる選手です。連続写真を見てください。多少サイド側で打っているにもかかわらず、しっかりと左足を踏み込みスクエアスタンスで打っています。下から上のスイングでスピンをかけていますが、身体のひねり戻しで横の回転も加えているため、ボールにパワーもプラスすることができています。
[N・ダビデンコのフォアハンド]
  認知度はそれほど高くないのですが、現在ATPランキング3位のダビデンコです。USオープンではベスト4、母国のクレムリンカップでは決勝でサフィンに勝利して優勝。その後のテニスマスターズカップ・パリでも優勝し、自己最高ランキングの3位にまで上がってきました。彼の武器の一つは鋭いフォアハンドです。この連続写真は多少後ろに追い込まれた状況ですが、右足で踏ん張って軸を作り、ラケットをほぼボールの真後ろから出しています。打球後もしっかりと前に押し出し、レベルスイングとなっているため、この追い込まれた状況でも威力のあるボールが返球できるのです。
[L・ヒューイットのフォアハンドのフットワーク]
 フットワークが持ち味のヒューイットのフォアハンドストロークです。初級レベルの基本では、細かく足を動かすことが大切ですが、中級以上になると、止まるべきところでしっかり止まることが大切です。その止まるポイントは@相手が打つときA軸足を決めるときB実際に打球するときの3回です。ここで無理なく止まれるようになると、ワンランク上のプレーができるのです。ヒューイットの連続写真から、そのプレーをしっかり実行していることがわかります。(スマッシュ11月号P25にて詳しい解説をお届けしております)
[A・ロディックのフォアハンドストローク]
 10月号、巻頭技術特集で紹介している「振りおくれを防ぐための“ダブルコア”を使ったスイング」のお手本となるロディックのフォアハンドです。右股関節の折り込みでテイクバックを行ない、左肩甲骨と左股関節と真っすぐ結んだ線を引き戻すことによってスイングを行なっています。(スマッシュ10月号P16−17にて詳しい解説をお届けしております)
[錦織圭のフォアハンド]
 全仏オープンジュニアのダブルスで優勝し、シングルスでベスト8に入った16歳の錦織圭。日本人男子としては、初のグランドスラムタイトルです。彼は現在アメリカのニックボロテリーで練習に励んでおり、ジュニアのトップグループの選手たちと刺激し合いながら生活しているようです。彼の得意なショットであるフォアハンドの連続写真を紹介しましょう。多少走らされた状態ですが、右足のセットが早い段階で終了しており、同時に肩も十分に入っています。打つ前の準備段階でこの形が作れているため、上体の捻り戻しと右足の踏ん張りで、パワーのあるショットが打てています。打つ前と後では、頭の位置もほとんど変わっておらず、バランスが崩れていないことにも注目してください。
[R・フェデラーのフォアハンドストローク]
 フェデラーのスイングというものは、「個性=基本の凝縮」といってもいいかもしれません。身体の動きの一つ一つがよどみなく、高い純度で形成されており、どこを取っても完璧に近いことがわかります。
 ラケットにギリギリまで手を添えたテイクバック、また、オープンスタンスの中心に体軸がまっすぐあり、バランスも完璧です。スイングでは、手首より少し遅れてラケットヘッドが出てきて、インパクト後、ヒジが前に出ていきます。これによって伸びのあるボールが生まれています。ごくごく基本的なことを世界一完璧にこなす。だからこそ、彼はNo.1なのです(スマッシュ8月号付録P4−5にて詳しい解説をお届けしております)。
[G・コリアのフォアハンドストローク]
 「生きたボール」「重いボール」というのは、しっかりした身体の使い方ができてこそ生まれるものです。下半身からのパワーをいかに効率良くラケットまで伝えられることが重要なポイントです。「深く打つのが苦手」という方も、小手先だけでボールを飛ばそうとしていることが多いようです。そこで参考にしていただきたいのが、G・コリアのフォアハンドストローク。しっかりと上半身をターンさせてラケットを振り切っているのがわかります。グリップエンドは打ち始めと終わりで正面を向いているのがポイントです(スマッシュ7月号P13にて詳しい解説をお届けしております)。
[R・ナダルのフォアの強打]
 軸足である左足にしっかりと体重を乗せ、その足の蹴り出しによって、力強くスイングを開始しています。胸を張って体幹からのパワーを作りだし、打点で軸がぶれることなく、スイングを終えているのがわかると思います(スマッシュ5月号P18−19にて詳しい解説をお届けしております)。
[E・デメンティエワのフォアハンド]
 デメンティエワがとうとうティアTで優勝しました。それも東レPPOで、という点が日本ファンにとってはうれしいところです。彼女はもともとストローク力には定評がありました。以前はハードヒット以外は知らないようなプレーでしたが、現在は安定したボールも打つようになり、ハードヒットもより活きてくるようになりました。このフォアハンドはオープンスタンスで打っていますが、テイクバックの時点で身体が十分にひねられていることがわかります。軸がぶれていないため、そのひねり戻しの勢いがボールにしっかりと伝わっています。フォロースルーで背中が相手に見えるほど、スイングの勢いにつられて身体が回っている点にも注目してください。
[K・クリステルスのスプリットフォア]
 大きなストライドで、遠くのボールを取りに行くクリステルスならではのシーンです。大きくステップして身体を伸ばしていますが、頭が最後まで倒れていない点に注目してください。頭さえ残っていれば、そこから何かをできる余地が生まれるのです(スマッシュ3月号別冊付録P18にて詳しい解説をしております)。
[N・バイディソワのストローク]
 AIGオープンで優勝したN・バイディソワの連続写真です。ベースラインから高い打点でフォアを叩きこんでいますが、181cmの長身から繰り出すスイングは、さすがに迫力があります。参考にしたい点は、打つ前の構え方です。スタンスがしっかり決まり、上半身がひねられています。一般プレーヤーの方は、上半身のひねりで、左手が遊んでしまっていたり、ヒザが伸びきってしまいがちなのですが、このバイディソワのように、構えをしっかりすることによって、身体のパワーを使ってボールを飛ばすことができるのです。優れた体格たけに頼らない、バイディソワのスイングを参考にしてください。
[タチアナ・ゴロビンのストローク]
 コントロールしようと考えすぎると、ラケットスイングがインパクトで止まってしまいがちです。ラケットを止めてしまうと体重の乗ったボールは打てませんし、スイングするよりも思ったところに飛んでいかなくなる場合もあります。そういうときには、ゴロビンのストロークのようにラケットを背中に当たるくらいまで、思いきって振りぬくようにしましょう(スマッシュ1月号巻頭技術特集P26-27にて詳しい解説をしております)。
[マリア・シャラポワのフォアハンドストローク]
 自分が打てる高さの一番高いところでボールを捕らえています。シャラポワは両股関節の中央に上半身を乗せ、しっかりひねって身体をセットした後、インパクトに向ってラケットを振り出しています。(スマッシュ9月号P10〜11にて詳しい解説があります!)
[アンディ・ロディックのフォアハンド]
 ロディックと言えばサービス、そしてこのフォアだ。最近はあまり目立った舞台で勝てておらず、地元アメリカのメディアも彼を批判的に報じることが増えているが、このウインブルドンでは存在感を見せ付けたいところだろう。
 ところで、芝のウインブルドンは、そのサーフェスの状況が毎年微妙に変化しているようだ。したがって、去年よかった選手でも今年はダメ、ということが現実にありうる。逆に以前はさかんに言われた降雨による固さの変化も、ほぼ全てのコートにヒーター付きのテント型カバーが完備されたことにより、以前ほどの影響はないと言われる。
 ロディックのサービスの威力はツアーでもNo.1級。芝では本来圧倒的有利だ。問題はリターンゲームでいかに相手をブレークできるか。彼が思う存分、このフォアを打ち込んでいられればいいが、さすがに相手もそうはさせてくれない。
 技術的には厚めのグリップからフラットとスピンを使い分けるのがロディックのフォア。フラットの威力は抜群だが、スピンの方が不安。スピン過多で威力が落ちるケースが多く、相手の逆襲を許している。いっそ捨て身で攻撃に徹するというのも芝では重要だとは思うが……
[トミー・ロブレドのフォアハンド]
 ナルバンディアンと比較すると、ダイナミックなフォームで打っているのがロブレド。右肩が完全に前に向き、打ち始めと打ち終わりで身体が180度以上回転しているのがわかると思う。しかし、彼の場合は軸がしっかりとしているため、バランスはキープされていて、打ち終わりの時点でも次への体勢に移行しやすい状態まで戻せている。ここが多くの一般プレーヤーと違うところだろう。「身体を回しすぎ」というアドバイスを受けたことのある人は、打ち終わりの自分の姿勢を再確認してみて欲しい。強いボールを打てたのはいいが、それでバランスを崩していたら、もし、ボールがウイナーにならず、戻ってきたら……。クレー育ちの彼らは、強いボールを打つこと、そして、次のボールに備えることをジュニア時代から徹底的に鍛え上げる。何しろスペインのドリルはスマッシュを打っても返ってくるものと想定するため、スマッシュでフィニッシュとはならないのだ。
 彼はコレッチャやコスタの系譜を継ぐ、正統派のスペインテニスの、さらに強化版といえる存在だが、こうした基本的な部分が継承されているからこそ、「スペインテニスの正統派」と呼ばれるのだろう。
[ダビド・ナルバンディアンのフォアハンド]
 クレーに限らず、全てのサーフェスで実力を発揮できるマルチコート・プレーヤーとして知られるのがナルバンディアン。確かに安定感が要求されるクレーでの戦績も悪くはないが、なかなかタイトルに届かないのは、もう一つ何かの武器が足りないせいかもしれない。ジュニア時代からフェデラーの天敵として知られたが、最近は負けがこんでいるのも、故障が原因ばかりではなく、その成長の度合いに差がついてしまったからかもしれない。
 しかし、技術的に見れば、多くの一般プレーヤーにとって参考にしたい部分がそろっている選手で、特に下半身と軸の安定感は特筆もの。彼がバランスを崩している場面は、なかなか想像しずらいほどだ。基本中の基本としてぜひとも抑えたい部分だが、実は根本的な部分でもあり、一朝一夕に真似ができるわけではない。この連続写真は、それだけ彼がコートで過ごしてきたのだ、と考えて見て欲しい。
[ギレルモ・コリアのフォアハンド]
 写真は昨年の全仏でのものだが、今の彼は身体を一回り大きくビルドアップし、より強くボールを叩けるようになっている。今年こそ全仏のタイトルを、という気合が全身から発散されている。今季はクレーで絶好調のナダルはもちろん、フェレーロも復調気配。ライバルは多いが頑張って欲しいところだ。
 さて、彼のフォアはコンパクトであり、かつダイナミックという二律背反する要素が特長。元々、クレーコーターたちというのは、大きなスイングから強くボールを叩いていく、というスタイルをベースにテニスを構築していることが多いが、これはクレーという遅めのサーフェスではそういうテニスができること、そうしなければ勝てないことが原因。彼らが高速サーフェスにいくとその実力が削がれるのは、大きく強く、という彼らのテニスが、彼らの方法論ではやりにくくなるからだ。しかし、コリアの場合、大きいのは前のスイングで、テイクバック自体は比較的コンパクト。F・ゴンザレスに代表されるような、ダイナミックさはあまり感じさせない(もちろん、大きく振ることもあるが)。ここでは逆クロスへのフォアをコントロールしているが、右利き同士の試合では、相手のバックサイドに打つ形になるため、攻撃の基点となる非常に重要なショット。マスターしておきたい。
[オリビエ・ムティスのアプローチ]
 ジュニア時代にはフランスで「ル・コントの再来」と言われて注目された過去のあるこのムティス。昨年の全仏ではロディックを下すなど大活躍でその才能を示したが、その後はまた沈んでいる「知られざる天才」だ。ジュニア時代には天才と言われていたのに、シニアになって並の選手になってしまう。世界中の彼のような選手は少なくないに違いない。彼の場合は、その有り余るほどの才能に対して、練習が嫌いで、遠征も苦手というタイプだったのが災いした。しかし、元々のテクニックは確かなのも彼ら。一度キッカケさえつかめれば、急浮上できるポテンシャルはある。
 この前に出ながらのアプローチショットは、一見簡単に見えるが、実際にやってみると意外にコントロールが難しいのがこのショット。自分が前に動いている分、スイングを調節しなければならず、効果的なアプローチにするためには、深さやコントロールが求められる。彼はコンパクトなスイングでコントロールしているが、タッチのセンスも問われる。
[ヨアキム・ヨハンソンのフォアハンド]
 彼もジュニア時代から期待された存在で、大阪市長杯ワールドスーパージュニアで活躍したこともあったので、関西地方のファンの方の間では早くから有名だったのではなかろうか。プロに転向後はやや時間がかかったが、大型選手だけに完成にも少し時間が必要だったのかもしれない。彼の代名詞とも言えるのがサービスだが、今回はフォアを取り上げておこう。一見、手打ちに見えやすいのが彼のフォアだが、実際には左足でのブロックを生かしており、全身でラケットを加速し、テイクバックで大きくひねりこんだ腕のパワーが横に流れずにそのままボールに叩きつけられているのがわかると思う。身体が大きい有利さを活用できていない選手も少なくはないが、彼は時間をかけてその有利さを生かしたテニスを構築してきたのだろう。
[アナスタシア・ミスキナのフォアハンド]
 昨年の全仏を制したミスキナ。女子は比較的強い選手は強く、サーフェスを問わないが、彼女の場合も同じで、全仏のタイトルを持っているからと言って、クレーコート・スペシャリストではない。一見すると細身で、非力に見える彼女だが、面を作るのがうまく、ボールに対してスピードをつける能力が非常に高いことで、選手たちからは恐れられている。技巧派、というほど多彩なショットのバリエーションがあるわけではないものの、緩急、急急などテンポとリズムのスイッチングがうまいため、ラリーでは主導権を握れるのも彼女の強みだ。そこに加えてあの負けん気の強さ。圧倒的に勝っているような場面でも、突然何かを叫んでラケットを叩きつける場面もあるのが彼女。それだけ自分に対して完璧なものを求めていればこそ、なのだろう。
[ゴロビンのフォアハンド]
 ゴロビンはフランスで育った選手らしく、類いまれな戦術眼を持っています。攻める時と守るときの判断力が的確で、一見、何も仕掛けてこないような場面もあれば、一気呵成に攻めてくる場面も作ります。全てのテクニックにおいて平均レベル以上の物を持つ彼女は、その使い方に長けている、と言っていいでしょう。選手の中にも、いくつかの強烈な武器を軸にテニスを組み立てていくタイプと、彼女のように全ての武器を場面に合わせてうまく組み合わせていくタイプがいます。この彼女のフォアも特にどこが凄い、という部分は一見するとありませんが、非常に安定しています。彼女はその気になればこのフォアを何百回でも繰り返して同じ場所に打つこともできるのではないか、と思わせるほどの安定感です。リスクを取って強引に攻める時もありますが、それで倒せない相手なら何本でもつなぐテニスもできる。彼女の強みはそうした自在性でしょう。
[ハンチュコワのフォアハンド]
 最近はややスランプ気味のハンチュコワですが、近年のトップクラスの選手の成績が落ちる場合には、技術的に何かが落ちてしまったから、というわけではないケースがほとんどです。その原因としてはまず、故障が挙げられるでしょう。エナン-Hやクリステルスなどがこれに当てはまります。もう一つが実は「足踏み」です。足踏みというのは、技術的、体力的、あるいは精神的な部分での満足感が大きくなってきたときの状況のことで、色々な部分で現状維持となってしまう状態です。ハンチュコワの場合、トップ10に入った時点で自分をより向上させるには、となったところで迷いが出てしまい、それがこの数年のスランプの原因ではないでしょうか。大きなフォームからダイナミックに展開していくテニスは、見ての通り相変わらずの良さを持っています。2005年、彼女がどんなシーズンを過ごすか、注目したいところです。
[ロジャー・フェデラーのフォアハンド]
 オールラウンダーと言われるフェデラーですが、中でも最大の武器はこのフォア。彼はこのフォアを柱に全てのプレーを組み立てていると考えると、一見すると簡単にプレーしているようで、実は高度な彼のテニスが理解しやすくなるかもしれない。
 彼は少しでも浮いてくれば広角度に、しかも極めて高い確率でウイナー級のボールを叩き返す能力があり、ニュートラルな打点からはほとんどミスがなく、しかも相手にも攻めさせない深いボールを供給することができるため、フォアサイドには全くと言っていいほどスキがないのだ。このフォアを軸にゲームを支配し、相手にプレッシャーをかけていく。バックサイドが多少弱いと言われるが、十分にお釣りがくるだけのフォアを彼は持っているのだ。
[マリア・キリレンコのフォアハンド]
 シャラポワと大の仲良し、として知られるのがこのキリレンコ。現在のところは下位にいるため、世界で最も彼女を知っているのはもしかすると日本人ファンという可能性が高いが、GSの本戦に出場すると当たり前の顔をして強豪と渡り合える実力の持ち主だ。
 以前はカウンターパンチャー的な側面が強かったが、最近は自分でボールを作って打っていく場面も目立ち始めている。バランス感覚が抜群で、少し食い込まれたこの場面でもしっかりとバランスをキープして叩き切れている。
 シャラポワと違い、体格には恵まれていないためサービスやショットの威力で相手を押し込むプレーは難しい選手だが、ボールの配球が巧みで見ていて面白い選手。来季の躍進が期待される。

[ホアン・カルロス・フェレーロのフォアハンド]
 写真はかなり追い込まれた場面でのもの。フォアが武器のフェレーロでも十分な体勢が取れなかった場合には、当然、つなぐ。プロたちのプレーを見ていると一番驚かされるのは、凄いショットという部分だけでなく、当然のプレーを自然にできているということ。試合の中では敢えてリスクを取らなければならない場面もあるものだが、リスクばかりを取っていたのでは勝負にならない。一般プレーヤーに最も多いミスはショットの技術という面だけではなく、ショットセレクションのミスというのが実は最も多いのではなかろうか。

  [K・クリステルスのフォア]
 ほとんど今年丸1年を棒に振りそうなのがクリステルス。左手首の故障と手術で復帰に時間がかかっている。最近はヒューイットの応援席にいる姿が板に付きすぎてしまっているのがファンとしては寂しいところ。元々彼女はその類まれな才能だけで上位に進出したようなタイプで、それほどテニスに対するハングリーさを感じさせたことがなかっただけに、復帰に向けてどの程度の準備がなされているかが不安だ。
 ところで、彼女の代名詞とも言われているのがこのフォア。強打はもちろん、スピン系のループなど球種も多彩で、対戦相手には大変な脅威だった。肘を極端に前に出すスタイルだが、これで彼女はヘッドの返しを強調していると考えてほしい。
[D・ナルバンディアンのフォアハンド]
 実は今、世界のテニス界ではフェデラーと並んでその評価がうなぎのぼりなのがこのナルバンディアン。というのも、彼にはフェデラーと同じく、どこにも欠点がないからだ。サービスも強く、ストロークも頑強。ボレーも巧みで、サーフェスを問わず活躍している。精神的にもタフで、非常に我慢強いという具合で、彼を相手に戦う選手は、戦う前から何となく嫌なイメージを持ってコートに入らなければならないという種類の選手だ。
 写真はフォアだが、ほとんどどこにもケチのつけようのない基本に忠実なフォームであるのがわかるはず。最近はやや故障に苦しんでいるが、体調が万全なら、再びツアーの台風の目として活躍してくれるだろう。
[森上亜希子の両手打ちフォアハンド]
 森上は両サイド両手打ち。このスタイルだと両サイドからの攻撃の幅を威力、角度共に大きくできる利点があります。反面、しっかりとポジションに入るために足をしっかりと動かしていけなければ、叩ききれないというデメリットもあります。
 この写真でも森上はボールに完全に追いつき切れてはいません。しかし、彼女はここから両手打ちのメリットを最大限生かしてラケットを最後まで振り切って、ボールをクロスに返しています。
 片手のフォアの選手が打点に入り切れなかった場合、力のないボールをふわりと返してしまうか、ロブにするしかない、ということが多くなり、返せるコースも限定されるものですが、彼女はここからクロスへ低く返せています。両手打ちのメリットとデメリットが共存した形です。このスタイルの選手の場合、彼女のように迷ったら攻撃というタイプと、フランスのサントロのように、パワー的な余力を生かして多彩なスピンで展開を構築するタイプの二つのタイプがいます。参考にしたいという方も少なくないでしょうが、貴方のタイプ、性格などを考えてからにした方がミスを減らせるでしょう。
<
[アンディ・ロディックのフォアハンド]
 ロディックの武器は世界最速のサービスとこのフォア。彼のフォアの強打の威力もテニス界で、特にハードコートでは相手にとって脅威となるはずです。
 この写真はウインブルドンでのものですが、低い打点となったため、威力でウイナーを取るよりも、強烈なトップスピンとしてコートに入れることに主眼を置いたショットにしています。
 ロディッククラスの選手であっても、全てウイナーを取れるわけではなく、しっかりと展開を作ってから打ち込んでいくという点に注目してください。彼は持ち前の強打の威力に頼るだけでなく、そのショットの威力を最大限生かすためのテニスを構築しようと模索しているのです。彼の能力を最大限生かすためのテニスが完成する時、もう一度テニス界が揺るがされるような予感を漂わせる選手です
[ロジャー・フェデラーのフォアハンド]
 どうやらウインブルドンで長期政権を築いてしまいそうなのがフェデラー。かつては試合中にやや熱くなりすぎたり、急に冷めたりというアップダウンを見せることもあったが、現在ではそれもなくなって実に安定した力を発揮できるようになってきている。
 彼の特徴でもある「頭を残す」というのが端的に現れているのがこの写真だろう。よく「ボールをよく見て」と言われている人はこの写真をその参考にするといいだろう。「ボールをよく見て」と言われる原因の多くは、頭が早く前を向きすぎてしまって体が早く開き、手打ちになってしまっている人に対する典型的なアドバイスの一つだからだ。フェデラーの場合は「ギリギリまで見極める」ことでミスを減らし、かつ、打つコースを隠すという意図があるように見える。
[ブレークのフォアハンド]
 高い身体能力を持ち、攻撃的なテニスが身上のジェームズ・ブレーク。これはかなり高い打点を思い切って叩いていった時の写真です。上半身と下半身の関係が入れ違いになって体幹部に大きなねじれを作ってパワーをタメ、インパクトに向かって一気に解放しているのがわかると思います。このレベルの選手になると、ライジングでもこうした打ち方ができるのですが、一般プレーヤーの場合にはチャンスボールの時に使えるようにしたいところです。ちなみに、この写真の打ち方は高い筋力があって初めて安定させられるので、無闇に真似をしてもうまくはできない可能性が高いですから、注意してください。
[ハンチュコワのフォアハンド]
 ポジションを前にして、攻撃的に叩いていったハンチュコワのフォアハンドです。最近は不調気味の彼女ですが、パワーは上がっています。展開力だけではトップに勝てないと考えたことが、彼女にパワー勝負を決意させたのでしょうが、元々の良さだった展開力がスポイルされる形となってしまっていて、現在のところ結果につながっていません。しかし、パワーを伴った展開力のテニスが軌道に乗れば、再び上昇の可能性は大きいはずです。見た目の細さとは違い、しなやかに身体のバネを使えるのも彼女の強み。期待して見守りたいところでしょう。
[アランチャ・サンチェス・ビカリオのフォアハンド]
 現役時代の彼女はフォアを武器というほどのレベルで使ってはいませんでしたが、その安定感には高いものがありました。彼女の場合、フォアでつないでバックで決めるというスタイルが基本で、抜群のフットワークと粘りで戦い、グラフの全盛期にNo.1にもなりました。クレーで強かったのはもちろんですが、全米での優勝や、ウインブルドンでの準優勝などもあり、No.1も経験しています。全てのサーフェスで強かった裏には抜群の安定感と、精神的な強さがあったと見るべきでしょう。体格や絶対的なパワーでは、当時でも恵まれているとはいえませんでしたが、彼女は卓越した技術で駆け引きで戦う術を見せ付けた選手と言っていいでしょう。後のヒンギスや、さらにエナンといった具合に、体格に恵まれない選手でも戦えるという好例と言えるのかもしれません。
[アルベルト・ベラサテギのフォアハンド]
 今回は少し懐かしい選手を二人紹介しましょう。まずはスペインのベラサテギ。極厚のグリップ(ウェスタンをさらに厚くして、ほとんどバックハンドイースタンの裏側というグリップ)で、フォアハンドを打っていた選手です。現役当時も特殊な打ち方とされましたが、ソフトテニスの経験者にとっては、意外に見慣れたグリップかもしれません。彼は94年の全仏で準優勝という実績があります。
 このグリップのイメージから、トップスピンプレーヤーというイメージが強いかもしれませんが、彼はフラット系の強打も持っていました。高く弾むクレーというサーフェスで勝ち抜くために彼が作り上げてきたテニスがこの形だったということなのでしょう。誰にでもお勧めできるという形ではないにせよ、ソフトテニスの経験者などでは、こうしたスタイルの方が打ちやすいという方もいらっしゃるでしょう。この打ち方では「ダメ」という理由はどこにもありません。
[ナディヤ・ペトロワのフォアハンド]
 数多いロシア勢の中でも、特にクレーを得意にしているのがこのペトロワ。ロシア勢と一口に言っても、ミスキナ、デメンティエワらを中心とする「モスクワ組」はハードコートやカーペットコートなどを得意にしているケースが多いのですが、クズネツォワやペトロワ、シャラポワなどの「海外組」の場合、育った環境によってタイプが違うようです。このペトロワは実はエジプト育ち。エジプトのクレーで育った彼女のグリップはとても厚く、ボールをハードヒットするのに長けています。また、両親が旧ソ連のスポーツエリートで、その素質を受け継いだ彼女の身体能力のポテンシャルはロシア勢の中でもNo.1。恵まれた体格に、高い身体能力、両親から受け継いだスポーツマンシップや精神的な強さを持った彼女は、クレーで戦うためのタフさを全て備えているといってもいいでしょう。ヒンギスが女王と呼ばれていた99年頃、ヒンギスが「近い将来の女王候補」として、当時まだ無名だった彼女の名を挙げたことがありました。それだけの潜在能力を早くから見せていたということなのでしょう。
[フェルナンド・ゴンザレスのフォアハンド]
 デ杯日本チームの入れ替え戦の相手はチリ。チリと言えばゴンザレスということで今回は彼のフォアハンド。理屈無用の豪快さです。183cmの身体を目一杯使ってボールを叩き潰しています。彼のストロークは、あのロディックが目を丸くするほどの威力を誇っていますが、この豪快さの裏で故障が絶えないのも事実。
 誰もが真似できるというフォームではありませせんが、最高の威力を持つフォアの持ち主として堪能してください。