| 報告885:十把一絡げにはできないが、それがジュニアと一般のレベルの違いということになる。フェデラーのようにジュニアでも世界ナンバー1で、一般でも世界ナンバー1という選手もいるにはいるが、一般的に言って、ジュニアと一般は別のカテゴリー。同じであるようでいて、違うのだ。
何が違うのかと言えばまず、選手の層が違う。年齢で区切られているジュニアの場合、せいぜい5世代ぐらいしかいないのに対して、一般は15、6歳から30歳ぐらいまでの15世代近くが同じトーナメントを戦う。各世代にチャンピオンがいるとすれば、15世代のチャンピオンたちと戦わなければならないのが一般ということになるわけで、単純に言うと、層の厚みも3倍以上ということになる。そりゃ、そう簡単に勝てはしない。これが原因と言えば原因だろう。
もう一つは、ジュニアに出ていない強豪の存在だ。スペインやアメリカなど、テニス強豪国の場合、あるいは、ジュニア時代から飛びぬけた実力を持っている選手の場合、ジュニア大会には出ずにいきなり一般に行ってしまうことが数多くある。女子にこの傾向は特に顕著だが、15歳からいきなりツアーに出ていく選手も数多い。ジュニア部門に出ればそこそこ以上に勝てるであろう実力派でも、お金になるツアーで少しでも早く頭角を現したい、という欲求の強い選手に数多いようだ。スペイン勢にはプロ志向が強く、アマチュア志向のジュニア大会にはほとんど興味を示さないのに対し、アメリカ勢の場合は国内にジュニア大会が充実していることなどから、いわゆる国際大会には出てこないため世界的に無名、という選手がいたりする。しかし、しかし、アメリカの国内トーナメントのレベルは非常に高いので、全米ジュニアかなんかに、主催者推薦かなんかをもらって突然ひょいっと出てくるととんでもなく強い、
という選手がいたりする。
最もキツイ物言いをする人だと、「テニスのジュニアなんて、プロになりそこねた連中のトーナメントだ」と決め付けている場合もある。確かにそう極論できてしまう時代がなかったわけではないし、今もある一面だけを見れば、そう言いたくなる気持ちも、理由も、どちらも理解は出来る。「本当のトップクラスは15,16歳で一般のツアーに行ってるじゃないか」というのは、確かに真実ではあるだろう。
ただし、近年はやや情勢が変わってきていて、「ジュニアで実績を残す必要がある実力派は、ジュニアに出ている」ということにもなっている。テニスのグローバル化により、プロを目指す選手は増えている。しかし、いざツアーを回ろうとなるとお金がかかる。先進国出身で、富裕な家庭出身ならいいが、途上国の並以下の家庭出身の場合、海外遠征をするというだけで一大事。当然、支援者を見つけたいとなるはずだが、「僕はテニスで強いんです。将来、なんばー1になりますから、サポートしてください」と突然企業の門を叩いても、誰も話を聞いてはくれないだろう。しかし、「僕はジュニアで世界10位です。しょうらいは世界一になりますからサポートしてください」と言えば、「ちょっと話を聞いてみようか」という企業も出てくるもの。そういう理由から、ジュニア時代の実績を重視する選手が世界的に増加傾向、というのもある。
また、途上国のテニス協会などの団体がジュニアをサポートする場合、その選手がプロとしてやっていけるように奨学金などで支援するケースと、チームのような体制を築いて、ジュニアのトーナメントを回らせるというケースがある(国によっては企業がバックアップしているケースもある)。他にもITFがジュニアの有望選手をチョイスして、ITFジュニアチームという形で世界のジュニアトーナメントを回らせたりしたこともある。
どれが一番いい支援の形態か、というのは判断が難しい。あるロシアの選手の場合、マイナー時代の支援を銀行から受けていたという選手がいたが、これの実態はつまりは「借金」で、もし、テニス選手としてモノになれなかったら、今頃……。という選手もいないではない。それが選手のモチベーションを炊きつけたのだ、と結果論としては言えてしまえないわけではないし、無償でのスポンサードが選手にとって一番ありがたいのは事実だろうが、そういう支援にはいつか「もらって当然」、という傲慢さと油断に変化しかねない危うさも内在する。
企業なりなんなりが誰かを支援する、それがすでに有名人に対しての、自己の宣伝目的でもあり、お互いにメリットが見える形でフィーを支払うのに比べ、まだ海のものとも山のものともわからない相手に対するフィー、いわゆる先行投資は企業側にはもちろん、受ける側にもリスクがある、という視点は持っておいてもいいだろうと思われる。
以前はジュニアのトップ=世界のトップの卵、というのはやや無理がある仮定と言われた時代もあるが、今は両者が近づきつつあると見てもそう間違いではないだろう。ただし、伸び悩む、ということは誰にでもあることなので、やはり十把一絡げにはできないのだが……。
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