****サービス ****
[ジョー・ウィルフリード・ツォンガのサービス]
 身体全体を使ってサービスを打つポイントとしては、上半身のひねり戻しと、高低差をつけた肩の入れ替えをすることが必要です。スイングを無理に大きくしたり、腕に力が入ってしまっては、下半身のパワーをスムーズにラケットまで伝えることができず、手打ちとなってしまいます。ツォンガのサービスを見てもわかるように、上半身に力が入っていない状態から、肩の入れ替えを左腕の引きによって行ない、スイングを加速しています(詳しい解説はスマッシュ7月号、P20-21をご覧下さい)。
[I・カルロビッチのサービス]
 AIGオープンでカルロビッチを見て驚いた人も多いでしょう。身長208cm、体重104kgから打ち下ろされるサービスは、もう異次元のもので、対戦した選手もあのサービスにはお手上げの様子。例えば平均身長の選手の場合、サービスエースの数はセンターが多いのですが、カルロビッチはセンターでもサイドでもエースを簡単に取れてしまうのです。では、連続写真を見てみましょう。1枚目の構えは同じクロアチアのイバニセビッチを彷彿とさせます。トロフィーポーズでは、肩のラインがきれいに直線になっており、肩を十分に回せる体勢が作られている上、上半身と下半身のひねりも生まれているので、パワーを生み出す準備は万全です。打球に向けてジャンプは少しだけ。それでも十分に、ほぼ直線を描いてサービスボックスに打ち込めるのですからサスガです。身長だけでなく、しっかりと身体を使っているからこそ、あれだけのサービスエースが量産できるのでしょう。
[R・フェデラーのサーブ&ボレー]
 ウインブルドン5連覇達成したフェデラーのサーブ&ボレーです。フェデラーは見事な足さばきで流れるようにネットに詰めていきますが、スプリットステップに特徴があります。両足でドンというステップではなく、着地するまでにどちらに動くかを判断して片足でステップを踏んでいるのです。(詳しい解説はスマッシュ9月号P74−5 で解説しております)
[キム・クリステルスのサービス]
 突然引退を早めてしまったキム・クリステルス。もともと今季限りでの引退を決めていましたが、彼女のプレーを最後にウインブルドンで見られると思っていたので残念です。
 クリステルスの武器といえば、男性並みにパワフルなフォアハンドですが、今回はこの動画連続写真で一度も登場していないサービスを紹介しましょう。トスの後、足を寄せて曲げることでためを作っています。下半身→上半身→肩→腕→手首→ラケットへとスムーズに運動連鎖が行なえているため、下半身でためたパワーを、ロスが少ない状態でボールに伝えることができます。また、左腕を引き下げる勢いに乗って、右腕を振り出している点も参考にしてほしい点です。しっかりと回内を使って打っており、フィニッシュでも右足が高く上がっているので、パワーのあるフラットサービスが打てていることがわかります。
[M・サフィンのサービス]
 誰よりも、何よりも「カッコイイサービスを打ちたい!」と思っている方は多いのではないでしょうか?そこでまず意識してほしいのが、トスの上げ方です。一般プレーヤーでやってしまいがちなのは、ボールを”投げる”ようにしてしまうことです。サフィンのサービスのトスように、腕をベースラインと平行に、まっすぐ、ゆっくり上げてください。これであなたのトスは「カッコイイトス」になるはずです。(詳しくはスマッシュ4月号P12-13にて解説しております)
[R・ナダルのサービス]
 全仏オープン決勝でフェデラーを破り2連覇を達成したナダルです。クレーでの史上最多連勝記録を更新中で、クレーキングと言えるでしょう。彼の強みといえば、どんなボールでも拾えてしまえるフットワークですが、サービスも彼らしい特長があります。彼はサービスの球速よりも、回転を重視して打っているのです。つまりスピンサービスです。この連続写真でもトスが頭の真上ではなく、横にずれていることがわかると思います。身体をかなり反る必要があるため、腹筋、背筋が鍛えられていないと打てません。ラケットを上に向けてスイングしているため、回転が多くかかりバウンド後に跳ねるサービスになるのです。
[I・リュビチッチのサービス]
 現在ランキング4位につけているリュビチッチ。TMSマイアミで準優勝するなど今年も好調を維持しているようです。193cmの彼は、クロアチアの選手らしくサービスが得意です。連続写真を見てください。トスが低くクイックサービスであることがわかります。足の曲げは速い段階で終了しており、ラケットをかついでトロフィーポーズを作っているときには、足の伸び上がりが始まっています。ラケットダウンをしている状態からボールに向かってラケットを振り上げると同時に、ジャンプをしてボールにパワーをぶつけることができています。
[A・マリーのサービス]
 イギリスのA・マリーがとうとうツアー初優勝を果たしました。それも、ロディックとヒューイットを倒しての優勝ですから、確実に実力がついてきたと言えるでしょう。また、ヘンマンを抜いてイギリスナンバー1にもなっています。そんな彼の武器の一つはサービス。最近よくみかけるクイックサービスではなく、下から大きな弧を描いてラケットを担き、トロフィーポーズをしっかりと行なっています。その後ラケットダウンしてから、腕をムチのように使って速いスイングスピードで打っています。ボールをギリギリまで見ることで、身体の開きが押さえられている点も参考にしてください。
[M・アンチッチの身体の軸を保ったサービス]
 アンチッチのサービスを見てみましょう。身体の軸を中心とした回転運動を使ってサービスを打っていることがわかります。また、身体からの軸がブレていない点や、腕と一緒に顔が動いていない点も参考になります(スマッシュ3月号別冊付録P20−21にて関連した内容の解説をしております)。
[アンディ・ロディックのサービス]
 ロディックの武器は、パワフルなサービスです。ヒザを大きく曲げて、身体を反らして……と、思われがちですが、彼のパワーの源となるのが、トスを上げた後、お尻をコート側へひねり、身体のスパイラルを作っているところです。これによってひねりもどしの動きが自然と行なわれ、下半身のパワーをタイミングよくスイングの加速に結びつけることができるのです(スマッシュ2月号巻頭技術特集P34にて詳しい解説をしております)。
[フェデラーのサービス]
 フェデラーのスイングには、どこにも余計な力が入っていないところが特徴です。プロであっても「確実に当てたい」という気持ちがどこかに働いてしまうもので、そこでスイングが小さくなったり、当てにいったりしてしまいます。しかし彼は「ぐらぐら」の状態でボールにラケットを当てています。それほど自分のスイングの正確さに自信があるということなのだと思われます(スマッシュ1月号巻頭技術特集P13にて詳しい解説をしております)。
[マリア・キリレンコのサービス]
 9月のチャイナオープンで初タイトルを挙げたキリレンコのサービスです。基本に忠実なきれいなフォームです。トスから打球までの一連の動きが、どこかで止まることなく、流れるようなフォームで打たれています。後ろ足を寄せて打球へ向っていますが、この両足をそろえた後でも身体の横向きを保っているところは、お手本にしたいものです。一般のプレーヤーは、両足をそろえると身体全体が前方向に向いてしまうので、ひねり戻しが使えず、腕だけで打ってしまうことになりがちです。下半身からのパワーを上手く伝えるなら、「両足をそろえても横向き」これを心がけましょう。
[ダビド・ナルバンディアン ]
 日本ツウとしても知られ、ハチマキスタイルでパワフルなストロークを繰り出すダビド・ナルバンディアン。彼のショットはとかくストロークにスポットが当たりがちだが、サービスのフォームも基本に忠実だ。トス後の身体は弓のような弧を描き、左腕はまっすぐボールをさしている。右腕の振り出しと同時に左腕は身体の前にきれいに収まり、これによって、身体が開きすぎるのを防いで、スイングスピードが速くなるのだ。しなやかでパワフルなボールは、身体のどこかがブロックをされることによって生まれていく。ナルバンディアンの左手は、一般のプレーヤーもすぐにマネできる。10月のAIGオープンでの来日が予定されており、生でプレーを見られるチャンスだ!
[アンディ・ロディックの回内を使った威力あるサービス]
 ビッグサーバーとして鳴らしているロディックのヒジから先に注目して欲しい。テイクバックで一度外側にひねった状態から、フォワードスイング、そしてインパクトまでの間に、内側に戻す力でスイングしている。見事に回内が使われているサービスだ(スマッシュ10月号P20-21にて詳しい解説があります)。
[マリオ・アンチッチのサービス]
 イバニセビッチ引退後、クロアチアで最も期待されている選手と言えば、リュビチッチとこのアンチッチ。アンチッチは出身もイバニセビッチと同じスプリットということもあってか、何か困ったことがあるとゴランに電話をかけ、相談に乗ってもらったりするほど頼りにしているという話もある。
 このウインブルドンでも大いに期待されるが、彼の持ち味もまたサービスとフォア。また、ネットにも積極的に出るタイプでもあり、芝への適性はロディックよりむしろ高いムードもある。2002年のウインブルドンではフェデラーを倒しており、195センチの長身から打ち下ろされるサービスは威力十分。彼に気分良くサービスをキープさせていると、リターンゲームでの集中力も上がってきて、気が付けばストレート負け、というケースが多くなるはずだ。
 技術的には打点を高く取ろうという意識が強く見えるサービスで、無理にスピードを上げるより、角度を維持したいというムードだろうか。プロたちの世界では、スピードガンのスピードより、角度がより重要となる。ある程度以上のスピードは必要だが、160キロのサービスでも角度さえつけられれば、アガシからサービスエースだって取れるのだ。
[アリシア・モリックのサービス]
 ジュニア時代は当時オージーだったドキッチと共にオーストラリア期待の星とされたモリックが、昨季の後半辺りからようやく本格化してきた。身体も大きく、非常にパワフルなタイプの選手で、いつ上位に来てもおかしくないポテンシャルは持っていたのだが、なかなか結果が出せず、自信を持てていなかったのが低迷の原因ではなかったか、と思われる。彼女のサービスのフォームには実は特に変わった特長はない。非常にダイナミックに打っている。しかし、女子でこの「普通に打てている」というのは実は特長と言える部分で、彼女のフィジカルの完成度の高さがうかがえる部分なのだ。実際、昨年の全米辺りから「凄いなぁ、身体が完成されてきたなぁ」と評判になっていたのが彼女。今季の躍進が期待される。
[マラット・サフィンのサービス]
 今年の全豪の覇者であるサフィン。そのパワフルなプレーと、自由奔放な言動、コート上で発する相手を飲むような威圧感などから、パワフルな選手というイメージばかりが先行しがちだが、実はそのテクニック的にも非常に繊細で、優れた面をたくさん持っている選手でもある。
 さて、彼はサービスでもその高い能力を見せている。大きく身体を反り、そしてそれを戻しきって、全身をまるで板バネのようにして使ってボールを打っている。普通、彼ほどの体格がある選手なら、それこそ腕の力だけで打っても高い打点とスピードは確保できると思われるが、彼はこの打ち方からフラット、スライス、そしてスピン系を打ち分けるのだ。非常に強い体幹部の筋力が要求されるので、そのまま真似しても恐らくほとんどの人が再現できないと思うが、一度は真似してみると、彼の凄味がより身近に感じられるかもしれない。
[ロジャー・フェデラーのサービス]
 最速では200キロ以上のサービスを打つが、基本的には180キロ前後のサービスなのがフェデラー。スピードガンによる計測速度にばかり注目していると、見失うことも多いのがテニスの面白さ。確かにロディックのように240キロ以上を出せるようなサービス力があれば別だが、男子で200キロのサービスというのはもはや「標準装備」のひとつ。逆に言えば、それ以上の絶対スピードがないのなら、別の要素で勝負しなければならないのが現実だ。フェデラーのいい時のサービスに注目していると、ほとんどがラインの上に落ちていくのに気づくはず。彼はコントロールが抜群にいいだけでなく、回転も操って跳ねさせ、そして滑らせることで、相手に自由にリターンさせる場面を作らない。速度的には平均的だが、彼のサービス関連の記録がトップクラスなのは、こうした要素に負う部分が大なのだ。
[マリア・シャラポワのサービス]
 彼女が芝のウインブルドンで勝ち残った理由に、このサービスの威力をあげる人は多いだろう。183cmといわれる恵まれた身長の高さから打ち込まれる角度だけでなく、彼女のサービスはナチュラルにスライスがかかっているため、バウンド後に滑るのだ。この種のサービスは特に芝で威力を発揮できるため、サービスゲームではリラックスしてプレーでき、リターンゲームに集中していればいい、という状態を作り出せたことが大きかったはず。試合中に集中しなければならないポイントが少なければ少ないほど精神的には楽になり、逆に試合全体を見渡す視野も生まれて余裕もできる。何か頼れるショットを持っているということは、困ったときだけではなく、こうした部分でもプレーに貢献してくれるのだ。
[ティム・ヘンマンのサービス]
「今年こそは……」と毎年期待されながら、決勝にすら辿り着いたことがない悲劇のジョンブルがヘンマン。彼も29歳となり、このままでは、もうチャンスが少ないと感じたのか、昨年あたりから大きな動きを見せています。まず、コーチをサンプラスのコーチだったポール・アナコーンに変え、サーブ&ボレー中心だったスタイルから、ストロークを強化して後方で打ち粘れるレベルまで上げてきました。全仏での活躍は彼のこの能力が本物になってきた証で、アプローチショットひとつ取ってもスライスで深く入れるだけでなく、打っていくアプローチで、非常に攻撃的なネットプレーをしかけられていたのです。
 彼のサービスは非常にヒザを大きく曲げる特徴がありますが、これはサービスを速くするためというより、前に出る勢いを得るためと理解した方がいいかもしれません。実際、曲げ伸ばしを積極的にスイングに生かすというより、姿勢を作る目的の方が強そうなフォームです。
[杉山愛のサービス]
 ここ数年で最も強化されたのが彼女のサービスです。小さな体格をカバーするために元々色々な工夫をしていた選手でしたが、これは02年の全米でのもの。なるべく高さを取るために左手を我慢し、上に伸び上がりつつ前に力を出そうと試行錯誤しているのが感じられると思います。小さな選手が大きな選手に負けないためには、全身のパワーを無駄なく使っていかなければ、対抗できないと本人が感じているのでしょう。多くのヒントが彼女のフォームには隠されています。

[トッド・マーチンのサービス]
 昨年の全米の時に一度は引退を決意したと伝えられていたものの、全米での戦いぶりやその後の好調で一転して再起を狙っているのが、このトッド・マーチンだ。アガシと並び、アメリカ黄金世代の最後の生き残りで、「全米で引退しなくて本当によかったよ(笑)」と最近好調だ。
 彼のサービスにはこれと言った特異な点はなく、オーソドックスなフォームで無理なく速いボールを打てている。ただし、彼の身長は2m弱と長身なので、そのまま真似をしてもほとんどの人はネットを越えないだろう。彼からは全身のリラクゼーションを参考にして欲しいところだ。

[マリア・シャラポワのサービス]
 現在の彼女の最大の武器はサービス。1stでは180キロを超えることもあり、長身を生かした角度のあるサービスはどんな対戦相手にとっても厄介でしょう。彼女は時折、強気に2ndで打ち切っていく場面も見せますが、それも彼女の強気な性格を想像させて興味深いところです。長い手足を無駄なく使い、全身のバネも生きてラケットを十分に加速できています。サービスのスピードを決定するのはスイングスピード。どうやったら一番速くラケットをスイングできるのかが課題です。彼女のサービスは今後も進化を続けるでしょうが、現時点でも、十分にツアーでトップクラス。後は安定感や、コースの打ち分け、バリエーションの付け方やコンビネーションなどですが、これは経験で補われるでしょう。今後が楽しみな選手です。
[マリオ・アンチッチのサービス]
 クロアチアの若手、アンチッチのサービスです。長身を生かして上から叩きこむようなサービスが武器の彼の場合、テイクバックで一度面が開き気味になりがち。これは一般プレーヤーに多いのですが、普通だとここから安定したサービスにはつなげにくいものです。しかし、彼は長身のため、そこから巻き込むように腕を使って帳尻を合わせてしまいます。あまり参考にはしにくいフォームですが、プロにも色々な打ち方をする人がいるという例です。
[ルゼツキーのサービス]
 ロディックに並ばれるまで239キロの彼の最速サービスは単独世界最高記録でしたが、恵まれた体格とリストの強さで比較的コンパクトなスイングで打っているのがルゼツキーのサービスです。
 テイクバックで一度腕を身体に引きつけて、そこから巻き込むようなスイングで打っていくフォームですが、これはかなりの腕力とリストの強さが求められる方法で、これであの速度を達成しているというのはある意味驚異です。
 また、ロディックと違い、サウスポーの彼にとってはサービスゲームで有利なぶん、速度は同じでもロディック以上の威力と効果が期待できるという点もあります。
 サービス以外はからっきし、というのが彼のテニスですが、彼は全米で準優勝も経験したキャリアマン。ドーピングの疑惑を晴らしてもうひとはな咲かせて欲しい選手です。