このコーナーは、本誌と連動する 『スマッシュ調査団』と『テニスフリートーク』で構成されています。
 『スマッシュ調査団』は、テニスに関する素朴な疑問を調査・解決していく、本誌で大好評連載中のコーナー。毎月寄せられる多くの依頼に本誌だけではとても答えていけそうにない。というわけで、インターネット部門を開設することになりました。このコーナーは随時更新していく予定なので、こまめにチェックして下さいね。依頼は、従来通り本誌宛へのお葉書はもちろん、インターネットでも受付けます。インターネット受付分から本誌への展開もあるので、「アレって何かな?」と思ったら、依頼してほしい!
◆応募方法
・下にある投稿ボタンより専用フォームを呼び出して、必要事項をすべてご記入の上送信して下さい。
・投稿されたご意見は、編集部を経由して随時このページに掲載していきます。(ただし、掲載にふさわしくない等編集部で判断したものは除かせていただきますので、予めご了承下さい)。掲載に際しては氏名のみを掲載しますが、ペンネームでの掲載を希望される方は、忘れずにペンネームを記入しておいて下さい。
**** 観戦・選手 ****

依頼内容920:サンプラスは試合中によくグリップテープを巻き替えていましたが、その際に使っていたエンドテープはトーナグリップに付いてくる赤いテープではなく、黒いテープでした。そこで質問なのですが、その黒いテープはどこの製品なのでしょう か?よろしくお願いいたします。

福島県のいきなりダイヤモンドさん

報告920:……ファン心理というものはどこまでも求め続けるものなのだなあ、と感心する。大変心苦しいが正直言ってわからなかった。せめて彼が現役時代に同じ質問をしていただけていれば、何かの手がかりも得られたはずだが……。
 サンプラスほどの選手なら、ユニークスポーツ社に「黒いテープが欲しい」と言えばいくらでももらえただろうし、ラケットのウイルソン社、ガットのバボラ社もサンプラスは特別扱いだったのでテープぐらいはもらい放題だったはず。しかし、サンプラスはこだわる部分にはかなり強いこだわりを持つが、それ以外の分野ではからっきしズボラ、という人だったので、テープがこだわりの範疇に入っていれば別だが、もし、「貼れればいい」と感じていた場合(実際、グリップテープ用のテープメーカーは恐らくそう数が多いというわけではないだろうし、プリントされているブランドが違っていてもテープ自体は一緒のメーカーが作っている、ということもありうる……)、その辺にあったテープで黒ければなんでもいい、とぐらいのつもりもありうる。
 中途半端以下の報告で申し訳ない。


依頼内容919:DVDを見ていて思ったのですが、ブレーク選手のグリップって薄いように見えるのですがどうなんでしょうか? フォアとバックのグリップを教えてください。

千葉県のブレークさん

報告919:打とうとしている球種やスピードにもよるとはいえ、厚いグリップを使う選手が多い昨今において、確かに彼のグリップは薄めだ。フォアバック共にセミウエスタン前後を多用している。
 これは彼がハードコートで育った攻撃的なプレーヤーであり、持ち球がフラット系であることが最も大きな原因ではなかろうか。ただし、今回の全仏では割合しっかりとスピンをかけたストロークでクレーに対応しようとしていたので、若干厚めになっていた。


依頼内容918:ガスケのグリップの持ち方は、結構薄い持ち方だと思うのですが…イースタンからセミウエスタンだと思うのですがどうでしょうか?

北海道のガスケのコーチさん

報告918:依頼者がPN通りの職業の方だとして、日本語でこう書かれてきたのだとすれば、恐らくはおっしゃる通りのはずで、我々は何も言えない。
 しかし、フォアかバックかが書かれていないのが残念だが、フォアだとして、我々が持つ過去の彼の写真をチェックしてみたところ、打った打点、球種などで微妙な違いは見受けられるが、イースタンというほど薄いグリップを使っているようには見えない。コーチの方なら、もう一度、プレーを確認していただきたい。
 確かに、数年前と比べると彼の身長が伸びてきた影響があるのか、極厚のグリップを使用する頻度は減っていて、若干薄くなってきているようにも見える。だが、少なくともクレーコートの試合ではセミウエスタン前後の厚いグリップを多く使用しているように見える。
 ただ、彼は非常に色々な球種を使い分ける選手。どのシーンで見るかによってもかなり変わっている。正直に言うと、彼はそのシーンによってかなりグリップが変わっていく選手に種別でき、我々が調べた中にはコンチネンタルっぽいグリップで打っている写真もあれば、逆にバックハンドイースタンの裏側、という極厚グリップの写真もあった。選手のグリップというのは傾向としては確実に存在するが、ある特定のグリップを指して、「○○選手はイースタン」という種別は不可能なのではないか、と最近はよく思う。最近のテニス界はより多くの球種やショットを操る必要性が増している。「厚め」、「薄め」ということは言えても、それ以上は難しい、というスタンスが見方として逆に「科学的」ですらあるような状況にもなりつつあるように思う。


依頼内容917:僕は、今、昨年のインハイ優勝者の杉田祐一選手のファンです。それで教えてもらいたいのですが、杉田選手のテンションはいくらですか?教えてください。

大阪府のテニバカさん

報告917:実は2006年7月号で報告しようと調べてあったのだが、ボリュームの都合で見送られてしまった。いずれジュニア部門ということで材料がそろい次第報告するつもりだったが、杉田選手のだけはここでそっと報告しておこう。
 杉田選手はタテがバボラのVSタッチ、横が同エクセルプレミアムのハイブリッドで、
テンションは58ポンドが基本だそうだ。ただし、ケガや調子で下げることもあるとのこと。


依頼内容916:最近、フェデラーがナダルに苦戦しているようです。
原因は、バックサイドをナダルの左利きフォアに攻められているせいとのことですが、同じ片手バックのブレークがナダルには相性が良いようです(昨年全米、今年インディアンウェルズ)。右利き、片手バックの選手のナダル対策をお願いします。

愛知県のダブルスプレイヤーさん

報告916:「史上でも最強の選手」という評価が出て来ているフェデラーがなんとかできないものを我々がなんとかできるとは思えないが、その前提のうえで予測してみよう。
 フェデラーは2006年4月末まででナダルに1勝4敗(5月にもう1敗追加されて通算で1勝5敗となった)。しかもハードとクレーで2回ずつ負けている(クレーでもう1敗追加)。これはもう鴨と苦手の部類に入れていいのではないか、という戦績だ。この時点までのフェデラーはナダルが苦手なのだと判断した方がいい。
 一方、ブレークは依頼者のおっしゃった2度しか対戦がなく(共に高速系ハードコート)、確かに両方ナダルが負けている。だが、これはサーフェスがナダル向きではなかったことと、ブレークという選手がナダルをさほどに苦にしていないのでは、と見るべきで、片手バックがどうした、というのは主たる要因ではないようにも思える。
 どうも日本のテニス好きの皆さんは選手の「プレー」をデジタル的なアプローチで分析するのがお好きなようで、選手の人間性を観察するのを後回しにしてしまいがちな傾向があるが、プレーに人間性は現れるものだし、そこから相性というのも生まれる。ナダルの持つリズムとフェデラーの持つリズムがナダル側に相性がいい、ということもあるのでは、ということも考慮に入れていいのではないかと我々は考える。
 また、フェデラーにとってナダルは純然たるチャレンジャーで、ナダルはフェデラーに負けても失う物はないが、フェデラーはナダルに負ければあれこれと言われやすいし、本人も悩むことになる。逆にブレークはナダルに負けても失う物はないという心境になりやすいだろうし、ナダルが受身になりやすいという立場的な問題もある。単に「同じ片手バックだから」というのだけが問題と見るのは、ちょっとばかりテニスを単純化しすぎているような気もする。もっと奥深く丹念に、前後の状況やお互いの心情、人間性などにも思いをはせると、さらに両者の対決を楽しめるようになるのではなかろうか、と思うがいかがだろうか。
 さてさて、前提としてはまあ、以上の通りだが、各論に入ろう。ナダルの大きな武器として、左利きというのは見逃せない要素なのは事実。ATPは大体10〜15%前後の割合で左利きの選手が常時存在しているが、まずはこの少なさが多くの右利きの選手にとって大問題なのだという。つまり、「慣れていない」のだ。実はこれは左利きの選手にも同じことが言え、左利きの選手は左利きと対戦するのが嫌だという。これも慣れていないからだ。とにかく、左利きというだけである程度有利、というのはプロでもアマでも大差はなく、事実として言える状況なのだと多くの選手たちが証言している。
 フェデラーのバックハンドは元々、その多くのプレーの中で最も「普通」と思われる部分。これはあくまでも他との比較の問題なのだが、弱点とも呼ばれたことがあるほどだ。ただしもちろん、並のボールを彼のバックに集めても意味はなく、ナダルのフォア並に凄いボールでなければ、それを弱点にできないのは他の多くの選手たちが示している通りだ。並以下のボールならフェデラーは自在にコントロールするし、叩いても来る。ナダル並のフォアで初めて弱点となると理解して欲しい。
 では、フェデラーはどうすればいいのか。我々が考える対策はスライスの活用だ。フェデラーは現在のトップ選手の中でも抜群にバックハンドのスライスがうまい。ナダルのフォアを無理に叩いたり、逆にスピンで返そうというのはリスクが高すぎる。スライスを活用してコートを広く使い、低いボールを何度も処理させることでナダルから足を奪えばいい、と考える。
 もちろん、スライス一辺倒ではなく適度に強打も混ぜて的を絞らせないようにするのも大事だが、低いボールを使うというのは、案外効果的なのではという気がする。まずはナダルにバックに打つことを躊躇させなければならない。フェデラーのバックに打つとどうにもやりにくい、と感じさせられなければ、ナダルは迷いなくそのフォアをフェデラーのバックに叩き込んで来る。多少はハッタリをかましてでも、ナダルを迷わせる必要があるだろう。
 ブレークが勝てていた原因としては自分の得意な高速系サーフェスであること、ナダルはアメリカで使用されるボールが好きではないこと(これは本人もコメントの中で認めていて、ボールが自分が思っているように跳ねないのだとか)などが奏功した結果とも考えられるが、フェデラーとブレークの違いを考えれば、フェデラーは比較的ボールを呼び込んで打つタイプなのに対し、ブレークはライジングを基本とするプレーヤーだとも指摘できる。ナダルのバックは跳ねる。しかし、ライジングで取る能力の高い選手なら、これをカウンターにして叩き返すことができ、相手から時間を奪い取れる。ここにサーフェスやボールの有利不利が作用してブレークが勝っている、とも考えられよう。そのままフェデラーが真似をしても多分うまくはいくまいが、参考にはできそうな気がする。
 実際、フェデラーも「ナダルを相手にしたらもっと攻撃的なプレーをしないといけないとわかった」と先日のモンテカルロでの敗戦の後に語っており、恐らく今後はそういうプレーを仕掛けてくるはず(これが彼一流の罠、という可能性もあるが……)。その過程を見守ったりするのもまたテニス観戦の醍醐味のひとつ。わくわくしながら、二人の対決を待ちたいではないか。
 ナダルのフォアを苦にしなくなったフェデラーが出現した時、初めて両者が全てをむきだしにしたガチンコの闘いが見られるはず。フェデラーならきっとやってくれるはずだ(遠い昔、サンプラスがイバニセビッチを苦手にしていた時代があり、それを克服して王座を磐石にしていったこともある)。いやー、楽しみだ。


依頼内容915:グロージャンがかぶっているラコステの帽子は、日本で発売していますか?

千葉県のカミズミさん

報告915:……なぜラコステさんにお問合せしよう、というアイデアが出ないのだろうか。
http://www.lacoste.co.jp/jp/main.html
がラコステさんの公式ホームページ。こちらにお問合せ用のコーナーもあるので、ここを通じてお問合せすることをお勧めする。もし、現時点では未発売でも、そうした問い合わせの声が多ければ、発売される可能性を高くできる、かもしれない。


依頼内容903:リシャール・ガスケ選手のフォアの握り方を教えてください。

千葉県のガスクエさん

報告903:彼はプロとしては身長が低いためか、厚めのグリップを多用する。セミウエスタンより厚めから、フルウエスタンまでを使っているようだ。


依頼内容902:サフィン選手はプレステMIDに何ポンド<だいたいでいいんで>でガットを張っているのか、教えて下さい。後、ルキシロン契約プロの時、オリジナルを使っていたんですか?ウエスタンとセミウエスタンのどちらですか???

神奈川県のサフィンさん

報告902:以前にも報告したが、彼のテンションは一定ではない。この一定ではないというのが、どのぐらいの幅なのかというデータは残念ながらない。しかし、この種の一定ではない選手の場合、その時の調子や天候、湿度、コートの立地条件(高地にある場合、ボールが飛びやすい)、使用ボール、サーフェスなどで、結構ドラスティックに変えている選手が少なくない。低い時は40ポンド台の前半で、高い時には60ポンド台の後半、なんてこともあり得る。また、複数のテンションのラケットを持ち込んでいるケースでは3〜5ポンド刻みで持ち込むケースが多いらしい。
 彼が使っていたのは時期によってはオリジナルだったかもしれないが、05年のウインブルドンではアルパワーだったというデータがあるが……。
 彼のグリップは、セミウエスタンから、ウエスタンの間を使い分けている。


依頼内容901:リシャール・ガスケ選手の片手バックハンドは特別だと聞きました。未来のテニスとも評されますが、どのようなものなのか教えて下さい。

愛知県のダブルスプレイヤーさん

報告901:特別と言っても、何か違うことをしているわけではない。彼の試合を見た人なら誰でもすぐに気づくと思うが、彼は現時点ではフォアよりむしろバックの方が強いのでは、というぐらいのボールを打つ。この「フォアもバックも変わらない攻撃力を持つ」というのは、実はスペインやアルゼンチンの片手打ちのトップクラスには共通の特徴で、今や多くの選手にとって「標準装備」じゃないとトップにはなかなか上がれなくなっている要素なのだが、ガスケの場合はさらにタッチの柔らかいショットもあり、スペイン、アルゼンチン系とはまた違った意味でのバックハンドを持っているのだとまずは解釈しておいていただきたい。
 また、未来のテニスのスタイル、というのは、キャッチフレーズ的な意味合いのやや誇張を含んだ表現とも考えておいて欲しいのだが、彼のテニスのスタイルは確かに新しい。というのは、彼は両手打ちバックハンドの選手と同じテニスを、片手打ちでやっている雰囲気なのだ。普段が片手バックだけに、構えた時点では強打かスライスかはたまたドロップショットかなのか分からないだけでなく、彼は全部できる(両手打ちだと球種はある程度以上、相手に晒さざるを得ない)。打点の高低もそれほど苦にしない。本来片手では不利とされる肩口からそれより高い打点でも、彼は打ち抜いてくることが少なくないので、相手からすれば、バックサイドで打たせているのに、まるでフォアと勝負しているような感覚になるわけで、息を抜く間がないわけだ。それに片手なのでリーチも両手バックより広い。
 彼の問題は身長がやや低く、サービス力でのアドバンテージが小さいこと。もし、彼にフェデラーの身長とサービス力があったら、もうどんな恐ろしい選手になってしまうか想像もつかない。さらに言えば、彼はまだ若く発展途上の選手。フォアの攻撃力も向上するだろうし、今までのテニスの文法ではありえなかった組み立てというのを見せてくれる可能性もある。それを「未来のテニス」と表現するなら、多分、間違いではないたろうと思う。


依頼内容900:こちらでお聞きするものかどうか分かりませんが、他に聞くところもないので質問させて頂きます。テニスプレイヤーはアマアチュアから男子トッププロまで、下腹〜横腹がプックリ出ていますね。明らかにボディビル的な腹直筋とは違い、一見「太ってるのかな?」と思えるような、表面もゴツゴツしてなくて滑らかで一体感があります。特にフェデラーやロディックなどはすごい盛り上がりですね。プロはテニスに理想的な筋肉と筋肉バランスを持っているだろうから無論、肥満ではないでしょう。触ると硬いというよりゴムまりのような弾力がある所ですが、あれは(もしくはあれらは)何と言う名前の筋肉なのでしょうか?筋肉解剖図からはちょっと想像しにくい形のように思えます。主に腰の回転と体軸を安定させる役割がありそうに思えま
すが、お答えお願いします。

滋賀県のミッシェルさん

報告900:あれは外腹斜筋が異常発達した結果だ、と、言いたいところなのだが、どうもそうではなさげ……。男子の選手たちは夏の大会だと、上半身裸で練習していることが多い。我々も取材で彼らの練習をよく見るのだが、ボディビルダーのように体脂肪率が1桁でござい、という身体つきの選手は実はそんなにいないのだ。
 意外にぽちゃ、とまではいかないまでも、それなりに「肉付きのいい肉体」の選手の方が多い。
 ご覧になったフェデラーやロディックが映像によるものなのか、スチル写真によるものなのかでも違うのだが、スチル写真でインパクト前後の写真などであった場合、スイングの回転によってお肉が「ぶるん!」とした瞬間になるため、必要以上に盛り上がって見えることがある。女子の選手などだと、二の腕が異常にたくましく写ってしまうのはこの瞬間だ(迫力はある写真だし、スポーツ選手として鍛え上げられてるんだなあと感じさせられる瞬間の写真だが、嫁入り前の年頃の娘さんたちの心境を考えると、ちと複雑)。
 テニスプレーヤーの場合、絶対的な筋力と共に、スピードと持久力が求められる。かつて、マイケル・チャンが筋肉を付けすぎて体重が増えてしまった結果、ヒザに大きな負担がかかってそれが故障の遠因になったのだとも言われたが、野球の投手たちがそうであるのと同じく、筋骨隆々という選手のは意外に少ない。野球の場合、野手だと筋骨たくましい選手もいるが、投手は意外にすらりとした、あるいはぽちゃとした選手もいるもの。テニス選手に要求されている身体つきはあれに近いイメージなのだ。
 これは各関節がしなやかに動くことが最も要求されること、そして、全身のバランスがどこかに偏ったりすることが、その競技特性上好ましくないためでもある。ある程度以上、脂肪がついていることに関しては、彼らの生活実態を理解して欲しい。
 彼らはプロ野球のリリーフ投手以上の登板回数があり、しかも毎回完投しているという競技を、世界中を転戦するスタイルで繰り返しているのだ。ある程度以上、身体に余分なスタミナの蓄積をしておかないと、エネルギーが不足した時に、筋肉が痩せてしまう(体内のエネルギーはまず、食事によって摂取されたエネルギーを使い、それが尽きると、筋肉内に蓄積された予備エネルギー、次いで体脂肪を燃焼させるという順番で使われる。もし、体脂肪の比率が低いと、身体は筋肉をエネルギーにしてしまうようになるのだ)。マラソンの選手の場合、練習はともかく、肉体を限界まで追い込まざるを得ない試合の間隔は長く、それだけ肉体の回復に時間が取れるが、テニス選手はそうもいかない。特に強くて勝ち続けていると、日曜の決勝まで毎日のように戦って、翌週の火曜日には違う国でまた試合をしていなければならなかったりする。ある程度の「蓄え」は必要なのだ。
 トップクラスの選手や、トップを真剣に目指している選手の多くは、試合中だろうが、大会中だろうが強化トレーニングを欠かさないというが、彼らの生活を仔細に眺めていて調査団がいつも思うのは、筋肉や骨格のご立派さ以上に、「彼らは恐ろしく強い内臓の持ち主なんではなかろうか」ということ。食べた物を無駄なくエネルギーに変換し、しかも大量の食べ物を摂取しても「うーっ、食いすぎた……」とならずに消化しきってしまえる内臓でなければ、試合して、トレーニングして、また試合という過酷な状況を乗り切れないのではなかろうかと思うからだ。
 調査団の知る限りにおいて、トップクラスの選手というのは、実によく食べる。あんなに食べてて大丈夫なのかしらん、と思うぐらい食べるが、決して無様に太ったりはしない(そりゃ、身体が悪くなるほど運動しているんだから当たり前だが……)。外からは決して見えない部分だが、選手というのは実は凄くマッチョな内臓の持ち主なのでは、と考える。


依頼内容899:今、話題のジュニアの会田翔選手と杉田祐一選手の使っているストリング名
を教えていただきたいのですが・・・
また、日本人男子プロで知っているストリングがありましたら、あわせて教えていただきたいと思います。

北海道のL.hewittさん

報告899:最初の二人に関しては2006年7月号(2006年5月20日発売予定)の本誌上のコーナーにてご報告する予定なので、しばらくお待ちいただきたい(その他の選手たちに関しても取材を進めている。お楽しみに)。
 日本男子の場合、ナチュラル系とハイブリッド系に二分されていて、ナチュラル系の選手だと、バボラの場合はVSチーム、VSタッチのどちらかのユーザーが多い。ハイブリッドは選手によって様々なパターンがあるが、契約の関係もあって製品名をはっきり言えない、という選手も少なくはないというのが現状だが、ポリとナチュラルの組み合わせが多い様子。
 このコーナーはその性質上、選手が非公開としている情報を公開できるコーナーではない。ご了承いただけると幸いだ。


依頼内容887:マラト・サフィン選手のフォアのグリップ(一番良く使うもの)とサービスのグリップ、そしてガットのテンションを調べてください。
また、サフィン選手のフォアのフォームを真似る時のコツがあったらおしえてください

愛知県の愛知の悪童もりぞーさん

報告887:サフィン選手がフォアで最も使うグリップは、セミウエスタンからフルウエスタンの間。やや厚めのグリップだ。サービスではコンチネンタルからバックハンドイースタンに近いぐらいのグリップの裏側(すごく薄い状態。スピン系のサービスで使用)。また、グリップサイズは、ヘッド社様に問い合わせてみたところ、サフィンのサイズはL3とのこと。
 テンションに関しては、実は以前にも報告したが、彼は一定のテンションを使用しない選手という報告がなされている。その日や大会によって調節を繰り返して、コートにも複数のテンションの物を持ち込むらしい。
 フォームを真似る時のコツ、か。なるべくダイナミックでありかつ、スイングをコンパクトにすることがコツだろうか。彼は後ろが小さくても、前が大きい選手なので、それを意識するのも手だろうと思われる。


依頼内容886:僕はガウディオ選手の大ファンです。ガウディオ選手はトアルソンのサイバーブレードツアーサーマックスを使っているのですが、ストリングにトアルソンのステンシルマークを付けている時と付けてない時があります。契約選手はステンシルマークを付けても付けなくてもいいのですか?以前ガウディオは、トアルソンと契約していてもキリシュバームのストリングを使っていると聞いた事があるのですが、そのような事はあるのですか?
他にガウディオ選手のラケットの重量など知っていたら教えて下さい。

広島県のガウさん

報告886:ステンシルマークを付けていない場合で、可能性があるのは、「うっかり忘れた」、「その時は契約メーカーのガットを使っていなかった」、「ガットの手持ちがなく、かつ大会のオフィシャルストリンガーが契約しているのとは別の企業で、その企業のストリングブースで、違うガットを張ってもらったため、入れるに入れられなかった」などのいくつかのケースが考えられるが、一番多いのは、「うっかり忘れた」というケースだろう。意外に感じるかもしれないが、これは結構多い(ラケットのはともかく、ストリング関係だと特にこのうっかりが多くなるらしい)。特にステンシルの型紙を忘れちゃったというケースは少なくなく、その大会に契約企業が来ていてブースを出していたり、オフィシャルストリングブースのストリンガーさんがたまたま持っていればいいが、誰も持っていなかったりすると、手書きでステンシルを入れざるを得ず、「ま、いっかあ」となりがちなのだ。
 あるいは、スポット的にある期間だけ契約するというケースもないわけではない。
 契約があるのに他メーカーの製品を使う、というケースは公になることはほとんどないが、ありえるとすれば、選手が契約ブランドのガットの手持ちを全て使い切ってしまうなどして手元になくなってしまい、補充がきかなくなったケースではありえる。
 ガウディオのラケットの重量は……、ガウディオに限らず、選手のラケットの重量はどの選手のデータもほとんどない。あしからずご容赦いただきたい。


依頼内容885:日本人男子テニスプレーヤーで、ジュニアは、全豪オープンジュニアで錦織圭がベスト8に入るなど、活躍しているのに、プロはランキングで良くて300位ぐらいなのでしょうか?そのようになる原因を教えて下さい。

東京都の全豪オープンに行きたかったな〜さん

報告885:十把一絡げにはできないが、それがジュニアと一般のレベルの違いということになる。フェデラーのようにジュニアでも世界ナンバー1で、一般でも世界ナンバー1という選手もいるにはいるが、一般的に言って、ジュニアと一般は別のカテゴリー。同じであるようでいて、違うのだ。
 何が違うのかと言えばまず、選手の層が違う。年齢で区切られているジュニアの場合、せいぜい5世代ぐらいしかいないのに対して、一般は15、6歳から30歳ぐらいまでの15世代近くが同じトーナメントを戦う。各世代にチャンピオンがいるとすれば、15世代のチャンピオンたちと戦わなければならないのが一般ということになるわけで、単純に言うと、層の厚みも3倍以上ということになる。そりゃ、そう簡単に勝てはしない。これが原因と言えば原因だろう。
 もう一つは、ジュニアに出ていない強豪の存在だ。スペインやアメリカなど、テニス強豪国の場合、あるいは、ジュニア時代から飛びぬけた実力を持っている選手の場合、ジュニア大会には出ずにいきなり一般に行ってしまうことが数多くある。女子にこの傾向は特に顕著だが、15歳からいきなりツアーに出ていく選手も数多い。ジュニア部門に出ればそこそこ以上に勝てるであろう実力派でも、お金になるツアーで少しでも早く頭角を現したい、という欲求の強い選手に数多いようだ。スペイン勢にはプロ志向が強く、アマチュア志向のジュニア大会にはほとんど興味を示さないのに対し、アメリカ勢の場合は国内にジュニア大会が充実していることなどから、いわゆる国際大会には出てこないため世界的に無名、という選手がいたりする。しかし、しかし、アメリカの国内トーナメントのレベルは非常に高いので、全米ジュニアかなんかに、主催者推薦かなんかをもらって突然ひょいっと出てくるととんでもなく強い、 という選手がいたりする。
 最もキツイ物言いをする人だと、「テニスのジュニアなんて、プロになりそこねた連中のトーナメントだ」と決め付けている場合もある。確かにそう極論できてしまう時代がなかったわけではないし、今もある一面だけを見れば、そう言いたくなる気持ちも、理由も、どちらも理解は出来る。「本当のトップクラスは15,16歳で一般のツアーに行ってるじゃないか」というのは、確かに真実ではあるだろう。
 ただし、近年はやや情勢が変わってきていて、「ジュニアで実績を残す必要がある実力派は、ジュニアに出ている」ということにもなっている。テニスのグローバル化により、プロを目指す選手は増えている。しかし、いざツアーを回ろうとなるとお金がかかる。先進国出身で、富裕な家庭出身ならいいが、途上国の並以下の家庭出身の場合、海外遠征をするというだけで一大事。当然、支援者を見つけたいとなるはずだが、「僕はテニスで強いんです。将来、なんばー1になりますから、サポートしてください」と突然企業の門を叩いても、誰も話を聞いてはくれないだろう。しかし、「僕はジュニアで世界10位です。しょうらいは世界一になりますからサポートしてください」と言えば、「ちょっと話を聞いてみようか」という企業も出てくるもの。そういう理由から、ジュニア時代の実績を重視する選手が世界的に増加傾向、というのもある。
 また、途上国のテニス協会などの団体がジュニアをサポートする場合、その選手がプロとしてやっていけるように奨学金などで支援するケースと、チームのような体制を築いて、ジュニアのトーナメントを回らせるというケースがある(国によっては企業がバックアップしているケースもある)。他にもITFがジュニアの有望選手をチョイスして、ITFジュニアチームという形で世界のジュニアトーナメントを回らせたりしたこともある。
 どれが一番いい支援の形態か、というのは判断が難しい。あるロシアの選手の場合、マイナー時代の支援を銀行から受けていたという選手がいたが、これの実態はつまりは「借金」で、もし、テニス選手としてモノになれなかったら、今頃……。という選手もいないではない。それが選手のモチベーションを炊きつけたのだ、と結果論としては言えてしまえないわけではないし、無償でのスポンサードが選手にとって一番ありがたいのは事実だろうが、そういう支援にはいつか「もらって当然」、という傲慢さと油断に変化しかねない危うさも内在する。
 企業なりなんなりが誰かを支援する、それがすでに有名人に対しての、自己の宣伝目的でもあり、お互いにメリットが見える形でフィーを支払うのに比べ、まだ海のものとも山のものともわからない相手に対するフィー、いわゆる先行投資は企業側にはもちろん、受ける側にもリスクがある、という視点は持っておいてもいいだろうと思われる。
 以前はジュニアのトップ=世界のトップの卵、というのはやや無理がある仮定と言われた時代もあるが、今は両者が近づきつつあると見てもそう間違いではないだろう。ただし、伸び悩む、ということは誰にでもあることなので、やはり十把一絡げにはできないのだが……。


依頼内容884:サフィンは本気になれば世界一、というのをよく聞きますが、ぼくはサフィンの試合をみても確かにすごいとおもうけどそれは言い過ぎでは、と思ってしまいます。そこまでいわれる理由は何でしょうか。

静岡県のかめさん

報告884:本気になれば世界一だからだ。……では、納得していただけないのだろうなぁ。
 こうしたフレーズというのは確かにちょっとだけ大げさにはなるもの。サフィン自身には「俺はいつでも本気だ」と言われてしまうかもしれないし、まあ、渾名ぐらいに軽く受け止めていればいいのではないかとも思う……。
 いや、真面目にお話すれば、日本のメディアだけでなく、世界中で同じことが言われているからとも言える。ロシアのデ杯監督であり、ジュニア時代からサフィンを良く知るタルピスチェフ氏が以前、「真面目にやれば、セレナ・ウィリアムズのように君臨できる才能があるのに」とため息をついた、というのが恐らく最も有名だが(この発言当時のセレナは最強時代だった)、選手間でも「サフィンが好調だと、激しく手強い」というのは共通の認識として語られ、折りに触れて誰かがそう発言する。サンプラスやアガシはもちろん、同世代のヒューイットが?1だった頃にも、ロディックが強かった時にも、フェレーロやフェデラーが?1の時も常に彼らが最も脅威に感じる選手の一人として、サフィンの名が漏れたことはない(?1争いという意味で、除外した選手はいた。マラットが年間ずっと調子がいいということはない、というそりゃごもっともですけど、身も蓋もない理由だったが、対戦相手としては厳しいというのは変わらなかった)。
 何しろ彼には欠点がない。その意味ではフェデラーと同じだ。サービスは強い、ストロークはフォアもバックも力強い、大型選手だが動きも鋭い。ネットプレーだって悪くはなく、苦手なサーフェスもない。チャンスではリスクを取って果敢に攻めていくし、つなげる気になれば、何十本でもつなげられる確かな技術を持ってもいる。メンタルの安定性は高くはないが、集中している時の彼はまだ全盛期と言えたサンプラスを全米の決勝で下しているし、05年の全豪ではフェデラーにマッチポイントを許した後に逆転して勝っている。「真面目にやったら」、というのはこうした実績があるから言われることでもある。
 しかし、なのだ。「僕がマラットと同じ生活をしていたら、100位にも入れない」と語ったことがあるのはヨーズニーだったが、普段からサフィンを知る人々による、彼の私生活に関しての証言の数々は、「ホント?」とにわかには信じがたい話ばかりなのだ。伝聞の域を出ない話だし、こうした話はたいてい面白おかしく多少尾ひれがつくもので、どこまで本当なのかわからないので詳しくは割愛するが、彼はプロとして普段からテニスに集中し、真面目にトレーニングを続け、体調維持に努めている、なんてことは全然ないんだなぁ、というエピソードのオンパレードなのだ。彼がもし日本のプロ野球選手ならスポーツ新聞は豪傑とか野武士、あるいは番長などと呼ぶだろう。彼がもし日本人なら、毎週のように写真週刊誌を賑わせるだけでなく、仮想日記の連載だって始まるはずだ。なにしろ「サフィンは三原監督の西鉄出身か??」という類いのエピソードだらけなのだ(この意味がわからないという場合、お近くの40代以上の方に聞いてみて欲しい)。
 一方でロディックやフェデラーなどの生活のストイックぶりを見たり聞いたりするにつけ、「マラットは今の状態で彼らとどっこい×2なんだから、真面目にやれば」と感じるわけだ。「やればできる子」というのとはちょっと違う気がする。
 しかし、サフィンが好きなファンにとってはそーゆーダメなところもまた彼の魅力であり、「真面目でストイックなサフィン」はある意味魅力がダウンするかもしれない。品行方正で、謙虚で、七三分けの清原はつまんないのと同じかもしれない。逆にサフィンが嫌いというファンには、そういう不真面目なところが癪に障るのだろうと思われる。真面目にやれば世界一なのになぁ……。


依頼内容883:ATPランキングで100位以上のトップ選手と100位未満の選手とでは、ラリーの平均速度がトップ選手の方が遅いという話を聞いたのですがそれは本当なのですか??また、そうである場合どれくらいの平均速度差があるのか調査してもらえませんか?お願いします!!

東京都のNAOさん

報告883:ラリーの平均速度、というのはストロークのスピードのことだろうか? 例えば、フォアハンドの平均時速が140キロとかいう具合の……。
 テニスというのは対戦競技で、そうしたベンチマークが出来るのはサービスの速度ぐらいだ、とは理解していただけないものなのだろうか。トップ100と言っても時期によって常に選手には変動があるし、また、選手のタイプも様々。さらに同じ選手のストロークであっても、アガシと戦ったフェデラーと、コスタと戦ったフェデラー、無名の選手と戦ったフェデラーでは、全てのスピードが変わる可能性を想像できないだろうか。例えば、アガシ相手にむやみやたらと打ち込めば、カウンターを食らうリスクが高いのでペースを落とし、格下相手にはばんばん打ってオーバーパワー。そんなことは常にあることで、そんな状態で計測されたストロークの平均速度、というのに何かの意味を見出せるとはにわかには思えないのだが……。
 確かに、選手によって打てるボールの力は変わる。例えば、フェルナンド・ゴンザレスのフォアには物凄いトップスピンとスピードがあり、凄いスピードで飛んで急激に落ち、そして跳ね上がる。逆にヘンマンの打ち込んだ時のフォアは低めの軌道を描きつつ鋭く飛び、バウンド後には滑っていくようなフラット系のそれとなる。どちらも威力があるが、見た目上のスピードは恐らくヘンマンの方が速く見えることもあるだろう。
 実は物理的な問題でコートの中にボールを落とそうと思ったら、おのずと限界のスピードがある。以前、我々が試算したところでは胸の高さ近辺の打点からだと、時速170キロ前後まででないとコートに収めきれないのではないか、という結果が出たことがあった(非常におおまかな仮定に基く試算だったので、あるいは参考程度にもならないかもしれないが、一応かなり真面目に試算を試みた結果だ)。
 仮に、ゴンザレスとヘンマンの打ったボールに、速度の違いがなかったとして、両者のスピードに差があるように見えたとしたら、その原因はボールが飛んでいく軌道の違いが原因として考えられる。ボールの軌道を横から見たとして、線を引いた時、より長い距離を飛ぶのがゴンザレスで、短いのがヘンマンということになるはずだ(ま、このゴンザレスとヘンマンというのは、トップスピンとフラットの象徴として出しているので、深い意味はありませんが)。テニスコートというのは狭いようでいて広い。わずかな飛行距離の違いでも、見た目上は随分大きな違いに見えることがありうるわけだ。
 いくらなんでもヘンマンとゴンザレスなら、ゴンちゃんの方が速いストロークを打つだろ、という声が聞こえてくるようだが、二人のサービスのスピードはほとんどどっこいどっこいか、下手をすればヘンマンの方が速いということを考えると、ラケットを速いスピードで振るということに関しての能力は、双方共に優れていると見てもいい。サービスのようにスイングスピードの差が絶対的な運動の場合、その差は筋力の大小ではなく、神経伝達系の発達具合に支配される要素が強い。野球の投手たちがみな筋骨隆々ではないのを思い出していただければこれはわかるだろう。筋力の大小で決まるなら、プロレスラーは凄い速球を投げられることになる。
 パワーの差は許容範囲の差と、限界域での回転量の差に現れてくる。横に振られ、打点も遅れ気味になった時でも、アングルに強い回転のかかったボールを打てる選手と、スライス系で流さざるを得ない選手の差と言えばいいだろうか。こうした場面では、パワーのある選手はスライスで流すこともできるわけで、つまり、パワーの有無で選択肢の数と質が変わるとも言える。
 さて、下部のトーナメントとGSとでラリーのスピードが違う、むしろ下部トーナメントの方が速い、という説に関してだが、実際、ありえそうな話でもあるし、あれば面白い話題でもあるのだが、正直に言ってそのまま肯定はしにくい。下部トーナメントと一口に言っても、アメリカとスペインでは事情が異なるし、日本や中国のそれらとも様子は違うはず。もしかしたら、アメリカやスペインであれば、速度だけを比較した場合において、そうしたこともあるのかもしれないが、プレー全体のスピードを比較した時の実質上で、下部トーナメントのスピードが、GSなどのトップクラスを上回ることはないのではなかろうか。もし、そんなことがありえたとすれば、フェデラーを倒す選手が次々と現れて来ていてもおかしくはないが、実際はそうではないし……。
 我々は国内のフューチャーズなどに出かけることもあるし、もちろんGSへも行く。そんな我々が知る範囲において、GSのスピードをF1とすれば、下部トーナメントのスピードは、時にはF3以下に感じるほどに違うことがある。これは単なるボールスピードの差ではなく、テンポの違い、球種の違い、展開のスピード、足の(予測)の速さ、ミスの質の違いなど、スピードと名が付けられる全ての要素からその差を感じる。日本の大会も取材し、かつGSを取材する日本人記者同士で話をすると、「世界は遠いねぇ」とため息がつかれるほどだ(「しかも、毎年遠くなる……」というため息も聞こえる)。
 それは例えば、下部トーナメントでならウイナーやエースになるような質のボールでも、GSではそれで普通のラリーを展開しているというほどに違う場合もある(05年全米のアガシ対ブレークがまさにその典型。あの試合での二人はウイナー級のストロークでラリーをする、という恐ろしいほどレベルの高いテニスを披露していた)。また、つまらないミスが少なく、一つのポイントがウイナーやエースで終わることが多いのがGSなら、ミスで終わるのが下部トーナメントとも言える。ライジングで物凄いボールを当たり前にやりとりするのがGSなら、ライジングを使ったときには決まったコースと球種しかないのが下部トーナメントだ。
 もちろん、下部トーナメントは玉石混交で、「なんでこいつがこんなところに??」という選手がいたりすることもあるし、「こいつは、ずっとここだろうな」という選手もいる。GSの場合は各選手にそれほど大きな差はないのが普通だから、全体のテンポも非常によく見える。
 回転量の違いというのもテンポに関係している。一見、スピードは遅そうに見えるクレーコーターたちのボールはバウンド後にも減速せず、むしろ加速したのではないかと見えるほど回転がかかっている。遅そうに見えるのは目の錯覚のようなもので、実質的な時間感覚上のスピードは、フラットの高速ストロークとそう変わらないだろうし、より重く感じるのではなかろうか。
 あれをベースライン上で打ち返そうと思えば毎回ライジングを強いられるだろうし、自分の打点で打ちたいと思えば、壁際ぐらいまで下がらねばなるまい。だが、下部トーナメントに出ている選手たちだと、あの種のボールを「常に」打つ選手は多くない(だから下部トーナメントに出ているのだと言ってしまえばそのままなのだが…)。一方でハードコート育ちの選手はチャンスになると「ボールが壊れるのでないか」と思うほどの勢いで叩いていく。そういうボールでやりとりされるのが上位ツアーで、下部トーナメントだとそこまでにはならないのが普通だ(下部トーナメントだと、その凄いボールがある選手でもコートに収まる確率が低いのだ)。
 ただし、以上は全て男子での話。女子の場合、もしかすると確かにジュニア時代の方が速いボールを打っていた、という選手も少なくはないし、見ようによっては、あるいは対戦している選手二人のタイプによっては、下部トーナメントやジュニア大会の方が速いボールのやりとりをしている、とも言えちゃったりするケースもある(ここでのジュニアは国際的なレベルでのお話です)。
 女子の場合、ジュニアや下部トーナメントではフラット系のボールをただ打ち込むだけで結果が出てしまうことが多いので、平均的なスピードは速くなる可能性がある(同じことはレベルの高くない男子でも起こりうるが、そう多くはないだろう)。ただ、上位ツアーに進むにつれ、強く打ち込んだだけでは返されるようになる。回転をかけ、コースのバリエーションを増やさないとポイントできなくなるため、見た目上のスピードは遅くなることもある。ただし、うまく順応し、上位に上がっていく選手においては、ボールの質自体はジュニア時代のフラット系よりもずっと向上しているものだ。
 以前は確かに男子にも似たような傾向はあった。しかし、今日では上位と下位の差は縮まっている。日本の選手たちが上位の選手と戦って負けた後、「意外にスピードには戸惑わなかった」などと発言することがあるが、あれも強がりや言い訳とばかりは言えまい。実際、下部のトーナメントのレベルも上がっている。しかも、この4、5年で急上昇した。4、5年前なら200位台に入れたポイントでも今では300〜400位にしかなれない。男子の場合、この数年で200〜600位台の選手層が物凄く厚くなってきているのだ。これは世界的なテニス人気の盛り上がりと無関係ではもちろんなく、今まではせいぜいデ杯のワールドグループにいる10数カ国が主なテニス選手供給国だったのが、今では30〜50カ国から複数の選手たちが出てくるようになったことが大きいと思われる。 
 全てが順調なら、テニスはこれから非常に面白い時代を迎えるだろう。日本人選手にとっては大変だとも言えるが……。話が脱線したまま終わってしまった……。


依頼内容878:フランスのセバスチャン グロージャン選手についてなのですが、この前の全豪でグロージャン選手が使用しているHEADのラケットのガットにHEADのステンシルがなかったのですが、HEADとは契約が切れたのでしょうか???情報があったらお願いします。
あと、グロージャン選手のグリップの握りはセミウエスタンですか???それともフルウエスタンでしょうか???グロージャン選手のフォアハンドの連続写真もできたらお願いします!!!これからもファンとして応援していきます。

東京都のpopoさん

報告878:確かにステンシルがない。これは契約が切れていると見るべきだろう。ただし、契約が切れたと言っても、水面下で交渉中だったりするケースもある。ただ、契約期間が満了している状態ということだろう。黒塗りにまではしていないところを見ると、お互いに前向きに検討中、というサインにも見える。
 彼のグリップはセミウエスタンからフルウエスタンの間の厚めのグリップを使っている。彼は背が低い分、高い打点で打たされるケースが多いため、自然と厚めのグリップになったのだろう。しかし、高いを叩く場合には厚めになるし、低めの打点をしのぐならやや薄くもする。グリップというのはそういうものだと考えて欲しい、というか、みんな意外にそうしているはずだと思うのだが……。


依頼内容877:僕はマリオ・アンチッチ選手が大好きです!!彼の強さやプレースタイルはかっこいいと思うし、僕の目標でもあります!でもまだフェデラーやヒューイットなどのトップ10の選手にはあんまり勝ててない気がします。彼自身がトップ10に入る、またはGSで強豪達を倒して優勝するためには、何が必要か、または何をどうすればいいというようなことはありますか?僕はボレーでポイントを確実に取るためにもその前のストロークをもっと安定させるべきだと思います。そちらの意見も書いてくださると、とても嬉しいです。是非お願いすます!あと、できたら彼の使用しているガットも教えてください。お願いしますm(__)m

北海道のユウキさん

報告877:アンチッチがトップ10に入り、コンスタントに上位選手に勝つためにはどうしたら、というお話だが、現時点で必要なのは、経験だろう。技術的なもの、そして、パワーはすでにトップ10級のアンチッチ。あとは揃った「道具」をどうやって「組み合わせて」、「うまく使っていくか」という段階に入っている。これは経験の蓄積で身につけるしか他には方法がない要素。対戦相手のタイプの違いに対して、自分のテニスを最適化してポイントしていく術というのも、経験による蓄積が必要だ。
 しかし、こうした要素は徐々に開花するより、突然開花するケースも少なくはない。それまで蓄積してきた経験が、ある日突然のような形で集約され、一気に成績が伸びるという選手は過去に枚挙に暇がない。
 我々の評価としては、アンチッチの最大の武器はサービス。しかし、現時点のツアーはサービスだけでは結果は残せなくなっている。サービスが強力で、活躍している選手の共通点はウイナーを取れる強力なフォアを持っていること。アンチッチの場合、このフォアの攻撃力がもう一つではなかろうか、と見ている。ボレーも悪くはないがやや柔軟さに欠け、直接ポイントにつなげられないケースが目立つ。この辺は依頼者のご指摘どおり、その前の突き球のクオリティが上がれば、ボレーでは「決めるだけ」の状態を作りやすくなるぶん、ポイントの獲得率を上げられるだろう。ただし、男臭く、ネットで勝負していく彼のボレーのスタイルも魅力的ではある。


依頼内容876:最近カプリアティの姿をまったく見ないのですが引退してしまったのでしょうか?

京都府の中さん

報告876:06年2月中旬時点での情報では、肩の手術からの回復に手間取ってはいるが、引退するつもりはなく、復帰に向けてトレーニング中との声明を全豪期間中に発表している。全豪で復帰、という噂もあったが、それは流れた。最も順調で、3月の北米シリーズ、インディアンウェルズかマイアミの辺りではないか、というのが目下の観測だ。


依頼内容875:楽しく拝見させていただいております。
 さて、近年のツアーにおいては、両手打ちバックハンドが多数派で、男子ですら片手打ちは減少傾向にあるようですが、実際のところ両者の割合はどのくらいなのでしょうか?男子・女子それぞれランキングトップ100の割合を、現在と過去で比較してみると面白そうなので調査してみてください。
 また、ツアーにおけるこの両手打ちバックの増加傾向は今後も続くと思いますか?実際に取材をされている観点から編集部の予想をお聞かせください。

福岡県のうれうれさん

報告875: 実はずいぶん以前の話にはなるものの、同じことを本誌上のコーナーで検証している。これは男子でやらないと、両手打ちの数的優位が浮き彫りになるばかりで意味がない。女子の片手打ちはあまりにも少ないのだ。全豪の決勝は、モーレスモとエナンという、片手打ち選手同士の対決になったが、全豪では1989年のグラフ対スコバ以来のことで、エナンを除くと、最近の女子で片手打ちでGSタイトルを取ったのは、先日のモーレスモだけで、この二人以外だと、ノボトナやグラフまで遡らないとならない。
 男子の両手打ちも増えているのは、05年の2月号の本誌上のコーナーでも報告した通りだ。しかし、実は片手打ちが少ないか、というとそうでもない。2005年の時点で、トップ50の約30名前後が両手打ちで、1980年代後半〜90年代初頭までだと、20名前後が両手打ちだった。割合で言えばこの15年ほどで20%増程度ということになる。ということは、常時20名前後の片手打ち選手が存在しているわけで、評価の仕方次第だが、激増というわけではない。
 これは、意外かもしれないがクレーコーターには片手打ちが今も昔も多いことが挙げられる。
芝のテニスがウインブルドンの時期の約1カ月のみとなってすでに長い(以前は全豪も全米も芝だった。全米はほんの一時期だがクレーの時代もある)。片手打ちは、芝での戦い方で最も伝統的で、強いとされるサーブ&ボレーに移行しやすい、という理由よりも、面の操作の自在性や、リーチの長さが利点として急浮上しているのが、現時点の情勢ではなかろうか。
ラケットやガットの進化により、パワー負けも以前程には心配しなくてよくなった今、クレーで片手打ちが多い理由は、伝統的な影響も大だろうが、やはり、多くの球種を、特にスライス系統のボールを打ちやすいからではなかろうか。
ハードコートではアメリカ式のハードヒット・テニスでも勝てるが、クレーではそれだけではボールに追いつかれる。クレーではパワーだけでは押し切れないのだ。やはり、様々な球種を駆使してチャンスを作り出す必要がある。両手打ちだとどうしても微妙な面の操作が難しいのは事実で、実際、両手打ちの選手たちでも、スライスやドロップショット、ボレーなどでは片手で打つ選手が少なくない(中には両サイド両手打ちで、回転や面を自在に操るサントロのような例外もいるが、彼みたいな選手は、とりあえず彼だけだ)。
今後も両手打ちの増加が続くかどうか、というのは、短期的には選手の卵であるジュニアたちを見ていればわかる。……で、短期的には続きそうだ。
いや、実は両手打ちの方がテニスを単純化しやすく、育成が早くて簡単という側面がある。ほとんどの選手は小さな子どもの頃にテニスをスタートするが、子どもは筋力がないため、ラケットを持たせれば自然と両手で持つ。ボールを遠くに飛ばしたければ、野球のバッターのように思い切り身体全体で打つだろう。つまり、子ども時代からテニスをしてきた選手にとって、両手打ちの方が幼い頃から親しんだ自然な打ち方であると言え、片手打ちというのは、後から覚える技術になりやすい(最初から片手の選手もいるが。大人になってからテニスを覚えた人と、小さな頃からテニスをやって、「選手」と呼ばれるレベルまで行った人との間には埋めがたい差があることは、大人ならちゃんと理解したいところだ)。
この後から覚える、という部分を省略し、そのまま選手になっても理論上は別にそれで構わない。両手で強打してポイントを作れる能力を重視すれば当然の帰結だ。
しかし、片手打ちが絶滅するということはなかろう。逆に人によっては「今後は片手打ちが主流に戻る」という予測をしている専門家も少なくない。テニスは将来に向かってより高速化していくことが予測される中(単純にボールのスピードではなく、展開なども含め、スピードと名のつく全ての要素)、リーチの大きさ、球種の自在さなど、片手打ちのメリットは捨てがたい。
もちろん、選手の特性やそれを教えられる指導者の存在など、必要な要素は多いが、両方をたくみに使い分ける選手が出てくる可能性もあるだろう。


依頼内容874:全豪オープンでのヒンギス選手の完全復活に感慨無量のこの頃です。ヒンギス選手の大ファンだった私は是非とも現在の彼女のことについて知りたいです。使用ラケット、テンション、技術面で言えば休養前の彼女と比べて非常に攻撃的になったように思うのですが、いかがでしょう。あんなにハードヒットしてたかなぁ?緩急やドロップショットは健在でうれしい限りです。

京都府のにこぶ〜さん

報告874:ヒンギスの復活はテニス界にとって朗報だ。できれば、今後も継続してプレーし続
けて欲しいところ(なにしろ、いつ気が変わるか……)。
 使用ラケットは06年東レPPOまでの時点では、ヨネックスのナノスピードRQ7パワーの100平方インチ。現在のガットの種類とテンションは不明だが、休養以前の彼女は50ポンド台の後半〜60ポンド台の半ばまでを使い分けていたと言われている。
 選手の印象というのは、その選手が最も強かった時期の、最も印象的な部分だけを記憶にとどめやすい。よって、例えば、サンプラスならどうしてもサービスやボレーの印象が強くなってしまうものだろうし、ボルグやレンドルだとストロークのイメージが強く残るものだろう。ヒンギスの場合は、どうしてもコントロールショットやドロップショットなど、タッチ系のプレーの方が皆さんの印象に強いのは自然だと思われる。
 だが、調査団の印象は少々異なっている。彼女のほぼデビュー時から注目してきた人なら恐らく同じだと思うが、彼女は年々パワフルさを増していた。02年秋に休養するまでの間、彼女は継続してそのパワーをアップし続けていたのだ。我々はあのセレスを相手に真っ向勝負を挑み、打ち勝った場面も見ている。だから、我々にとって、彼女がこの全豪や東レPPOで見せた強打も意外では全くなく、「ヒンギスがにぎやかしでなく、ちゃんとして戻ってきたんなら、あのぐらいはやって当然」と割合ニュートラルな目で見ていた。
我々は以前、彼女が男性のヒッティング・パートナーを相手に、ベースライン上から一歩も下がらず、ボールを左右に打ち分ける練習をしている場面を見た。男性プレーヤーが深く速いボールを打ち、それをベースライン上に止まって、あるいは、前に踏み込んで打つ練習をしていたのだ。しかも、彼女はほとんどミスをせず、ずーっと普通にラリーをしているのだ。ミスが出るのはむしろ男性プレーヤーの方。
テニスを取材してきてあれほど戦慄した経験は、他にはあまりない。確かに、我々が普段しているテニスでもショートバウンドで打つことはたまにある。しかし、それでずーっとラリーをして、さらに左右に打ち分け、球種まで操れと言われたらどうだろう。恐らくはミスを繰り返すはずだ。彼女が普通にやっているショットの質の高さと難易度の高さは、派手さがないぶん印象に残りにくいが、恐ろしいレベルのそれだ。
実はこれは02年の全米でのこと。彼女が休養する寸前の出来事だ。もちろん、試合前の練習なので、テンションは低めで、軽い調整程度という意味合いだっただろう。しかし、「なんか怖いもん見ちゃったな……」、という感覚は今でもよく覚えている。
この大会での彼女はセレスにパワー負けし、4回戦で姿を消したが、クッツァー相手の試合の時には、あの粘り強いクッツァーに全くテニスをさせず、全部ライジングで叩いてウイナーの山を築いていた。
我々にはどうもこの時の印象が強いせいか、ヒンギスの強打に関して、よく世間で言われているような、「パワーテニスに備えて強化してきた」などという印象は全く持っていない(よくシェイプしてきたな、という程度の印象)。また、フォアが弱点だった、と言われることには違和感が強い。02年の最後の頃のヒンギスのフォアは十分に強力だった。確かに、「フォアが武器です」というレベルまでは達していなかったが、彼女のフォアを狙って有利に試合を運べたのは、当時のウィリアムズ姉妹とダベンポートの二人ぐらいだったはずだ。
我々はむしろ、この3年間で彼女はあらゆる情報のアップデートをしてきたのだ、と考えている。
当時の我々は「ヒンギスの2000年問題」などと書いたことがあったが(懐かしい…)、彼女が幼い頃から磨き続けてきたテニスゲームの攻略法、それは「誰にも真似ができない」と言われ、彼女が一時代を築いた要因と言える能力。つまり、彼女の武器と言われる予測能力などの、いわゆるソフトの部分が、女子テニスのスピード化とパワー化が彼女の予測を遥かに上回るペースで進行したせいで、急速に旧式化してしまった。
それを補おうとフィジカルを上げたが、元々のスペックの限界以上に上げようとしてしまったために、故障を起こし、「テニスが楽しくなくなった」、というのが02年末に彼女がテニス界から身を引いた理由だったと考えている。
しかし、彼女は一線を退いた後も、テニス界に関わり続け、完全にコートから離れたことはなかったし、テニス中継の解説者などもつとめていたから、選手たちの分析も第三者的な目で続けられていたはず。その中で、「自分ならこう戦うなー」などと考えていた可能性はあるだろう。そして、ある日、考えたのではなかろうか。「じゃあ、 戻って試してみるか」と。
当然、そのまま戻れると思う程、彼女はテニスを知らないわけではないから、かなりハードにトレーニングをして、身体をフィットさせたが、何も「強化」するためではなく、自分が考えているテニスを実行するために必要な、フィジカルの準備を整えてきた、と考えた方が、全ての要素に説明がつけやすい。
 ……ちょっと真面目になりすぎた。
 戻ってきた彼女のテニスを見て改めて感じるのは、「うまいなぁ」という点に尽きる。いや、うまいだけならいくらでもいるが、うまくて強いという存在は現実には滅多に生まれないもの。「こんなテニスをできる人が、本当に存在しうるんだなぁ」とため息が出るほどだ。圧倒的なパワーでもないし、背の大きさによる有利さでもない。
彼女は「体格の不利はこうやってカバーしよう」という技術企画でよくある課題の全てに、適切な解答を提示し、また、提示するだけでなく、全てを自然にやりこなしちゃっている人なのだ。普通なら「絵に描いた餅」、「理想論」などと言われる領域のことを当たり前のこととして現実化しているのがヒンギスなのだと見ると、新たな凄みが発見されると思われる。
 何年かに、いや何十年に一度の天才。
 調査団では努力を否定しかねない、天才という言葉はあまり好きではないのだが、その言葉を使えば一番簡単に説明できるのが彼女やアガシ、フェデラーやサンプラス、そしてジョン・マッケンローやボルグ、コナーズという選手たちだと考えている。ヒンギスの復帰は、テニス一座に千両役者が戻ってきたという意味で非常に心強いし、素直にうれしい。


依頼内容872:ジェームスブレーク選手がダンロップと契約破棄?をして今度プリンスと契約を結んだという話を耳にしたのですが、これは本当でしょうか?だとしたら理由はなんなのでしょうか?教えてください。

千葉県のブレークさん

報告872:契約破棄は誤解だが、ブレークがプリンスと契約したのは事実だ。ブレークは04年途中から05年途中まで、病気や怪我、家族の不幸などが重なって深刻なスランプ状態で、ランキングもひどく落ち込んでいた。この時期にダンロップとの契約が切れ、更新しなかったというのが真相だ。しかし、ブレークは元々大変な実力者。全米までには復活した。そこで彼に契約の話を出したのがプリンスだった、ということのようだ。
 理由は、特にないだろう。テニス界というところは、落ち目と見なされれば、サンプラスだってアガシだって契約を打ち切られる世界。ブレークも「落ち目だ」と見なされたということだろう。ダンロップにすれば、「そりゃないよ」ということかもしれないが……。ちなみに、プリンスは目下、ブレークと彼の使用モデルを製作中と伝えられている。


依頼内容862:僕はフェデラーの大ファンで、彼が生涯グランドスラムを達成する日を今か今かと待ち望んでいるのですが・・・”強敵現る!!”そう、全仏のナダルです。これからの数年は彼に全仏のタイトルをさらわれ続けてしまうのでは、と危惧する日々・・・。そこで、調査団様のご意見を伺いたいのですが、フェデラーはこのままでも全仏を取ることは可能でしょうか?ナダルに勝てないとすれば、どうすれば勝機が見出せるでしょう?どうぞよろしくお願い致します。

千葉県のグリーンヴィルさん

報告862:ナダルは強い。しかし、ナダルの他にもクレーでは強い選手がたくさんいる。ガウディオもハードコートではさっぱりだが、クレーの上ではほとんど神がかりの強さを見せる。フェデラーは上海のカーペットでガウディオを完封で下したが、この屈辱を晴らそうと、彼もクレーの上でてぐすねを引いていることだろう。フェレーロだって健在だ。クレーコートシーズンに合わせ、クレーの猛者たちは全ての調子を整えてくる。その頂点が全仏だ。フェデラーといえども、そう簡単には勝たせてはもらえまい。
 さて、フェデラーの全仏制覇に関してだが、調査団では十分に可能性はあるものの、確かに困難であろうとは予測している。05年に取れなかったことが、何年かして、彼の引退という話が出てきた頃に、「あれが唯一のチャンスだったのに……」と言っているような予感もしないではない。
実は、05年の全仏当時、ナダルにフェデラーが負けた後、ある専門家の方が「もう、これでダメかも」とおっしゃっていたことがある。その方によれば、フェデラーは今が一番強く、体力面でもピーク。この時期に全仏が取れないと、非常に厳しい。という意味でそうおっしゃっていたのだが、「チャンスがあるとしてもあと1、2年ではなかろうか」ともおっしゃっていた。いや、調査団でも全く同感だ。
 過去の例ではあるがサンプラスも全仏での最高成績はベスト4で、それが96年のこと。25歳の時だった。彼はこの年、それまで4連覇していたウインブルドンを逃した。97年以降の全仏は3回戦が最高で、2週目にすら進めなくなっているが、ウインブルドンは00年まで連覇を続けた、ということを思い出していただきたい。そして、フェデラーもサンプラスと同じくウインブルドンを連覇中。ウインブルドンも大事にしたい気持ちは強いはずだ。
全仏はウインブルドンと近い、いや近すぎる。本誌の全仏取材班が、決勝戦の翌日にホテルの部屋でパッキングをしている時にテレビをつけると、すでに芝のテニスがスタートしている。前日まで赤土色のコートで戦われていたのに、もう芝かよ、と毎年驚かされる。この2つの大会の両方で優勝しよう、というのは今では現実的な問題ではなく、どちらかを選べば、どちらかは犠牲にしなければならない。サンプラスの96年も全仏で無理をした結果、ウインブルドンでは調子落ちとなり、準々決勝で敗れた、という見方もできなくはない。
 フェデラーもウインブルドンをある程度見限って、全仏に全てのフォーカスを合わせて来れば、相手がナダルであってもそう簡単には勝たせはしまい。
一方でナダルは「僕はウインブルドンで勝ちたい」と公言して憚らないので、彼が全仏よりウインブルドン、という気持ちで、逆にフェデラーが全仏に燃える、という互い違いの出来事でも起きれば……。
 さらにプラスの要素もある。実は全仏のクレーコートは、クレーコートの中でもかなり「速い」コートで、ボールも飛ぶボールが採用されることが多いという。しかも、センターコートは念入りに作られるためか、特に速いコートとして知られている。これはフランス協会が政策として、アタッカーの選手でも活躍できるようにわざと速くしているからだと言われる。つまり、クレーだから、という理由の一番言いにくいクレーなのだ。
 しかし、2005年1月号の本誌上の当コーナーで検証した通り、そういう諸条件を抜きにして考えても二人とも強い。フェデラーといえども、ナダルに勝つのは難しいし、これはナダルの立場から見ても、フェデラーは非常に強敵だ。これは間違いない。
ただし、違いもある。ナダルからすれば、フェデラーに勝つためにはフォアをクロスに強く打ってバックハンドを打たせ、あとは食らい付く、というシンプルな方針でいいが、フェデラーから見ると、サービスを厳しいコースに入れて、先に展開を作り、リターンゲームでも、最初から主導権を握り続けること、とやや複雑になる(フェデラーの方が器用で、攻め手が多いがゆえの複雑性でもあるが……)。しかも、ナダルはそれを簡単にはやらせてくれない。
 整理しよう。フェデラーが全仏に勝つためには、
1)ウインブルドンの連覇に関しては、「できれば勝つ」というレベルまで落として、全てを全仏に合わせること(彼の能力なら、その程度の状態でもウインブルドンで十分に優勝候補たりえるのではなかろうか、と思うのが怖いが……)。
2)前哨戦の段階でその存在感を示し、できれば多くのライバルを破っておくこと。今年のフェデラーはクレーでも強い、本気だ、というプレゼンスを見せ付けておけば、戦う前の戦意をある程度削いだ状態でコートに入れるからだ。
3)ナダルが誰かに足元をすくわれ、フェデラーと戦う前に敗退していること。さらに言えば、コリア、フェレーロ、ガウディオなどの強敵もなぜか決勝までに消えていることが望ましい。アガシが99年に全仏に勝った時の相手は、クレーで特別強いというわけではないメドベデフだったり、フェレーロの決勝の相手がフェルケルクだった、などという故事もある。つまり、運の良さも必要だろう。

依頼内容861:5,6年前にテレビでシニアツアーの試合を一度見たことがあるのですが、最近はまったく見ることができなくなってしまいました。
シニアツアーの試合は今ではテレビで見ることができないんでしょうか?

福岡県のじぇふさん

報告861:シニアツアーはヨーロッパを中心に開催されていて、06年からはアメリカでもスタートするという。中継がなされるかどうかはすべてはテレビ局さんの判断次第だが、現在、テニスを放映しているWOWOW、GAORA、J-Sportsなどの有料放送局や、地上波の中継をしているテレビ東京系、NHKなどに地道に要望のハガキやメールなどを出す、というのは意外に効果があるかもしれない。
 しかし、GSですら満足に放映されない現状で、シニアツアーは厳しいのでは、という気がするのは我々だけではあるまい……。


依頼内容860:自分はもうすぐ大学生になります。高校からテニスを始めて、少しずつ、勝つ術を知っていく毎日です。それで今、不安になっていることがあります。それは、大学にいっても自分のテニスが通用するかどうか、ということです。思う限り、エラーをあまりしないようにスピンで深い球を打ち、そして甘い球がきたらアプローチをして前で決める、というのが自分のプレースタイルです。高校では、そのプレースタイルで、ある程度のレベルまでいけました。でも最近は、どうも攻めが後手になっている気がします。せっかくいいサーブなどでチャンスを作っても、中途半端な攻めになって決め切れません。結局ミス待ちになってしまいます。多分、球にスピードがなく、死んでいる球を打っているのです。そして、球に体重がのっていないんだと思います。どうやったら重い生きている球を打つことが出来るのでしょうか。また、自分のフォアのグリップはウエスタンなのですが、大学で速い球を打つには、グリップを変える必要はあるのでしょうか。出来れば変えたくないです。そのへんのことを詳しく教えてください。

東京都のぶっさんさん

報告860:不安に思う気持ちは理解できる。しかし、心配していても何も先には進まない。それなりのレベルに行かれた、とご自身でもおっしゃっているので、課題となる部分もすでに自覚があるはず。となければ、後は話は簡単ではないか。そこを克服していけばいいのだ。
 大学のテニスのレベルも、その相手によって様々ではあろうが、18歳から22、23歳前後というのは、まだ特別何かをしなくても、体の成長で身体能力が伸びる時期の末期に当たる。最初は上級生のパワーには敵わない可能性もあるが、高校時代と同じようにやっていれば、その内にスピードに慣れ、身体もできあがってくるはずだ。考えすぎるよりも、まずはその場に慣れようという気持ちで臨んだ方がかえっていい結果が期待できるのではなかろうか。
 グリップを変える必要があるかどうかも、実際に自分で体験した上で、選択して欲しい。また、もし大学のテニスを見たり、あるいは一緒に練習したりできる条件があるなら、その機会は逃さずにその目で見て、身体で体験してみるといいだろう。その結果、変えた方がいいと思えば変えればいいし、大丈夫だと感じたらその判断に従えばいい。
 自分が描く将来像に関して、今一度明確なビジョンを描いてみるといいだろう。大学のテニスでどんなプレーヤーでありたいのか、それが描けたら後はそれに向かっていけばいいのだ。物事はまずはシンプルに考えて大筋を決め、その細かな方法はその後でいい。根本の方針がぐらついているから悩んだり、迷ったりするわけで、根本が確かなら細かな部分での悩みは文字通り細かなものでしかない、と考えてみてはいかがか?
 ちなみに、大学というところは、やった人と、やらなかった人で実は物凄く大きな差ができるところだ。大学というところは実は日本でも有数の専門家が身近にいたり、すごい設備があったりする。それを生かせば、高校時代とは比較にならないほどの成果も期待できなくはない。しかし、無為に過ごす人も多い。それもあの時代の過ごし方の一つなので、我々が意見できるものではないが、多くの時間と自由があるぶんだけ、遊んでしまったりもしやすい。そうなると、やっていた人とは差が大きくなりやすい。そのことだけは肝に命じておいていただきたい。


依頼内容859:サフィン選手はプレステMIDに何ポンドで何のガットを張っているのか、教えて下さい。

神奈川県の牛さん

報告859:調べたところ、彼は「一定のテンションではない」というのが判明した。数種類のテンションのラケットをコートに持ち込み、その時々で使い分けているらしい。こういう選手は決して珍しくはなく、かつてのマイケル・チャンや松岡修造さん、伊達公子さんなども似たような調整方法を取っていたことで知られる。


依頼内容845:7月号くらいだったと思うのですが、全仏オープンの前にアディダスのイベントで、ステフィ・グラフ選手がエナン選手とダブルスしてる記事見ました。僕はグラフの大ファンなので、今現在使用しているラケット(ウイルソンだったと思うのですが・・。)ラケット名とフェイスの大きさできればグリップサイズってわからないでしょうか?写真によって色とかも微妙に違うので・・・。

富山県のドンワンさん

報告845:彼女の契約するウイルソン社の公式発表では、n-six-oneの95とのこと。グリップサイズは3だ。

依頼内容844:女子トップ選手の力関係についてなんですが、2,3年前はウィリアムズ姉妹とベルギーの2人以外はGSタイトルを取るのが非常に厳しい状況だったと 思います。現在トップのダベンポートはこの4人にはほとんど勝てずに2番手グル ープでしたよね。それが現在では決して調子の悪くないクリスタースに勝ったり、 ヴィーナスと互角に戦ったりしてますが、女子選手の力関係はどう変わったのでし ょうか?ダベンポートがこの4人と戦える力をつけた、もしくは攻略法を見つけた ということでしょうか?
やはりこの4人がベストの時の実力は、他の選手(ダベンポートやシャラポワやモ ーレスモなど)より抜きん出ているのは、今年のGSチャンピオンがこの4人だったこ とが証明していると思うのですが、実際どう思われますか?

東京都のフィルさん

報告844:ダベンポートの底力を見誤ってはいけない。ウィリアムズ姉妹がツアーを席巻していた当時の彼女は体中の故障と戦っており、決して好調ではなかった。また、当時のベルギー勢はまだ10代で、身体も完成途上だったし、経験の蓄積もこれからの選手だった。ダベンポートが99年のウインブルドンで、決して調子が悪かったわけではなかったグラフを倒して優勝し、グラフに引導を渡した形になったのを思い出していただきたい。
 今季05年ののGSチャンピオンは全豪から順にセレナ・ウィリアムズ、エナン-H、ビーナス・ウィリアムズ、クリステルスだった。確かにこの4人が調子がよかったら、他の選手たちはほぼお手上げだ。何しろ今の彼女たちは年齢、経験ともに最も充実する年代にちょうど当たっているし、全てのバランスで他の選手たちに対してアドバンテージを築いてもいる。シャラポワはまだ若すぎ、モーレスモは優勝経験に基く自信が足りない(と言われている)。つまり、今が彼女たち4人の全盛期となっているわけだ。同時に4人以上の、しかも女王級の選手の全盛期が来ている状態というのは素晴らしい。というか、さらにそのうえ、シャラポワの勃興期に当たり、ダベンポートがまだその力を維持できているという点まで考慮すると、今の女子は何十年に一度の当たり状態だ。パチンコならフィーバーしっぱなし、ドル箱が天井まで届きそうなほど、次から次へと大当たりという状態なのだ。
 ダベンポートの実力は安定していて常に確か。これは彼女が93年以来の13シーズンで、一度も優勝できなかったシーズンが、故障のためほとんど出場できなかった02年の1シーズンだけ、という戦績を見ても明らかだ。波のある他の強豪に比べ、彼女を止めたのは故障の程度だけだった、と言い換えてもいいだろう。大型選手の悲哀だ。
 確かにウィリアムズ姉妹やベルギー勢の二人が絶好調なら、ちょっと簡単には勝てない。だが、これは何もダベンポートでなくても全選手にとって同じこと。だから、逆にダベンポートに勝てるか否かがバロメーターになる、という見かたも成立する。つまり、ダベンポートに勝てなければ、GSタイトルは手に入らない。しかし、その壁は厚い。上の4人と言えども、中途半端な状態で彼女と対戦すれば、弾き返される。そう考えてみて欲しい。
 その秘密は、彼女のテクニックの高さにある。見過ごされがちだが、彼女は非常に高い技術と繊細なテクニックを持っている。また、簡単には崩れないメンタルの強靭さを持ち、女王としてのプライドも誇り高さも歴代でも上位の部類に入る選手だ。悪いなら悪いなりに試合をまとめる能力があり、好調ならどんな相手でも蹂躙できるパワーもある。また、格下あしらいもうまいため、大会序盤で妙な消耗戦をすることなく、フレッシュな状態で上位勢との対戦にたどり着ける率が高い(逆に彼女が苦戦をしながら上位に勝ち上がってきたときには、上位勢には勝てていない)。個々の能力ではスピードではビーナスやエナンに、パワーならセレナに、運動能力ではクリステルスに一歩譲るが、総合力で言えば、依頼者の挙げる4人に決して劣らない。では何が勝敗を分けたかと言えば、その時の状態だったり、ほんの少しの運だったり、時代の勢いなどといった目には見えない何か、ということになろう。
 正直に言って、今の女子でトップ10に名を連ねている選手たちはどの選手も、いつGSタイトルを手にしたとしても、全く意外ではないほど実力が拮抗している。今年はロシア勢が昨年の勢いを失ったようにも見えたかもしれないが、常に誰かが上位に絡み、経験を積んでいる。上位勢の誰かが勢いを失えばいつでもまた取って代わるだけの潜在能力を身につけているのは確かなのだ。ミスキナのテニスはよりソリッドさを増しているし、デメンティエワのサービスもだいぶ改善されてきた。ペトロワはようやく優勝経験を積むことで必要な自信を手に入れただろうし、クズネツォワだってこのまま消えてしまうような玉ではない。
 さらに言えば、最終戦を買ったモーレスモはもしかすると来季は大化けする可能性もあり、シャラポワは、17歳でタイトルを取ったために逆に今季が不調に見えているが、18歳でGSにコンスタントにベスト4に進出している選手が他にいるだろうか?
 女子の勢力図は大会ごとに書き換えられ続けていて、一時も目が離せないというのが今のテニス界。何かの対処法を見つけたとか、そういう次元ではなく、「気迫で相手を飲む」とか、そういう武道の達人同士の戦いの域に達しつつあると見て欲しい。

依頼内容843:セレスについてなのですが、彼女は暴漢に刺されて以来、ほとんど以前の輝きを失っ てしまいました。いくらテニスがメンタルなスポーツとは言え、そんなに別人のよう になってしまうものなのでしょうか。お願いします。

千葉県のグリーンヴィルさん

報告843:依頼者は暴漢に後ろから刺されたことがあるだろうか?
 ケンカなど、お互いが「そのつもり」で争った結果、刺されて負った傷なら話は別だが、通り魔の形で、本人には全く心構えも、予測もできず、また何の落ち度もないのに刺されたという経験は、調査団の誰にもなかった。だから、その心の状態がどうなってしまうかまでは正直想像の範囲を出ない。しかし、相当なショックだったことは疑いのないところだろう。
 警察庁が公表している「犯罪被害者の実態」というデータによれば、身体被害者の約8割強が「不安だった」、「驚いた、信じられない」と解答し、二次的な状況としては、7割以上の人が「精神的ショックを受けた」、「仕事をしばらく休んだり、やめなくてはならなくなった」と答えている。
 セレスの場合、さらに考慮しなくてはならないのが、彼女が刺されたのが試合中のコートだったということ。犯罪被害者は事件のことを思い出したりするような状況下に置かれると、当時の恐怖が甦ってきたりすることが多いと言われる。もし、彼女がテニスとは全然関係ない場所で刺されていたなら、もしかすると復帰もよりスムーズだったかもしれないが、テニス選手がコートに出るたびに恐怖感を甦らせられる状況の困難さというのは、我々の想像を超えるだろう。
 選手にとって「最も自分が輝かしい場所」であるはずのコートが怖い。これはもうメンタルがどうとかいう軽い問題ではない。人間の尊厳に関わる深い問題だ。
 しかし、それでも彼女は戻ってきて、多くの勝ち星を挙げた。選手としての強さにおいて、「輝きを失った」のはその前後の実績を見れば、確かであると言わざるを得ないが、むしろ、彼女の勇気ある姿は恐らく、世界中の多くの人々を力づけたのではなかろうか。世界には、そしてこの日本でも、各種犯罪の被害者は数多い。そんな人々にとって、彼女自身の選手としての結果はともかく、人間としては輝いて見えていたのではなかろうかと、調査団では考える。
 ただし、あの事件以降、彼女は刺されたドイツの大会には一切出場していないこと、女子の最終戦が一度ドイツ開催になった時に、自分に何の相談もされなかったことに傷付き、同時に非常な憤りを露にしていたことなどを思い出せば、その恐怖感は今もまだ残っていると想像した方がよかろうとは思う。

依頼内容842:僕は今スペインのF.ロペスというサーブ&ボレーヤーの選手がとても気に なっています。先日スマッシュを読ませていただいてフェデラーやヒューイットがア ルパワーのハーフを使っているなどスマッシュさんの情報には驚きました。そこで質 問なんですけどロペスが使っているガット、テンション、振動止め、グリップ、シュ ーズ分かるものはすべて教えてください。お願いします!!

神奈川県のオマーンさん

報告842:今年の全豪の時点でだが、使用ラケットはバボラ・ピュアドライブ+、使用ストリングはルキシロンのビッグバンガー・オリジナルでゲージは16、テンションは不明だ。ウェアとシューズはナイキ、ウェアはともかく、シューズはNike Vapor S2となっている。振動止めはバボラマークのものを使用しているようなので、特に特別なものではないだろう。
 グリップというのは、グリップテープのことだろうか? 正直、グリップテープに関しては情報がない。彼はバボラとの契約関係が強いので、バボラ社製ではないだろうか。
 今のところ、我々もこの程度が精一杯だ。

依頼内容841: USオープンベスト4になったアメリカのロビージネプリ選手に最近ハマッて しまいました!!この前のジャパンオープンの試合を見て思ったんですが、彼が二の 腕の肘に近いところに付けている リストバンドみたいなものって何ですか??よくバスケットボールの選手も同じよう なものをしていると思うのですが同じものですか??また、スポーツショップで購入 することはできますか??

福島県のpooさん

報告841:最近はセレナ・ウィリアムズも似たようなバンドをつけていて、実は調査団では非常に心配している。あの位置に付けられるバンドは通常のリストバンドと違い、ただの汗拭きという役割だけではないはずだからだ。
 あの位置のバンドはヒジに何かの不安や痛みがあったりする場合、ヒジ周辺の腱を圧迫することで固定して症状を和らげたり、あるいは痛みの発生を予防するため、という明確な目的があるからだ。彼ももしかするとヒジに不安を抱えているのかもしれない。
 スポーツショップで、テニス用品が置いてあり、かつ品揃えがある程度以上充実しているお店なら、サポーターのコーナーにあるのではないかと思う。
 ちなみに、彼のウェアは自転車競技などで有名な「アンダーアーマー」というブランドのウェア。日本でも有名スポーツ店などにはその製品が置かれているはずだ(テニスウェアがあるかどうかは正直わからない……)。彼曰く「誰も着てないブランドだから気に入ってる」とのこと。流行ったら別のに変えちゃうかも……。

依頼内容840:フェデラーは以前からサンプラスと比較されてきました。しかし今では史上最強と言 う人もいるくらいで、それとともにたまに聞くのが、”第二のロッド・レーバー”と いう表現です。僕は彼が二度年間グランドスラムを達成したことくらいしか知らない のですが、レーバーというのは一体どういった選手だったのでしょうか。よろしくお 願い致します。

千葉県のグリーンヴィルさん

報告840:ロッド・レーバー。1938年8月9日生まれのオーストラリア人で、172cm/68kgとそのプロフィールにはある(この身長体重がいつの時点のものかは不明。しかし、当時としても決して体格に恵まれていたとは言えない数字だ)。左利きのオールラウンダーで、62年と69年に2度年間GSを達成。その他を含めると生涯で11度のGS制覇がある。
 なんだ、サンプラスより3勝も少ない、などと侮ってはいけない。当時のテニス界に起きた混乱がなければ、彼のGSタイトルは11勝どころではなく、20勝台、いや30勝台に突入していたとしても全く不思議ではなかっただろう、と今でも言われる。テニス史上、最強の選手を一人選べ、と言われた時、彼を知る世代の人たちは「ロッド・レーバー」の名を当然のようして挙げる。ジョン・マッケンローも「レーバーが?1。間違いない。14勝したサンプラスも(選手層が厚く、レベルが上がった)この時代としては凄いが、あいつは全仏に勝ってないから、1位タイだ」と言い切っているほど。
 本誌解説でもお馴染みの丸山薫さんに以前、テニスの技術史についてうかがったことがあるのだが、「テニスの歴史を技術で振り返ろうとすると、レーバーという存在は外して考えないといけない」とおっしゃっていたことがある。というのは、レーバーのプレーが時代を超越していたからだという。「なにしろ彼は50〜60年代という時代に、すでに現在と同じようなオールラウンドなテニスをしていたからなんですよ」。
 当時は芝の大会が多かったこともあって、彼も当然サーブ&ボレーが中心の選手ではあるし、ラケットは当然ウッドなのだが、トップスピンも、ショートアングルも使い、トップスピンロブや展開の早さなど、全てが別格だったのだ。
 レーバーの現役時代は56年〜71年頃まで(77年までは断続的に出ていたが)。この時代はテニス界の一大変革期だった。テニスにプロ化の波が押し寄せ、選手と大会側が対立。63年から67年までの5シーズンにわたって、GSからプロが締め出されたのだ。
 当時、GSは興行として大変な人気が集まり始めていて、大きなスポーツイベントに成長しつつあった。しかし、選手たちには名誉以外の報酬は、ほとんど与えられていないと言っていい状況で、大会の収益は全て大会が独占している形だった。選手たちは当然反発した。当時のトップ選手たちは独自にツアーを作り、そこで賞金を得る形でプロになったのだ。いわばストライキであり、反逆だ。
 レーバーも当時のトップ選手としてプロになったため、この5年間はGSに出られなかった。テニス界の「正史」であるGSの歴史の中で、彼に5年の空白期間があるのはそのためだ。もし、この5年間もGSに出ていれば、彼の年間GSの記録は2回のみで終わらなかっただろう。なにしろ、25歳〜30歳という選手として最も完成する時期にGSに出ていないのに、プロが締め出される直前の24歳の時と、プロが解禁されて戻ってきた31歳の時の2回で年間GSを達成したのだ。殿堂入りしたテニス記者のバド・コリンズ氏はその記事の中で、今まで一番興奮したシーンの中のひとつとして「69年にプロ解禁となった後、ロッド・レーバーたちがGSのコートに戻ってきたこと」を挙げることがあるほどだ。
 彼の異名は「ロケット」。その強力なサービスと、機敏な動きで時代を先取りしたオールラウンダーだった。幼い頃のサンプラスが繰り返し彼のビデオや映像を見て、「こんな選手になりたい」とそのプレースタイルを模倣したというのは有名な話だ。
 どんな選手だったかと言われれば、プレースタイル上は、フェデラーというよりサンプラスに近いサーブ&ボレーヤー系統のオールラウンダー。フェデラーが「第2の」と呼ばれるのは、恐らく、「フェデラーなら年間GSを達成できるかも」という期待を込めた言い方だろう。

依頼内容839:いつも楽しく読ませて頂いております。
毎年恒例のAIGジャパンオープンに今年も行って来ました。今年もサフィンやヘンマン、ブライヤン兄弟など楽しみにしていたシード選手が欠場して楽しみが半減してしまいましたが、今年から男子ダブルスが新ルールで行われ、鈴木貴男&岩淵聡の日本人選手が優勝する喜ばしいニュースもありました。そこで質問ですが、この男子ダブルスの新ルール方式の試合は他のグランドスラムやマスターズ等のATPの試合でも採用されてるのでしょうか?また国内の全日本やJOPの試合でも採用されるのでしょうか?あと、WTAでも採用されるのでしょうか?将来的に草トーでもこの新ルールを採用した試合が多くなりそうで心配です。

神奈川県のあがちっち父さん

報告839:この問題に関しては多くのご意見があるとは思うが、まずは論評を交えず、現時点で指摘されている事柄のみを、前提としてお話したい。
 現在、プロツアーでは、特に男子では、大会にかかる予算を政策的に圧縮したがっているようだ。で、その削減のためのターゲットになったのが、どうやらダブルスらしいというのは間違いないだろう。この数年、シングルスの賞金総額は横ばいから微増という状態なのに対し、ダブルスは下降の一途、というのがこれを端的に示している。ダブルスがターゲットになったのは、恐らく、ダブルスという種目に観客が集まらず、興行としての魅力に乏しいの反面で、ある評価法ではシングルスの倍近い予算を食う。そう見なされているからだ。
 特に大会関係者の頭を悩ませているのが、ダブルス・スペシャリストの存在で、大会はシングルスに出場する選手たちと、ダブルスに出場する選手たちの両方にホスピタリティ(ホテルの宿泊代や、その他の身の回りのサービスを選手に提供すること。一般にツアー・レベルの大会の本戦出場選手は、宿泊費などは大会が負担することになっている)を付けなければならない。しかも、ダブルスだから二人に一部屋、というわけにはいかず(選手も大人ですから……)、ダブルスの選手には一人一部屋の計2部屋を用意しなければならない。つまり、シングルスの選手の倍の費用がかかるわけだ。もし、シングルスの選手がダブルスにも出てくれれば、このぶんが丸々浮く。
 なぜこうしたこと(ダブルスが縮小されたり、スペシャリストが目の敵にされるような事態)が起きているかという背景を説明しなければなるまい。現時点で予算が潤沢で、運営に苦労していないという大会は、実はGSを含めて世界中にほとんど存在しないからなのだ。削れる費用は1円だって削りたいという大会がほとんど。これは高騰を続ける選手の賞金額やアピアランスフィー、運営費用、世界的な不景気によるスポンサー不足などが影響している。予算はより効果的な部分に集中的に投下しなければ、大会自体の存続が危うい、という大会は、実は世界中に数多い。
 そこで、大会サイドとしては二つの方策を考えたわけだ。ひとつはダブルスの賞金を下げること。もうひとつがダブルスにシングルスの選手も出てもらえるようにすることの二つだ。ダブルスを興行として人気のある種目にするためには、人気のあるシングルスの選手に出てもらうのが一番手っ取り早い。しかも、ホスピタリティ予算も浮かせられる、ということで一石二鳥なのだ。
 この線に沿って、ルールも改定され続けている。まずはシングルスのランキングを使ってダブルスにエントリーできるようした。これなら、それ以前にダブルスに一切出場していなくても、突然出場したくなったときにシングルスのプレーヤーに出てもらいやすい。これはある程度効果があった。デ杯を間近にした大会では、選手側にもデ杯への実戦練習ができる、などのメリットがあるため、デ杯ではダブルスにも出なければならないフェデラーなどがダブルスに出場したからだ。だが、効果は大きくなかった。デ杯などの特別な理由があり、日程的にデ杯に近い大会以外の大会では変化が認められなかったからだ。
 で、今回出てきたのが、「試合を短くして選手の負担を減らそう」というルール変更だったわけだ。負担が減れば、シングルスプレーヤーもダブルスに出てもらいやすくなる。というのが、その理由だと言われる。
 ダブルスの人気興隆策として、あるいは予算削減策としてのいわば大会のリストラクチャーだ(この言葉の本来の意味は、再構築であって、単純な人員削減策ではないのに注意したいが……)。しかし、「切り捨てられた」形のダブルス・スペシャリストたちには何の事前相談もなく行なわれたため、当然物凄い反発があり、現在、訴訟も行なわれている。
 これには様々な意見がある。当然、擁護派の方は「ダブルス・スペシャリストたちの卓越したプレーは素晴らしいのに見る眼がない」と憤っておられるようだし、そのご意見には我々も同意する。しかし、ダブルスのコートに観客が集まらないのは、残念だが事実であり(全米決勝でブライアン兄弟が戦っていても、観客はガラガラだった。しかし、シャラポワがミックスに出てたときには観客席に入りきらないほどの観客が詰め掛けた。アレを見てしまうと弁護もしにくい……)、テレビ中継でも魅力あるコンテンツとは見なされていない。観客が見にも来ないものをテレビが中継する理由もないと考えれば、これも当然の扱いだろう。残念だが選手サイドを現象面から弁護するのは難しい。
 大会側に対し「ダブルスを盛り上げたいという意思がなく、プロモーションに予算を使わないから」という主張もあれば、逆に「選手たちのプレーに観客をひきつける魅力がない」という主張もある(この点、女子ではまだシングルスのトップクラスがダブルスに出ていることも多く、さほどに問題視はされていないというのが男子とはやや状況が違うところ)。時折、引退した元スター選手がダブルスに出ていることがあるが(今年で言えば、アメリカの大会で、クーリエがアガシと組んで出たりとか)、これは恐らくダブルスにも話題を、と大会が頭をひねった結果、元選手にお願いして出てもらうという形式が多いのではなかろうか。
 今回採用されたショートセット方式は、まだテスト段階で採用も基本的には大会の任意となっているはずだが、大会側が採用すると合意すれば、いつでも採用できるスタイルになっているし、現時点で合意しない大会はほとんどないだろう。事実上のルール変更と言っていい。今後、GSでも採用する大会が出てくるだろうし、それがうまく行けば、スタンダード化していくだろう。全てはプロでの成否次第だ。
 ただし、ジュニアの大会などでは、「進行優先」ですでに8ゲーム先取の1セットマッチなどが普通に行なわれている。進行優先、という命題が強い大会であれば、国内の公式戦などでも普通に採用される可能性は高い。また、草トーは、すでに8ゲーム先取のノーアド、というのが割合スタンダードではなかろうか?(得に大規模のリゾート草トー系)。
話は横道に逸れるが、あえて言わせていただければ、国内大会において、特にジュニア年代の大会において、進行優先で短いゲーム数で試合というのは、本当に適切な対処方法なのかと時折考えさせられる。
 高校野球の地方予選で、日程の問題で5回終了の一日2試合とか、サッカーで地方予選だから15分ハーフ、延長戦なしで同点の場合PK、などというルールを採用したら、日本の野球やサッカーのレベルはあっという間に落ちるだろう。確かにサッカーや野球には大きなスポンサーが付いているから予算には困っていないかもしれないが、仮にスポンサーが離れても、彼らはなんとか試合をきちんとできるようにギリギリまで努力するだろう。日程を短くして、短縮ルールに変える、という手段を簡単に選択しはすまい。
 サッカーは時間で区切られているけど、テニスはそうではない、というなら、野球だって時間で区切られてはいない。テニスコートは同じ場所に10面近いコート数があるところもあるから、終わった試合から次々とコートに試合を入れられるが、野球場が一つの運動公園内に10面もある、というところは国内ではほとんどない。しかし、高校野球は毎年無事に開催され、ちゃんと終了している。
 日本のテニス界にはこういう「選手を育成する」という長期的な視点が本当にあるのだろうか。なにしろジュニア年代の国内大会はプロや大人の公式戦と「ルール」が違う。この状態から本当に「世界に通用する選手」が出てこられるのだろうか。
 試合は練習とは違う。10時間の練習より、1時間半の試合の方が学べることが多いということだってある。違うルールで高校年代まで戦っていて、大人になって、あるいはジュニアの国際大会に出たら、いきなり3セットマッチ、という方が不自然だ、とは考えられまいか? 学校テニスは教育の一環で、というなら学校サッカーや学校野球というカテゴリーがあるのかと問いたい。学校スポーツだから「本物」を学ぶ、というなら理解できるが……。

依頼内容838:初めまして。いつも楽しく、そして興味深く拝読しています。時に大笑いし時には考えさせられる回答の数々、一読者としていつも楽しませて頂いております。技術的な話題からは遠く離れてしまう質問なのですが、宜しいでしょうか。
著名なプロテニスプレーヤーで、英語もしくは自国語で何か面白いあだ名、ニック ネームを付けられている選手をご存知ありませんか?
と言いますのも、たとえばサッカーでは「ドイツの皇帝(例としては古いですが)」「フランスの至宝」「怪物」「ワンダーボーイ」など、詳しいファンなら「あああの人だ」とピンと来る呼ばれ方をしていたり、或いはサビオラの「コネホ(うさぎ)」やアイマールの「パジャソ(道化師)」などのように、選手本人からすると微妙ながらもけっこう面白いニックネームも耳にします。
テニスの場合はこういうことって、少ないんでしょうか。昔(……)、私の大好きだったエドバーグが、その名前とプレーをかけて「アイスバーグ」って呼ばれてた(どっちかというと揶揄気味に)のは良く覚えてるんですが。私が知らないだけで有名な例があったら、すみません。
ちなみに個人的には、ヒューイットはもう“ロッキー”で良いと思います(好きですよレイトン/笑)。
また日本ですと、マスコミがスポーツ選手に形容詞やニックネームをつけて紹介しているという印象があります。これは、まだプロスポーツ文化が浅い(欧米に比べればですが)日本において、ファンの関心を集