このコーナーは、本誌と連動する 『スマッシュ調査団』と『テニスフリートーク』で構成されています。 『スマッシュ調査団』は、テニスに関する素朴な疑問を調査・解決していく、本誌で大好評連載中のコーナー。毎月寄せられる多くの依頼に本誌だけではとても答えていけそうにない。というわけで、インターネット部門を開設することになりました。このコーナーは随時更新していく予定なので、こまめにチェックして下さいね。依頼は、従来通り本誌宛へのお葉書はもちろん、インターネットでも受付けます。インターネット受付分から本誌への展開もあるので、「アレって何かな?」と思ったら、依頼してほしい! ◆応募方法 ・下にある投稿ボタンより専用フォームを呼び出して、必要事項をすべてご記入の上送信して下さい。 ・投稿されたご意見は、編集部を経由して随時このページに掲載していきます。(ただし、掲載にふさわしくない等編集部で判断したものは除かせていただきますので、予めご了承下さい)。掲載に際しては氏名のみを掲載しますが、ペンネームでの掲載を希望される方は、忘れずにペンネームを記入しておいて下さい。
依頼内容501:プロの各大会のドローですが、シード選手の割り振り方法は決まっているのでしょうか。(それとも大会毎にローカルなルールがあるのでしょうか。。)今更ながらの質問でお恥ずかしいのですが、是非ご教示いただきたく宜しくお願い致します。
報告501:決まっている。まず、ドロー表は2からスタートして、その累乗で作らないと公平な表が作れないので、どんな大会であっても2の累乗数のトーナメント表を用いるようにというルールがある。4、8、16、32、64、128という具合だ。たまに56ドローと発表される大会があったり、96ドローと発表される大会もあるが、56ドローの場合は16人のシード選手の1回戦はBYEであり、使われるトーナメント表は64ドローの表であり、96ドローの場合は32人のシード選手の1回戦がBYEとなり、使う表は128ドローのトーナメント表となる。 選手がドローのどの位置に配置されるかは「くじ引き」によって決定される。ドローミーティングと呼ばれるのがそれで、基本的には公開された場で選手の代表が立会いの下で行なわれ、くじ引きに選手が参加することもある。その場に居合わせた関係者が引くケースもあり、実は筆者はAIGジャパン・オープンのドローのくじを引いたことがある。 次にシード選手だが、例えばGSの場合、まずシード選手の位置が決められる。最初に決まっているのは第1シードと第2シードは一番端と端になるという点だ。次に3、4は最初にくじを引かれた方がドロー番号の33番目、次が96番目とされ(ここから先はお手元にどこかの大会のドローシートをプリントアウトして突き合せて見て欲しい)、5、6、7、8は同様に32番目、64番目、65番目、97番目という具合にくじ引きで割り振られていく。9シード以下は割愛するが、大体はこんなムードだ。 その後、ノーシードの選手の枠がくじで決められていくという手順になっている。 時折、こんなカードが1回戦で?! というケースもある。かつて、サンプラスが早いラウンドで強敵と当たり続け、タフマッチを強いられていた頃、カフェルニコフが「そうなったのは奴がランキングを落としたせいだ」と言っていたことがあったが、全くおっしゃるとおりで、早いラウンドで強敵と当たりたくなかったら、上位シードを付けてもらえるランキングに上げなければならないのだ。
依頼内容502:四大大会の開催日時を教えてほしいんですが
報告502:年によっても多少の前後はあるが、全豪が1月中旬から下旬にかけて。全仏は5月下旬から6月初旬、ウインブルドンは6月下旬から7月初旬、全米が8月下旬から9月初旬までとなっている。 詳しくは日本テニス協会のホームページや放映を実施する各放送局のHP、その時期の専門誌各誌などで調べて欲しい。また、ATPやWTAのホームページ(当然英語)にも出ているのでそちらも合わせて確認されるとよろしかろうと思う。
依頼内容503:ウインブルドンの後は、優勝した男女が舞踏会?をすると聞きました。本当ですか?ほかにはすることあるのですか?(撮影会とか…?)それと、他の大会でもこのようなことをするんですか?教えて下さい。TVには写らないプロの姿が気になります。
報告503:ウインブルドンの場合は「チャンピオンズ・ディナー」という名目のパーティーが行なわれている。こうした公式の催しは他のGSにはない。どうしてウインブルドンにだけあるのかといえば、ウインブルドンという大会が私立のテニスクラブである「オール・イングランド・クロケット&ローンテニスクラブ」という団体の主催であることを思い出してもらえば理解しやすくなる。男女のチャンピオンはこのクラブの会員として迎えられることになっている。つまり、「歓迎会」的な側面が強い催しであると理解すればいいだろう。 ちなみに、このパーティーで男女の優勝者がダンスをする、というのが慣例になっているので「舞踏会」という形で依頼者が聞いたのかもしれない。いや、向こうのパーティーで「ディナー」と名が付く種類のものであれば(正装しないといけないような種類のものの場合は特に)、たいていは生バンドの演奏などがあり、宴もたけなわになってくると自然発生的にダンスを始める紳士淑女がいるのは割と普通だ。わが国の伝統的な宴会で宴もたけなわになると喉自慢のおじさんが歌いだしたり、踊り出したりする図に置き換えるとわかりやすい、……かもしれない。 他の大会では、というお話だが、いわゆる公式行事として行なわれるのは決勝後ではなく、大会初日や開幕前日のレセプションパーティーの方が多い。これは選手だけでなく、スポンサー関係者を呼んで開催されるパーティーで、なぜ大会初日かと言えば、その方が選手が大勢いるからだ(テニスの大会では選手は負けると次の日や下手をすればその日の晩には、次の大会の開催地に移動したり、自宅に帰ってしまうことが常)。 優勝した選手はたいていの場合は身内でパーティーをしたりしているようだが、何しろ「身内で」の話なのでさすがの我々も細かいところまではわからない。 そういえば以前、全米に取材に行った時、決勝終了後に選手たちが数多く宿泊しているホテルの前を通りがかったら、全ての入り口が警官で封鎖され、ホテルの前には数多くのリムジンが停車。中からは何やら楽しげなムードが通りまで漂ってきていたことがあった。その時に優勝したのはサンプラス。彼ぐらいの選手だと、「身内」も周囲の人々の数人というわけにもいかず、ホテル貸切状態になった、のかもしれない(何しろ中を覗けたわけではないので、このくだりに関しては全て推測です、はい)。
依頼内容504:テニス大好き人間なのですが、いまは右手首が腱鞘炎になってしまいドクターストップになってテニスが出来ない状態です。この腱鞘炎になったのも3回目なのです。そのたびにテニスが2・3ヶ月出来なくなってしまうので、なにか予防策などありましたらお教え願えませんでしょうか? テーピングなどしたらよいのでしょうか?
報告504:いや、もちろんテーピングなども効果的だが、まずはかかりつけの医師の方と相談して欲しい。医師の立場からすれば恐らく「テニスなんてしなければ腱鞘炎にはならない」という回答しか得られないかもしれないが、医師の方にもテニス好きは多いので、親身に相談に乗ってくれる方も少なくないと思う。地元の大きめの病院であれば、整形外科にスポーツ外来を設けているところもあるだろうし、近くにそうした病院がないのであれば、かかりつけの病院の医師に「スポーツ外来」を紹介してもらうという手もある。 また、腱鞘炎はクセになる種類の故障なので、しっかりと完治させた上で、周囲の筋肉を鍛えるなどのリハビリも必要だと思われる。ただし、依頼者の状態を把握できない我々にいえるのは、これらも全て医師や理学療法士の方と相談して欲しいということだけだ。 お気持ちはお察しするが、とにかく、医師や専門家の方に相談して欲しい。
依頼内容505:最近、サーブのスピードが上がりません。フォームはあまりおかしくないと思います。中学生なので変な筋トレをすると身長が伸びなくなるといわれるので、ほとんどしていません。体にあまり負担がなくサーブのスピードが上がる筋トレがあれば教えて下さい(できれば回数なども教えて下さい)
報告505: サービスのスピードを上げたい、という気持ちは理解する。しかし、サービスに有効な筋力トレーニングというのは存在しないとまずは心得ておいて欲しい。 サービスに必要なのは、下半身の筋力であり、腹筋や背筋などの体幹部の筋力であり、肩や腕の筋力と柔軟性であり、リストなどをつかさどる上腕部の強靭さとしなやかさ……という具合に、つまりは全身の筋力をバランスよく鍛えること、というのが結論となるからだ。 フォームはおかしくない、というのであれば、毎日のオフコートでのトレーニングで手を抜かずに全身の筋力をバランスよく鍛えるように意識して欲しい(中学生でもダッシュや、ジャンプ系トレーニング、腕立て伏せや腹筋、背筋など自分の体重を負荷にする程度のトレーニングは普通にやっていると思う)。 専門家のきちんとした指導の下であれば、依頼者の年代でのトレーニングでも全てが危険というわけでも、悪影響ともいえないが、そうした環境がないのなら、自分の体重を負荷にする程度のトレーニングをサボらずに取り組んで欲しい。くれぐれも腕や肩、リストだけを鍛えればサービスが速くなるのでは?、という短絡思考にだけは陥らないで欲しい。確かにそれらのパワーが必要なのは間違いないが、そこだけ鍛えても意味はないのだ。
依頼内容506:シャラポア選手が使用しているプリンスのラケットは何でしょうか?
報告506:WTAのホームページによれば、プリンスのモア・アタックというラケットだと書かれているが、日本のプリンスの代理店であるダイワ精工さまに問い合わせたところ、彼女が使っているのは、正確に言うとアメリカで発売されている同製品とも仕様の異なるプロトタイプとのこと。 近いうちに製品化される予定もあるということなので、気長に発表を待ってみて欲しい。
依頼内容507:現在日本人男子プロテニスプレーヤーがグランドスラムなどの大きな大会で勝ち上がることがほとんどありません。グランドスラム大会のドローに日本人の名前がないと少しさびしい気がします。世界で活躍するための条件で日本人に足りない物は何でしょうか?また、その差はどこでついてしまうのでしょうか?
報告507:少しではなく、全く寂しい話で、男子の活躍選手は我々も待望久しい。しかし、この依頼に対する明確で、かつ正確な調査報告ほど難しいものもない。なぜなら原因が分かれば解決策も見出せるはずで、当然日本にも多くの活躍選手が出てきているはずだからだ。 何しろこの手の話題が語られるようになって、すでに長ーい時間が過ぎている。今までにも多くの選手たちや専門家たちがその原因と対策を考え、そして実行してきたであろうのに、まだ活躍選手が出てきていないということは、いまだこの課題に対する明確な答えを誰も提示できていない証拠と言わざるをえない。世界基準で言えば、あの松岡修造選手であっても「一時期活躍した中堅選手」に過ぎないし、もし彼が日本人選手でなく、また、同じアジアの選手でもなく、東欧かどこかの選手だったとしたら、日本人ファンで「マツオカ」を知っているのはかなりのマニアだけではなかろうか。 しかし、このままではファンとして、専門誌の一コーナーとしてなんだか悲しい。一度原点に戻ってみよう。依頼者の言う「世界で活躍するための条件」とはなんだろうか? 身長だろうか? 身長が絶対条件ならコリアや、かつてのチャンはどうなる? ガウディオだってそんなに大きな選手ではない。パワーやスピード? それだけで決まる競技ならゴンザレスやフィリポーシスが年間GSを達成していてもおかしくないが、彼はまだ一度も優勝したことがないぞ。資金? 日本人選手の多くはロシアや東欧出身の選手に比べれば多くの「ドル」を持っているし、スポンサーだって付きやすい。 調査団が疑っている、というか原因ではないかと考えているのは、実はその身体能力や技術面ではないし、ましてや体格などではない。そして、選手やコーチにだけ原因があるわけではないとも考えている。その原因はファンやメディア、スポンサーなどまで含めた日本テニス界全体の構造的な問題ではなかろうか、と考えているのだ。 日本のテニス界と、アメリカやスペイン、フランスなどの「テニス強国」を比較した時、最も際立って違うのは、「競技としてのテニスの理解度」ではなかろうかと考えられる。 まず、世界のテニスのレベルと、自分たちのレベルの比較がきちんとなされているか、を考えてみなければならない。世界のテニス界で活躍したいなら、その評価基準は世界のテニスとの比較であり、国内タイトルや国内のランキングではありえない。ライバルは○○高校の何とか君ではなく、クレーならガウディオやコリア、フェレーロやコスタであり、ハードコートでアガシやロディックに勝てるか? 芝でフェデラーに勝つにはどうしたら? と考えなければならないのだ。フェデラーはサンプラスと戦う日のことをジュニア時代から考えて練習していたというし、先日の全仏でクエルテンを苦しめたアルマグロは「全仏でグーガと試合するなんてことは、10代のテニス選手なら誰でも考えることだ」と言い切っていたが、日本の19歳の選手が現実味を持った形で同じ台詞を吐けるだろうか? 全仏でクエルテンと試合をして、そして勝つことを真剣に考えながら日々の練習やトレーニングをしているのだろうか? 世界のトップレベルがどんなプレーをするのか目と身体で理解し、それに近づき、そして追い抜くために日々、いやこの瞬間の1秒を過ごしている選手はどれほどいるだろう? ○○高校の何とか君に勝ちたいと考えて努力することが間違いだとは言わない。サテライトやフューチャーズ、チャレンジャーという下部トーナメントの厳しさに関しては調査団でも理解しているつもりだ。しかし、もし世界で活躍したいという目標があるのなら(○○高校の何とか君が世界有数の強豪であれば別として)、○○高校の何とか君など倒して当たり前で、最終的に勝ちたいのはロディックだったり、フェデラーであると思える心が必要になると考える。選手としてプレーをする以上、どんな田舎のテニスコートでも、その先にはGSのコートが続いているという実感が日本のテニス界には乏しいか、わかっていても理解されていないような気がしてならないのだ。 繰り返すがテニスは世界ツアー形式であり、その尺度に国単位での違いはない。国際的に同じ尺度なのだから余計にこの実感の有無が問われる。これは例えば、フェデラーと同い年の選手が「彼は違うなぁ」ではなく、「くそーっ」と思えるか否かが問われているのだと言い換えてもいい。同じようにファンもフェデラーが違うのではなく、「どうしてフェデラーと同い年の日本の○○選手は活躍できないんだ」と考えられるメンタリティが必要ではなかろうかとも思う。どうにも日本のテニス界というのは、お行儀がいいのか、頭がよすぎるのか、選手もファンもそういう「無鉄砲さ」というか「野性味」に欠けているような気がしてならないのだが……。 昔、日本のサッカーが今よりまだずっとずっと弱かった頃、世界の強豪相手に戦って負けたにも関わらず、「世界の○○を本気にさせた日本代表」という悲しい褒め言葉があった。本気になってくれただけでも凄いという意味なのだが、少し考えればこの台詞がいかに意味を持たないかは簡単に理解できるはずだ。今でこそ、サッカー系のメディアやファンの中にはそんな言葉を使うことの無意味さが浸透してきているが、当時はそれが普通に使われていた。 しかし、当時でさえ向上心に溢れた日本のメディアや選手、ファンはそうした記事の書かれ方に対して強い反発心を感じていたものだった。日本代表がだらしない試合をすればファンはそれに怒りを表明し、なぜ勝てないかを真剣に議論していたものだ。賛否両論がある話だが、日本代表の監督がファンのデモに端を発した運動で更迭されたことさえあった。相手がヨーロッパの名門だろうがなんだろうが、勝てなければ勝つ方法をファンも真剣に考えていたのだ。また、選手たちもどうしたら強くなれるかを本気で考えていたのだ。そして、少なくない数の選手がヨーロッパや南米に渡り(これにはプロだけでなく、ジュニアやそしてコーチなどを数多く含む)、トップクラスのプレーを学んできたことなどが日本のサッカーがどうにか世界のトップカテゴリーの末席までたどり着けた理由だ。そうやって日本のサッカーは少しずつ強くなっていったのだ。 もし、今、ホームである国立競技場でサッカーの日本代表が、本気のブラジル代表やフランス代表と戦ったとして、0-5や0-6で惨敗したとしたら、ジーコ監督や選手たちは猛烈な批判に晒され、ファンは選手のだらしなさを嘆くだろう。決して「あのブラジルを本気にさせた日本代表は成長した」という論調は生まれないはずだ。 サッカーをここまでの状況に育てたのは選手自身や協会などの努力だけではない。ファンもその進化に積極的に参加することでこうした状況は実現されたのだ。 翻ってテニス界ではどうだろう? 仮に鈴木貴男がジャパン・オープンでロディックと対戦したとしよう。鈴木貴男がいいプレーをし、ロディックが途中から必死の形相で真剣なプレーを見せたとしたら、その試合は負けで終わったとしてももうそれだけでテニス専門以外のメディアは「ロディックを本気にさせた鈴木のプレー」と評価し、ファンも「すごい」と考えてしまいやしないだろうか? しかし、本気だろうが、8割の力だろうが、鼻歌混じりのプレーだろうが負けは負けでしかない。負けた後に鈴木が「次にロディックと戦う時には絶対に負けない」と心の底から感じ、そしてその後にそのための努力を惜しまなくなればまだ救われるが、周囲が善戦祝福ムードであれば、果たして彼がそういう気持ちになれるだろうか? そうした気持ちを維持し続けられるだろうか? もしかしたら本人も心のどこかに「俺は頑張った」という気持ちが残ってしまいやしないだろうか? テニスは個人競技だけに、批判がそのまま個人攻撃になりかねないため、つい及び腰になりやすいのは事実だし、批判できるほどにテニスを見ているファンも記者も少ないという前提はある。しかし、これもすでに世界のトップレベルに来たと自他共に認めている女子だったら話が違っているのだ。仮に杉山が有明でセレナと戦ったとして、善戦空しく負けたとしよう。試合後のメディアは間違っても杉山に「セレナを本気にさせましたね!!」などという情けない質問はできないはずだし(たまーに、「初めてテニスを取材に来ました」という感じの人などだと、知らずにこれをやってしまい場を凍りつかせることもあるが……)、本人も敗戦に納得などできないという表情のはずだ。ファンも「善戦祝福ムード」というよりは、「負けて悔しい、惜しかったのに!!」と語り合うだろう。世界のテニス強国は男女ともに常にこの状態にあると考えてもらうと、調査団の言いたいことも理解してもらえるような気がする。 鈴木のランキングが100?200位台であり、杉山がトップ10だということはここでは大きな意味を持たない。負けは負けなのだ。もし、「日本男子が世界のトップクラスで活躍する姿を見たい」と本気で考えるのなら、こうした部分を選手もコーチもそしてファンやメディアも自覚していく必要が日本男子の場合にはあるような気がしてならない。何しろ男子の層は厚い。その分、上位進出は難しい。これは事実だ。しかし、拮抗している分だけチャンスを生かせれば上位進出も夢物語ではない。実際、500位台の選手レベルまでであれば、いつトップクラスを食っても不思議ではないのが今の男子テニス界。鈴木貴男や本村剛一が次の全米で3回戦や4回戦に進出したとしても、我々メディアの取材陣でテニス取材歴の長い記者であれば、さほどに驚きはしないだろう。すでに彼らにはそれだけの実力が備わっていると見られているからだ。もし、足りないものがあるとすれば、それは運であったり、気持ちであったり、周囲の環境といった目に見えない部分ではなかろうか。 ファンにできることは、それを望むことでないかと思う。まずファンが「日本男子は世界でも戦えるはず」と信じることから全てはスタートすると調査団では考える。松岡修造さんを孤立させてはならない。どんな競技であれ、競技は選手だけで成立はしないし、進化もしない。ファンと選手というのは不可分のものなのだ。今の日本テニス界が必要としているのはまず、ファンの力ではないかと、調査団では考えている。
依頼内容508:部活中に先輩にフォームが大きいと言われたのですが、本などにはフォームが大きいほうが遠心力がついていいと書いてありました。それほどスイングも遅れていないので悪くはないと思うのですがやはりフォームはコンパクトにしたほうがいいんでしょうか?フォームが大きいのでいいなら何か気をつける点はありますか?
報告508:どの程度大きいのかはともかくとして、フォームが大きくても振り遅れていないならそれでいいと思われる。無理にコンパクトにしなければならない理由はない。 大きいフォームで意識して欲しいのは、大きくスイングする分だけ、時間がコンパクトなスイングの人よりも必要になるということ。問われるのは、次のボールの予測力と、足をしっかりと動かしてしっかりと、しかも素早くポジションに入っていくフットワークだろう。機会があればフェルナンド・ゴンザレスのクレーコートとハードコートでの試合の両方を見て欲しいと思う。何か参考になる部分を発見できるのではなかろうかと思う。
依頼内容509: アンディ・ロディックの使っているガットは何ですか?
報告509:アメリカの「Tennis」誌に掲載されたところでは、タテ糸にポリを張り、横糸にナチュラルを張るハイブリッドとのこと。製品名などの詳細は明らかにされていない。
依頼内容510:浅越しのぶ選手がNECに所属しているのを知り、他にNECに所属している選手を探してみましたが、ランキングにはいませんでした。一人だけと契約している会社は聞いた事がないのですが、本当にNEC所属の選手は浅越選手だけなんでしょうか。また、他に契約選手が少ない会社はあるんでしょうか。教えて下さい。
報告510:NECは数年前まで日本リーグのチームを男女共に持っていて、毎年常に優勝を争う名門だったし、デ杯のワールドワイドの冠スポンサーとしても知られた「テニス寄り」の企業だった。以前のデ杯は正式にいうと、NEC DAVIS CUPという大会だったのだ。 しかし、不景気のあおりを受け、NECはテニスから撤退を余儀なくされ、今では男女ともにテニス部はなくなってしまった。浅越選手もNECのテニス部所属の選手の一人だったが、元々プロ契約であったおかげか、それとも彼女が世界で活躍するトップクラスだったおかげか、関係は今日も続いている。 一人だけと契約している選手を聞いたことがない? プロとの所属契約ということになると、そんなに珍しい話ではないと思うのだが……。契約の形態は様々だが、例えば、現在ミズノ所属のプロ選手は寺地貴弘選手だけだし、以前、杉山愛の所属先だった日本テレコムが他の選手とも契約していたという話も聞いたことがない。また、今、一藤木貴大選手の所属先はTBCだが、TBCが他の選手を抱えているという話も知らない。
依頼内容511:グリップテープの上にあるゴムのバンドの利点がよくわかりません。プロは付けていない人も多いと思うのですが、どうなんでしょうか。教えて下さい。
報告511:ぱそさんは色んなところにお住まいの方のようだが、ま、いいか。 ゴムバンドの利点は見ての通りで、「グリップテープの剥がれ止め」だ。グリップテープは最後に確かにテープなどで止めはするが、テープだけでは不安だったり、急な巻き替えなどでテープがない時などにはゴム止めは大変重宝すると思う。 プロは……、正直あまり意識してないと思う。オーバーグリップテープを巻く選手が多い関係から、巻き換えやすいように取り外すことは考えられるが、特別な意識はそこには働いていないと思う……。
依頼内容512:僕は現在ライジングをマスターしようと思い、ボールを打つタイミングを早くしているんですがフレームショットや威力の無いようなボールが多くなってしまいます。どうしたら確実なライジングをマスターできるでしょうか。僕もアガシのようにライジングを極めたいです。
報告512:アガシのジュニア時代の逸話としてよく知られているのが、周囲があきれ返るほど繰り返し反応速度を高める練習をしていた、という話だ。なんでも最高速に設定したボールマシンをクレーンでサービスラインの上に吊り上げて、ベースラインの中にポジショニングしたアガシがそれを返すトレーニングをひたすらしていた、のだとか。また、失敗すると父のマイクに死ぬほど怒られた、とかいう話も聞いたことがある……。様々な資料を総合すると、アガシの父親のマイクは元々ボクサーだったため、反応速度を最重視したらしく、「相手が構える前に殴れば勝てる」という思想の持ち主だったようだ。テニスにもそれを採用して応用し、息子のアンドレをスパルタ式に鍛えたらしい。そのせいか、今のアガシ親子の関係は冷え切っているらしく、息子は父親の下をほとんど訪ねていかないのだとか……。 彼のライジングはそういうトレーニングの末に完成されている。依頼者がもし、アガシと同様の能力を身に付けたいのだとしたら、彼に匹敵する努力をしなければならない。その覚悟はあるだろうか?
依頼内容513:この前はご回答頂き有難うございました。そこで質問なのですが、ボールの「伸び」とは何なのでしょうか? ある友人は、トップスピンが掛かっていて、なおかつ球も速く、地面での減速が少ないボールだといっていましたし、又、ある人は主にフラットやスライスで、打ったボールが少ししか沈まずにほとんど地面と平行に進むことだといっています。僕は後者だと思っているのですがどうですか? また、「伸びるボールを打ち出す」ラケットというのはどの様なものなのでしょうか?
報告513:テニスにおけるボールの伸び、というのは少し難しい話だ。調査団としては依頼者の提示されるどちらのケースも同じく伸びのあるボールと言えると思うが、返す側の得意不得意や、感じ方にも関わってくるので一概に「テニスにおける伸びのあるボール」を定義するのは困難だと思う。 一般プレーヤーのトップスピンの場合、やや山なりの軌道を描いてドロンと飛んで来たボールが、高いところから落ちてきた分だけ弾むというケースが少なくないだろうが、プロレベルの強打のトップスピンというのは、まずコートを飛び出るのではないか、という勢いで上に飛び、その後、今度は地面に突き刺さるのではないか、という勢いで下に急降下しつつ加速していく(ように見える)。そしてバウンドした後は地面から発射されたのではないか、という勢いで跳ね上がる。スライスの場合はまるでネットを避けてきたのではないかというムードで低く飛んできて、バウンド後も減速されずにそのままのスピードで地面をスーッと滑ってくる(ように見える)。フラットなら最初の打点にもよるが、高い打点からならまるで1stサービスのような勢いで飛んで来る。 総合すると、とにかくバウンド後に相手に余裕を与えないボール、というのがテニスの場合の「伸びのあるボール」ではなかろうか。 そういうボールを打ち出すラケット? うーん、テニスのラケットは使用する人によって全てが決まる道具であって、誰でも結果がそうなるとは限らないのだが……。例えば、テレビショッピングで「この新しい包丁の切れ味は……」という具合のデモンストレーションをやっている場面を思い出して欲しい。確かに見ている方は「おぉ、この包丁を使えば、あんな難しそうな千切りや、飾り切りも自由自在なのか」と勘違いしてしまいがちだが、いざ、その包丁が家に届いたとしても、使う人が千切りや飾り切りをするわけであって、包丁が全部やってくれるわけではない。冷静に考えて欲しい。 確かに使用者によってラケットの向き不向きは存在し、あるラケットでなら凄いボールが打てても、違うラケットだと打ちにくいというのはある。しかし、これは使用者のプレースタイルやパワー、スイングスピードなどによって人それぞれであり、「誰が使ってもボールが伸びるラケット」というのは存在しないと考えて欲しい。
依頼内容514:「ペースのある球」って何ですか? 感覚的には何となく分かるのですが。 ペースは「早い」「遅い」ものなのではないですか?
報告514:なんとも困難な依頼が来てしまった。確かによく聞く台詞でもあり、何か一定の定義でもあればいいのだが、かなり感覚的な言葉になってしまっている。 色々と聞いて回ったのだが、数通りの説が出ている。 まず、「ただ打たれたボールではなく、そこに何かの意図が感じられるスピードボール」という定義だ。これはウイナーを狙ったボールというわけでは必ずしもなく、ラリーの中で何かの目的をもってコントロールされたスピードボールという定義になる。 次に出てきたのが、「スピードをつけることが難しい打球体勢でありながら、しっかりとスピードをつけられたボール」という定義で、ここにも打った選手の意図が感じられる必要がある、という定義。 もう一つは「二人の選手が交しているラリーの中で、どちらのボールスピードもタイミングも一定である状態のこと」という定義で、これはペースという言葉の中にあるリズムという意味を重視した定義だろう。 上記の中のどれか、ということではなく、これらの意味が複合されたのがペースのあるボール、あるいはないボールという意味として捉えられると間違いではない、という気がします……。
依頼内容515:ラケットを買い換えようと思っているのですが、グリップのサイズで迷っています。友達に今自分が使っているものより太いグリップのラケットを使わせてもらったところ、力が入らず使いにくいと思ったのですが、色んなホームページを見ると自分がちょうど良いと思う太さより太目の方が良いとか、日本で売っているラケットのグリップは細目だと書いてあるところが多かったです。好みの問題もあると思いますが、一般に自分にあったグリップというのはどのように選べばいいのでしょうか。
報告515:グリップの太さは最終的には好みで決定されていいと思う。基本的に一般論は立てにくい。「日本で売っているラケットのグリップは細め」というお話に関しては、どこの外国と比較してのお話かは不明だが、一般的に言って、テニスが盛んである諸外国の人々の手は日本人の手よりもかなり大きいことが推定される。グリップの太さは手の大きさで感覚が変化するものなので、日本で売っているのが細いというのは、ある意味で自然なことだ。 よく、「プロたちのラケットのグリップは2や3よりずっと太い。だから太い方がいいのだ」という短絡的なご意見も見かけるが、これはご自身の手の大きさを考えた上で再考された方がよろしかろうと考える。ロディックは188cmの身長があり、手も大きい。170cmの日本男児が全く同じラケットを手にすれば、「グリップ太い」と感じてむしろ当然だ。それに、以前サンプラスのラケットが編集部にやってきた時に見たのだが、彼のラケットもせいぜい3よりちょっと太い程度で、特別太くはなかった。調査団ではこういうご意見はあまりにも大雑把にすぎているのではなかろうか、と考えている。 さて、一般論として、細いと感じるグリップでのプレーは手首が使いやすく、太いと感じるグリップでは手首が回りにくいという特徴がある。これは手をグーにして手首を回した後、パーにして回せばすぐに理解できる。 プレーの上で手首の自在性を重視したいのであれば細めを、手首よりもスイングでボールをコントロールしたいのなら太めを選ぶ、という選択方法はあるだろう。 メリットとしては太い方が手のひらの感覚と面の感覚が一致しやすく、手首を使いにくいことから逆にスイング全体でのプレーがしやすくなるという点があり、デメリットとしては「何となく使いにくい」という違和感が出やすいということ。細い方がいいメリットとしてはリストの操作による細かい調整がしやすいことが挙げられるが、デメリットとして今度は手首の使いすぎによる故障やコントロールの不安定化、さらに言えばミスヒットした際にトルクが手に大きくかかってくるので面の安定性が失われやすいということだろう。 微調整することも可能なので、失敗のない方法は自分が「お、これいいかも」と思ったグリップに対して、少し細いと感じればオーバーグリップテープで太くし、逆にちょっと太いな、と感じた場合にはグリップテープ自体を薄めのものに巻き換えてしまうという手もある。 また、よく言われる「握った時の親指と他の指先との間が、指一本分開いていること」というのも一つの目安にはなる。しかし、最終的にはご自身の好み、プレースタイルで決定されてよろしかろうと思う。
依頼内容516:ウィンブルドンを観てて思ったんですが、毎年綺麗に刈り揃えられた芝もラウンドが進むにつれ選手たちの激しいプレーによりどんどんはげていきますよね。あの芝のはげ具合って主流のプレースタイルの違う最近と昔では違うのでしょうか?(たとえば最近のほうがベースライン付近の芝のはげ方が激しいとか)
報告516:おっしゃる通りのことを多くの元選手や解説者の皆さんがコメントしている。有名なところではナブラチロワが「最近はみんなネットに出ないからベースラインのところばかりが磨り減ってしまっている」というものだが、同様なコメントは数多く出てきている。特にダブルスがプレーされないセンターコートなどでは顕著にこの傾向が見られる。 昔はベースライン付近と、ネットダッシュした選手がスプリットステップをする付近、そしてネット際が広く薄めにはげ、くっきりとTの字になっていたが、最近はベースライン上のはげ方が激しく、Tの字のタテ棒部分は薄めにはげるムードになっている。 しかし、これは何も悪いことではないと思う。今はそういう時代なのだ、と捉えた方が楽しめるだろう。
依頼内容517:サークルで女の子を教えるときがあるのですが、サービスで肩がまわらないこが多いので、男のようにうまく教えれません。やる気は、かなりあって、「スピードを上げたい!!」や、「スライスやスピンも打ちたい!!」っと言われるのですが、どうも肩がまわってないので、体がつんのめった感じになって、威力がなかったり、ボールの下を叩いて、縦スライス回転のサーブになってしまったりで、本人達も不満そうで、僕も教えるのが、難しいです。ストロークやボレーは、驚くほど上達するので、やっぱり、うまくしてあげたいのですが、どうすればいいのでしょうか?一般的なことでもいいので、教えてください。また、肩が、まわらない人が、まわるようになる練習があればおしえてください。
報告517:ちょうど04年9月号の技術特集で触れた部分だが、「肩がまわる」という表現が適切とは言えないと最近では言われている。特別な故障でも抱えていない限り、肩は皆回るものだし、逆に誰も回ってはいないとも言える。詳しくは本誌も参照して見て欲しい。 テニスとは一見関係のない練習になるので、初心者の皆さんが我慢できるかはわからないが、これはもうボールを投げる練習からスタートしないと難しいだろう。それも最初は立ち投げでもいいが、ヒザ立ちでコートの正面を向き、ボールを投げてみて欲しい。投球動作が身体に入っていない人だと、この状態からは遠くにボールを投げられないはずだからだ。この状態でボールを遠くに投げようとすれば、身体をひねり、しっかりとヒジから先の動作も使っていかなければならなくなる。これを繰り返している内に、飲み込みの早い人なら「肩を回した」スイングのコツをつかめる可能性がある。 しかし、最近は女性に限らず、男性でも上半身の自然な動きを使ってボールが投げられない人が増えているが、スイングの動作は肩を回しているのではなく、腕がスパイラル状に使われている状態なのだと理解して欲しい。実際肩の動きだけでボールは投げられないし、打てない。これは試しに肩だけでボールを投げてみればすぐに理解されるはずだ。 下半身から作ってきた動きの中で、体幹、肩、ヒジ、手首と伝わって最後は指先へと伝わるのが投球動作の力の伝達経路なのだが、この過程では順に動きはブロックされ次へと伝わっていくという性質がある。肩というのはその中でも下部の関節にあたり、それほど動き自体は大きくなく、誰でも回る程度にしか使われていないのだ。 しかし、シビアな話をすると、十分に成長してしまった後で、この自然な投球動作を使ったフォームというのは、マスターするのが非常に難しいとされている。 もし可能であれば、ボールを投げる動作をお手本として示した後、各人にやってもらい、可能であればそれをビデオに撮って本人に見せるといいだろう。実は本人はしっかりと動いているつもり、というのが一番多いのだ。その上で、各人にあったアドバイスを送り、楽しくテニスを続けて欲しいと願う。
依頼内容518:いつも楽しく読ませて頂いております。最近のラケットについて質問ですが、Tiやインテリジェンス、リキッドメタル等色んな新素材が使用されていますが、HEAD社のカタログを読んでもイマイチ理解出来ません。(常温で液体の金属は水銀だけと習った覚えがあるし、ラケットを見ても金属ではなく基本的な材質はカーボンだと思うし、ラケットが液体の金属で出来てるとは見えません。ちなみに私はHEADの愛用者です。)特許や社外秘など問題があると思いますが、ぜひスマッシュで詳しくラケットの作り方や新素材の検証結果について報告して頂けないでしょうか?青少年の読者にも勉強になると思いますが・・・
報告518:ことが素材の話になると、我々にもヘッド社さんが発表されている以上のことはわからないし、報告もできない。しかし、確かにおっしゃる通り、なんとなくわかったような、わからないような素材だ。液体、というよりもむしろ「金属にしては分子レベルでの粒子の結合が弱いため流動性が存在するので金属というよりは流体金属であって、それらは通常の金属よりも弾性に富むため、反発力が高い」、という意味であるようだ。 実は我々も同シリーズが発表された当初は、ラケットに容器のようなものが付いていて、水銀のようなものがちゃぷちゃぷと入っているのか、と色めきたったことがあったのを覚えている。 ところで、新素材の調査のお話は大変、興味深く、我々も着手したいご依頼です。どこまでできるか現時点では正直わかりませんが、早速着手のための準備をスタートしたいと思います。
依頼内容519:女子の世界ランク五十位以内ぐらいの選手で強力(同じレベルの選手にノータッチサービスエースが一試合に五回以上とれるぐらい)なクイックサービスをつかえる選手はいますか?
報告519:まず条件設定が高すぎるように思われる。女子の試合はGSでも3セットマッチ。実はサービスエースの増える芝のウインブルドンでさえ、同レベルと思われる選手同士の試合で、それが女子の試合なら1試合に5本以上というノータッチエースは滅多に出ないのだ。 例えば、決勝のセレナ・ウィリアムズ対マリア・シャラポワは共にサービスを得意とする選手同士だが、セレナが3本、シャラポワは2本だ。シャラポワがハンチュコワと戦った時でやっと5本のエースに止まっている。女子でサービスが強いと言えばビーナスだが、彼女が今年のウインブルドンで5本以上のエースを取ったのは格下のミカエリアンを相手に3ゲームしか許さずに勝った1回戦だけで、それでも7本だ。そもそも女子の試合で5本以上のノータッチエース、というのは少ないのだ。 その上、クイックサービスとなるとさらに狭い。何しろ、男子で言えばイバニセビッチとか、クライチェクとかのようなはっきりとしたクイックサーバーは女子にはほとんどいないのだ。 女子ではっきりとクイックサービスと言えるのは、有名どころではスペインのコンチタ・マルチネスがそうだが、彼女のサービスは強烈な回転のかかったスライス系サービスで、エースを量産できる、というサービスではない。バウンドが低いし、角度があるので相手はリターンしにくそうにはしているが、彼女がサービスエースを量産している試合は、同格の選手との試合ではないだろう。 強いて言えば、ダベンポートが近い存在かもしれない。彼女はさほど高くトスを上げず、一連のリズムの中でサービスを打ち、そして、エースも取れる。もちろん、189cmという身長からくる打点の高さが大きなアドバンテージになっているのは間違いないが、彼女はサービスでも複数のタイミングを使い分け、状況によって変えてもいる(風が強い日、とか、相手のリズムを崩すため、とか理由は色々)。 他に思い当たるのは、全て「強いて言えば」レベルだが、フランスのロワ、ロシアのデメンティエワ、スイスのシュニーダーあたりは比較的クイック系のサーバーではあるが……。
依頼内容520:高校1年になってからテニスを始めたのですが、初心者はどのようなラケットを使ったほうが良いのですか? プロが使っているような高いラケットのほうがいいのでしょうか?アドバイスください!(ちなみに今は兄のラケットを借りてやってます)
報告520:依頼者がどんな体格で、どの程度の筋力があり、以前にやっていたスポーツがあったかなかったか、また、どんなプレーをしたいか、などで多くの選択肢が発生する。正直に言って、今のラケットであれば、どんなラケットでも構わないとは思うのだが、一度、専門店に足を運び、そこで店員さんと直接会って相談したり、身近にいるお兄様にアドバイスを求めた方が的確な答えが出そうな気がする。 ラケットは値段が高ければいいラケットか、というと使用者の段階では必ずしもそうではない道具。いわゆる量販店などに吊るされているラケットたちは確かに安いし、素材も一昔前のものだったりするが、意外にこの手のラケットたちの方が、「お、いいじゃん」となるベテランの方もいたりする、というものだ。 確かに高いラケットたちはカタログなどに細かなデータが出ていたり、広告もさかんに行なわれるので情報を入手しやすく、外れは少ない。しかし、いいラケットかどうかは、使用者が決めるもので、値段が決めるものではない。 基本的な選び方として、自分が気持ちよくスイングした時に、ちゃんと自分の意図やイメージに合ったボールが飛んでいるかを確認して欲しい(打ったときの感触についても、自分の好みかどうかも確認できるといいだろう)。自分のスイングを極端に調節しないと飛びがコントロールできないラケットは、あまり合っているラケットではない、と考えてもいいだろうと思われる。 とはいえ、完璧に合ったラケットに一発で出会えるのはむしろ稀なケース。そこそこ合うかなー、と思うラケットに出会い、でもちょっとなー、となったら糸の張り方や重りを付けたりすれば調整できる。これらは専門店のストリンガーさんに症状を伝えながら、相談して決めて欲しい。
依頼内容521:最近よく質問させていただいています。しつこいヤツと思われていないか心配です。 ところで質問なのですが、サンプラスは2000年ごろからスランプに入り00年のウィ ンブルドンから02年のUSオープンまで優勝がありませんでした。しかしそのスランプ の中でもUSオープンでは3年連続決勝進出と何故か強かったです。USオープンには彼 の強さが戻る秘密のようなものがあったのでしょうか。よろしくお願いします。
報告521:彼はアメリカ人。アメリカ人選手の全米にかける思いというのは、我々の想像を超えるものがある。しかも、全米の会場は、アメリカ人たちが「世界の中心」と信じて疑わないニューヨークなのだ。「世界の中心で、世界一になる」というのは、アメリカ人で、かつ勝負の世界に生き、また、GSに出られるようなトップコンテンダーであれば、当然、別のモチベーションが生まれるものではなかろうか。まして、アメリカ人選手であれば、観客の熱い声援をバックにもできる。それが秘密かどうかはわからないが、そういう色々な要素が、彼にとっても力になっていたのは想像に難くない。 彼が引退を発表したのは、6度の優勝を誇り、「家」とまで言われていたウインブルドンではなく全米だった、ということも合わせて思い出してもらえれば、そこに特別な何かを感じていた、と考えられるのではなかろうか。 もう少し、具体的な何かの原因が欲しいというのなら、サーフェスとボールに言及できるかもしれない。全米が採用しているサーフェスはデコターフという種類のやや速めのハードコートで、ボールもアメリカで最もありふれたボールが採用されるケースが多いという。どちらも「アメリカではごくありふれた特性」と言える。つまり、彼を含めたアメリカ育ちの選手たちが小さな頃から慣れ親しんだ環境と言い換えられるのだ。 また、アメリカのトップ選手であれば、試合コートや日程などのスケジュールのリクエストも通りやすい、と言われるのが全米。ヨーロッパの強豪選手たちだと、夜のセンターコートの次の試合が、仮設スタンドしかないコートの朝の試合、というのも珍しくないが、アメリカのスター選手たちは、たいていデイセッションの最後か、ナイトセッションに期間中ずーっと組まれて、しかもセンターコートや旧センターコートなどのショウコートに固定されることが多い。こうした「優遇」が彼らにいい影響に出ないはずはない。 とまぁ、こんなことなどが重なり合って、調子を落としていた選手も全米で復活できる、という可能性は低くはなかろう。 ひじょーに簡単に言うとすれば、勝手知ったる我が家での方が、たいていの人は自然体で、しかも落ち着いていられるはずだし、友達や家族などが見ていてくれる地元の大会では普段以上の実力を発揮しやすい、と想像できれば、そう不思議なことではないのではなかろうか?
依頼内容522:自分は今サンプラスのランニングのフォアハンドを習得するために、いつもより余計にフォア側を空けて、相手にそこに打たせて走りこんでクロスやダウンザラインに切り替えしています。しかし彼のようにフィニッシュで肘を上げるようにしてしまうとどうしてもボールが浮くか、スマッシュを打たせるためのような中途半端なロブになってしまいます。しかもタイミングが中々合いません。どうすれば彼のようなかっこいい芸術的なフォアが打てるでしょうか。よろしくお願いします。
報告522:まず、依頼者がどんな状態かに関しては、想像するしかないので的外れな解答になる可能性もあるが、まずサンプラスが相手にしていたボールと、依頼者が相手にしているボールの違いが原因として考えられる。 フィニッシュというのはスイングの結果。つまり、あるボールに対して、対処した結果がフィニッシュに表れているわけだ。サンプラスが相手にしているボールは恐らく、依頼者が相手にしているボールよりもかなり速く、そして弾んでいるはず。つまり、打ち方をサンプラスと全く同じにしたとしても、相手にするボールが違えば、結果も変わるのだ。速いボールなら、軽くあわせるだけでもそれなりに速いボールが返せるし、そこに操作が加われば、スピンもスライスもきれいに合わせられる。しかし、相手のボールが遅ければ、スイングする側がそれなりにボールに力を伝えてあげないと、結果は同じにならない。テニスとはそういう競技なのだ。 相手にするボールが違うのに、フィニッシュだけを同じにしても、当然スイングが2段階のぎこちないものになるだけで意味はないので注意が必要だ。巷で「フィニッシュだけサンプラス」というサービスを打つ草トープレーヤーをよく見かける。ご本人がそれで満足されているのであれば、我々にとやかく言う権利はないが、もし、ご本人が「どうしてサンプラスみたいに……」とか悩んでいたり、あるいは「俺はサンプラスみたいでカッコよく打ててる」と勘違いされているなら注意が必要だろう。 どうすれば芸術的なフォアが、という疑問に対しての解答は、残念ながら世界中の誰もが持たないだろう。何しろそれが体系的に示されていれば、誰もができるはずだが、今のところ誰にもできていないのだ。仮にピート本人に直撃したとしたら、恐らく、「毎日一生懸命練習することだよ(微笑)」と言われてしまいそうだし……。 お気持ちはわかるが、近道はない。サンプラスに近づくために、日々の練習を繰り返し頑張って欲しいとしか我々には言えない。くれぐれもケガには気をつけて欲しい……。
依頼内容523:いつも楽しく読んで参考にさせていただいています。 僕はサンプラスのファンで普段のプレーでサンプラスのマネをしてテニスに挑んでいます。サーブの構えで左足を上げたり、サーブのフォームをマネしたりして自分なりにサンプラスになりきってテニスを楽しんでいます。サービスゲームでは、彼のようにほとんどサービス&ボレーをするんですが、リターンゲームでは時々チップ&チャージするくらいであと何をマネしたらいいか僕では分かりません。そこでサンプラスのリターンゲームの戦術を教えていただきたいのです。よろしくお願いします。あと、02年の全豪のサンプラス対サフィン戦で第2セット第7ゲーム、サンプラスのサービスゲームで、15-0でサンプラスのファーストサービスがフォルトしたあと、サンプラスが客席の多分男と何か言いあってたのですが、一体何を口論してたか気になります。もしご存知でしたらぜひ教えてください。よろしくお願いします。
報告523:サンプラスのリターンの戦術に関してだが、彼のリターンゲームで最も特徴的だったのは、そのメリハリだ。彼は「流すゲーム」と「取りに行くゲーム」の大きく分けて2段階のギアがあった。ゲームの最初から仕掛けて「お前のへなちょこサービスなんて全然怖くないぞ」とばかりにラブゲームでブレークしてしまう構えを見せることもあれば、「お前のサービスは凄いよ」とばかりに、淡白なゲームもやっていた。そしてそれを自在に使い分け、最初は流すつもりだったが、相手がミスをしてリードしてきたので、「じゃ、取るか」とばかりに急にレベルを上げ、相手からゲームも自信も奪い取るということをナチュラルにやっていた。それが強い頃の彼のテニスだった。 また、相手のサービスが強い時ほど、相手のサービスに対して果敢に攻めて最後は攻略してしまうのもサンプラスだったし、相手のリターンが強ければラリーでも負けずにベースラインで勝負したりもした。つまり、相手が得意技だと思っているところと勝負してそれを崩し(場合によってはハッタリも使って)、自分のペースに巻き込むのが抜群にうまかったのだ。例えば、アガシはパスが抜群にうまい選手だが、何度でも前に出て行くことで「今日の君のパスでは僕には通用しないよ」と思わせる、ことぐらいは当たり前にしていたのがサンプラスだったのだ。 00年のウインブルドンはラフターとの決勝だったが、序盤はラフターのキックサービスにさんざん苦しめられ、思うようにリターンできていなかったサンプラスは、途中から少しリターンのポジションを上げるとラフターのキックサービスを前後左右に自在にコントロールしてしまうようになった。ラフターはこれで攻め手を失い、そのままずるずるとサンプラスのペースにはまってベースラインに釘付けにされ、前に出て行ってはパスを抜かれ、そして敗れた。試合中に対策を見つけて、それを実行する能力の高さもサンプラスの真骨頂だったとも言える。 サンプラスはリターンが抜群にうまい選手の一人だったとも言える。フォアでもバックでも、相手にリターンで簡単にチャンスを与えるような場面は少ない選手だった。あのサービスがあったためにあまり語られていないが、イバニセビッチが彼に勝てなくなっていったのは、サンプラスのリターンを警戒するあまりに厳しいところを狙わせられたからだし、簡単にエースが取れるようなリターナーではなかった。 さらに言えば、サンプラスを相手にしたら自分のサービスをキープしないと、1回のブレークが命取りになるため、対戦相手は自分のサービスゲームで他の選手との試合以上のプレッシャーを強いられたという面もあるだろう。全盛期の彼は試合を有利に運ぶための武器をたくさん持っていて、それを状況や場面、相手によって使い分けていたのだ。 これは「サンプラスのリターンの戦術」などと括ってしまって語れるような簡単なものではない。したがって、明確な回答をするとすれば、非常に多くの例証を挙げつつ、その時点時点で、解説を加えねばなるまい。恐らく、テニスの一つの教科書ができあがるボリュームとなるだろう。調査団でも興味はあるが、これはむしろ、ぜひ依頼者に実現していただきたい分野だ。 しかし、正直に言って、非常に単純に言うと、全盛期の彼のリターンゲームは「つまらない」ことが多かった(このつまらない、というのはある意味サンプラスに対する最大級の賛辞と受けとめて欲しいのだが…)。というのは、サンプラスの場合、1セットに一度か二度、はっきりとギアを上げてブレークすることがあるのだが、1度ブレークに成功したら、後は自分のサービスをキープして、残りのリターンゲームは「適当に」プレーしているように見える試合が多かったからだ。 この「適当にやってて簡単にサービスキープ」してるように見える、というのが彼の凄みを物語っている部分でもあるが、当時はそれが何しろお決まりのパターンすぎたため、「退屈な王者」という言われ方をしていたのだ。 彼の場合、6-0とか6-1でセットを取るというのは、相手がリターンゲームで複数のミスを犯した場合で、取りにいって6-0というケースはあまりなかった。大抵は6-4か6-3の1ブレーク。さもなければタイブレークで勝つ。それがサンプラスという選手の勝ちパターンだったのだ。 全豪の件に関しては、申し訳ないが詳細は我々にもわからない。あしからずご容赦いただきたい。
依頼内容524:フォアに関して質問です。 僕はJ・C・フェレーロのフォアを見本にして練習しているんですが、フェレーロの フォアのグリップを教えていただけませんか?
報告524:基本的に彼のグリップはセミウエスタンから、ウエスタン付近と、セミウエスタンからイースタン付近を相手のボールの高さやスピード、自分が打つショットの強弱、スピン量の強弱などで使い分けているようだ。 よく誤解されているようだが、プロに限らず、多くの選手たちは自分が打たなければならないボールや、球種によって微調整を繰り返しながらボールを打っている。基本とするスタイルはあるにせよ、一種類のグリップで打っている選手はほとんどいないと考えて欲しい。だからフェレーロのあるショットの写真を見た時、それが「セミウエスタン」でグリップされていたとしても、フェレーロのフォアはセミウエスタンだけではない。違う場面ではウエスタンになっていることもあれば、逆にイースタンぐらいで打っている場面もあるだろう。テニスはゴルフと違い、動いているボールを打つ競技。むしろ決まったグリップはない、とスタート地点では考えておいてちょうどではなかろうかと思われる。
依頼内容525:はじめまして。このコーナーでとても詳しく専門的に報告をしてくださるの を見て、以前からの悩みに答えてください。私は、とあるクラブで週1から2日、2 から4時間位練習しています。楽しみで始めたのですが、最近クラブの試合のメンバ ーに選ばれて試合に参加する機会が増えました。悩みというのは練習環境と試合環境 の差です。練習コートはクッションの無いハードコートで、練習のボール(籠に山) は、時々ニューボールと取り替えるものの、通常はフェルトがかなり剥げた状態がほ とんどです。このコートとボール、そしてクラブの人の多くはハードヒット(仕事の ストレスか?)方が多く、スピーディーなテニスです。私もスピードが出るテニスが 楽しいので、楽しみでは良い環境なのですが、試合は砂入り人工芝コートがほとんど で、しかもニューボールですと、ボールが異常に重く感じられ、打ったボールの伸び も全然違います。ですからサービスアンドボレーやすばやいストロークの切り替えし などの、展開がすべて異常に重く感じられて、ベテランのフラット系ストロークのつ ないでゆく方々に負けてしまいます。いつも良い感じでスイング(プロっぽく ・!?)しているのに、このように負けると相手のほうがうまいといえばそれまでで すが、「なんかな〜」という感じで、今までそれなりに練習していたのに、がっかり してしまいます。ちょっと調査団さんの先手を打てば、「じゃあオムニでニューボー ルで練習に励めば」の一言で終わってしまいますが、クラブの環境もテニスをするに は整っているので(空きコート、メンバーなど)このままの練習環境で、どんな点に 注意して練習してゆけばよいのか、プレースタイル、フットワーク、戦略、イメージ など教えてください。今のスタイルは、サービスアンドボレー、やや攻撃的リター ン、ミスも多いがエースもそれなりに取れる、という感じです。長くなり、非常に身 勝手な質問ですが、専門的なコメントがいただければ幸いです。(まわりの人は一般 的な答えです。)私が大きく違うと思うのは、ボールの低さ、重さ(砂だから?)、 足がすべることなのですが・・・。
報告525:恐らく、同じことでお悩みの方は数多いと思われる。目的がペンネームの通りだとすると、これはテニス対する方針を、試合と練習で変える必要性もあるのではなかろうか、とも考えられる。 いわゆるベテランの方で、草トーナメントの強豪という方は、とにかく「ミスをしない」ことが勝利に直結することを、頭ではなく、身体でご存知の一群と言える。つまり、依頼者がご自身を分析して「やや攻撃的リターン、ミスも多いがエースもそれなりに取れる」とおっしゃっている要素は、ベテランの強豪の方からすれば、「確かに力強く打ってくるが、時々は勝手に力んでポイントをくれるありがたい対戦相手。打たせた方が勝てそうだ」と見られている可能性があるのだ。試合で勝ちたいと考える時はつい対戦相手のことが気になるものだが、実際にはまず自分が相手から見てどんなプレーヤーかを正確に把握していなければ、具体的な対策も立てられないと考えて欲しい。現在位置がわからなければ、地図があったとしても、それはただの紙切れなのだ。 よく、巷では「快楽のテニス」と「勝負のテニス」は別だ、と言われている。これらが融合している(ように見える)のはプロのテニスだけで、いわゆる大人の一般プレーヤー同士の試合では、「気持ちよくエースを取る」とか、「パワーで押し切る」ことにプライオリティを置き過ぎた結果、ミスが増えて試合で負ける、ということがよく言われている。全てに賛成はできないが、調査団ではこの言葉は多くの真実を含んでいると考えている。 ベテランの方々は、負ける悔しさを長年の経験で知っていて、勝って終わることの楽しさを熟知しているから、長く続けていられて「ベテラン」なわけで、負けてばかりならつまらなくて途中でやめて「ベテラン」にはなっていないはず。ある意味、各人の条件の中で「自分が勝つため」という目的と手段を明確にしてきたのが彼らなのだ。これは正確かつ、冷静な自己分析の下に自分のプレーを「勝つため」に最適化した結果とも言える。 彼らに勝つのは容易ではない。ベテランであるぶん、対戦相手のタイプによる対処法の引き出しも多くもっているはずだし、今は用具がよくなった分、多少のパワー差なら、ラケットやストリングでカバーできてしまう。ましてオムニコートというのは、選手が一生懸命打ったボールのパワーを吸収してしまう特性のあるサーフェス。サービスもストロークもそれほど跳ねないし、スピードも殺されやすい。元々パワーだけで押し切れないのがオムニなのだ。 さらに言えば、テニスというのは元々、パワーで相手を蹂躙するのが非常に難しい競技である、という点も指摘できる。例えばサフィンは全てのプレーにおいてテニス界最強クラスのパワーの持ち主だが、「練習が嫌いで、しょっちゅうケガをしていて、いつも表情の冴えない」(by某局のメインキャスター氏) フランスのサントロを大の苦手にしている。テニスがパワーで決められるなら、プロでも決まりそうなものだが、そうではない、という部分にも注目して欲しい。 また、同時に思い出して欲しいのは「自分のテニスをすること」とプロたちが口癖のように言う一言だ。これは裏返せば、彼らとていつも常に「自分のテニス」(一般プレーヤーの言葉に置き換えると「快楽のテニス」的要素が強いかもしれない)をさせてはもらえていないということだ。彼らとてそんな状態なのだから、一般プレーヤーにおいておや、とも考えてみて欲しいのだ。 認めたくはないかもしれないが、これは認めた方がいい。もし、依頼者が高い確率でベテランに負けているのであれば、パワーやスピードで勝てない相手は自分よりも確実に「テニスがうまい」可能性が高いのだ。 見かけで判断してはいけない。白い長パンツにチルデンセーター、練習も自分より全然してなさそうな初老の紳士で、サービスなんかボールマークがはっきり見える程度のスピードだったとしても、そういう相手は自分から叩いてミスはしてこないだろうし、逆に自分が完璧に打ち込んだと思ったパスに対してしっかりと面を合わせて打ちにくいところにボレーしてきたり、足元に落としてくるのではなかろうか? 「ラケットをウッドから始めた人はうまい。そして、今もずっと続けてるなら、もっとうまい」と頭の中を整理しなおして欲しい。繰り返すが、見かけで絶対に判断してはならない。それをしている限り、進歩をご自分で妨げていると心得て欲しい。 もし、本当に彼らに勝ちたいのであれば、ここはまず、依頼者ご自身が試合では頭を切り替え、ご自身のテニスを客観的に、そして正確に把握して自分が勝つためにはどうすればいいかを再検討されてはいかがだろうか? そこに気持ちよく勝つ、という要素を付け足すのなら、かなりの練習量で、スピードとパワーに圧倒的な差を築くか、テクニックだけでも同等レベルに磨かなければなるまい。 仮にサービスで常に160キロ以上の1stサービスを確率50%以上でコーナーに打て、相手のリターンを強打して返しても9割以上コート内に入るという状態を作れているなら別だが、1セットマッチや、8ゲーム先取の草トーでは1度のミスでも命取りになることも思い出して欲しい。プロは3セットマッチや、5セットマッチだから、1、2度ミスっても挽回のチャンスが多いが、草トーにそうした余裕はないのだ。そして、ライバルであるベテランの皆さんはそういうことを熟知している皆さんなのだ。 オムニコートに対する対応だが、同じことを専門店のストリンガーさんに相談してみて欲しい。試合用のラケットの糸やテンションを変えることでも随分と改善される可能性はあるからだ。また、足元が滑るとお感じなら、ぜひオムニ専用シューズの導入をお勧めする。昨今のオムニ専用シューズは非常によくできているものが多く、ほとんど滑らず、まるでハードコートで動いているようなステップができるものもある。
依頼内容526:いつも楽しく拝見させていただいています。 しかも何度か投稿させていただきまして、納得のいく解答をしていただき感謝してい ます。 質問ですが、サンプラスはジュニア時代から同じラケットを使い続けていました が、もしサンプラスが最新のラケットに変えていたとしたら、例えばサーブのスピー ドが上がったりしたのでしょうか。昔のあまり反発力が無さそうなラケットであれだ けのスピードが出るのですから、最近のラケットで打ったらもっとスピードが出そう な気がしないでもないです。 あとプロの人たちがラケットを変えることでどのくらいプレーの精度が変わるので しょうか。 よろしくお願いします。
報告526:うーん、サンプラスのウイルソンのプロスタッフは、ジュニア時代からずっとというわけではないのだが……。まぁ、それはいいか。 可能性は高い、というか、確実にアップはしただろう。しかし、それでコントロールできたかどうかはわからない。高反発系のラケットはラケットの硬度が高く、それでインパクト時のパワーロスを抑えることでスイングのパワーをより多くボールに与える、という特性がある。昨今はグロメットなどの工夫やバランスポイントの工夫などで打感は色々と改善されてやわらかいムードのものも増えているが、基本的には頑丈なラケットであるという点は変わらない。 しかし、サービスにおいてだけを考えれば、最も重要な点は、実は高反発系のラケットは重量自体を軽くすることで、低い筋力でも高速スイングを可能にしているという点だ。 だが、腕を速く振るにも限界スピードがある。何も持たない状態で、ブンと腕を振った時が最速で、かつ限界だとしよう。サンプラスがもし、あのプロスタッフで自分の腕の限界に近い速度でスイングできていたとすると、高反発系のラケットでも同じ程度のスイングスピードとなるのは理解できるだろう。となると、中厚のラケットを使うメリットは、構造上の硬度の違いによる反発性の違いだけになる。つまり、静止したボールを加速するサービスのスピードに関してだけ言えば、顕著なほどの差は出ない可能性があるのだ。 テニスはサービスを打っておしまいではないのは依頼者もよくご存知のことと思うが、サービスでよくてもストロークやボレーで使いにくければ意味がない。プレーをトータルで考えて「合うなぁ」となったのが、サンプラスにとってはプロスタッフだったのだろうし、彼はあのラケットですごいサービスを打っていたことを考えると、サービスにおいて軽量高反発型のラケットに変えるメリットはなかったのではなかろうか。 晩年、彼がラケットの変更を示唆するコメントを出していたことがあったのは事実だが、これは一つにはスポンサーに対するリップサービスの意味もあっただろうし、サービスではなく、リターンやストロークでのパワーの問題を原因として挙げていたのも思い出して欲しい。 テニスおける精度を、どの程度といった数字や言葉で表現するのは極めて困難だが、プロと呼ばれる人々はどんなラケットを使っても、ちゃんとそれなりにスイングを調節して、そこそこ以上にプレーしてしまえる人種だ(F1ドライバーが普通の自動車でも速く走らせられるのと似ている)。問題は、「自分のスイング」をどれだけ変えずに使えるか否かであるはずだ。この手の問題はそう考えてみて欲しい。そんなに単純な問題ではないのだ。 厚くて高反発なラケットが最も強みを発揮するのはサービスではなくリターンやストロークでの話。サンプラスが高反発系のラケットを使っていたら、もっとストロークが強烈になった可能性はあるが、サービスはそう大差ないのではなかろうか、というのが結論だ。 ちなみに、多くのケースで男子のプロ選手たちは滅多なことではラケットを変えない、と固く信じられているようだが、これは当たっている部分とそうでもない部分の両方があって、プロというのは一般プレーヤーと違い、そのラケットが確実に自分のプレーを強化してくれると感じれば、用具の変更に躊躇しない人種であるという視点も忘れないで欲しいのだ。確かに同じラケットを使い続けている選手は少なくないが、ガットやテンションはかなりの頻度で変えているものだし、時にはラケットチューニングも変えていて常に一定ではない選手が多いのだ。
依頼内容527:プロの選手が上手くなるというのはどういうことなんでしょうか。すでに完成された技術を持った人たちなのに、そこからさらに新しい技術を身に付けるということなのでしょうか。よろしくお願いします。
報告527:完成された技術を持っているかどうかは、選手によっても違いはあるだろう。未完成だが出来上がっている部分のレベルが高いためにトップクラスに来ている選手もいれば、全てがほぼ完成されている選手もいるだろう。 確かに、テレビで見られるレベルの選手であれば、どんな選手でも一般プレーヤーから見たらすでに完成された技術の持ち主に見える。しかし、プロたちが争っているのは技術の優劣ではなく、試合の勝敗。「相手に通用しなければ、それはできないショット」と分類するのが彼ら、彼女らなのだということを忘れてはならない(ちなみに「アガシには通用しない」、「ロディックには使えない」などの個別ものもあるだろう)。 本誌で長く連載を続けていただいている神尾米さんは、デモンストレーションでは全てのショットを非常に美しく、かつ鋭く打てる。はたで見ている大抵の皆さんは、「いやぁ、すごいなぁ」とため息をつくものだ。しかし、彼女は現役時代、自分からボレーに出て行くことは滅多になかったし、スマッシュでのミスも多かった。そう、ネットプレーをとても苦手にしていたのだ。しかし、できないわけではない。もちろん、できるのだが、試合では通用しなかったので使わなかったのだ。 プロの上達というのは、こうした「使えなかったショット」が試合で使える程度に鍛えられていくことを指すケースもある。例えば、ヒューイットのバックは以前は弱点として知られ、本人も出来る限りフォアに回り込んで打っていたが、今ではヒューイットのバックをことさら弱点と言う人はいなくなってきている。これは彼のバックに多彩さが出てきて、以前のようなクロス一辺倒ではなく、今では彼のダウンザラインは必殺技でさえあるようになってきたからだ。 しかし、以前のヒューイットでもダウンザラインに打てたし、もちろん、試合でも打っていることもあった。だが、試合で積極的に使えるほどの確率や威力が確保できず、むしろ得意なフォアでの展開を作ろうと、クロスへ角度をつけるバックハンドに終始していたのだろう。その方が勝てたからだ。 しかし、それだけではいずれ壁に当たる。彼は自分のフォアをより生かすため、そして自分の機動力をさらに効果的にするために広角にボールを配球する必要に迫られていた選手。バックサイドに明らかな欠点があっては勝負にならない。ということで磨きをかけたはずだ。その結果として、バックサイドのレベルが上がり、彼はベースライナーとして完成の域に達したわけだ。 とまあ、こんな具合に多くの選手に「上達物語」を紡ぐことは可能だ。プロを表現する時には、同じ用語でも一般プレーヤーの語義と同じ意味で延長して捉えない方がいいケースが少なくない。ステージが少しばかり違うのだ。一般プレーヤーは「自分の」という側面の強い主体的なプレーヤーだが、プロたちは常に他のプレーヤーと比較され、勝負付けをされている相対的な世界の人々なのだ。できるだけでは意味がない、それで勝てなければ使えない、というのがプロたちの技術なのだ。
依頼内容528:フレッドペリーについて詳しく教えてください。たしかウィンブルドンで強かったんですよね?
報告528:フレッド・ペリーは1905年生まれのイギリス人選手で、おっしゃる通りウインブルドンで3度(1934-36)優勝している選手で、「ウインブルドンで強かった」選手だが、全豪1回(34)、全仏も1回(35)、全米も3回優勝(33,34,36)している1930年代の第一人者の一人だ。 今ではテニス選手の名前としてよりむしろ、ファッションブランドとしての方がおなじみかもしれない。 1975年にテニスの殿堂に入り、95年2月にメルボルンで没した。
依頼内容529:サーブについて質問なんですがスライス、スピン、ツイスト、スライススピン?など の定義がいまいち掴みきれません。スライス=横回転、スピン=縦回転、スライスス ピン??=ななめ回転?スピン=高く跳ねるサーブではないんですか? ツイストにしても昔は=スピンとして使われていたようですし・・・。 どういった回転がどのサーブに当てはまるのですか? 野球でいう、カーブ・シュート・フォークのうちのシュート回転がかかるスピンサー ブを試合で見たことがありますがあれはどういった方法で回転をかけているのです か? 質問にまとまりがなくてすみません
報告529:現在、広く言われている定義としては、スピンはタテの順回転系、スライスは横回転系で、右利きの選手であれば、スピンはタテのカーブ(昔はドロップなどと呼ばれた変化球)、スライスは野球で言うと右投手のカーブやスライダーになる。スライススピンというのは、打ち方はスライスの打ち方に近いが、打点とボールへのラケットの入れ方を工夫することで、順回転の要素を入れたスライスサービスのことで、ナナメ回転という表現で間違っていない(野球で言えばタテのスライダーだろうか……)。また、ツイストというのは、スピンサービスの別名の一つと捉えて欲しい。まだ「フィルムが白黒だった時代」にはアメリカン・ツイストと呼ばれるサービスが存在したが、これも飛んでいるボール自体は今日スピンサービスと呼ばれているボールの系統に入れていい種類のもので、表現の違いによるものと考えていただいて間違いではない。 概ね、依頼者の示している定義で間違いはないと思われる。 シュート回転のボールは「リバース」と呼ばれていて、あまり一般的には言われないが、外側から内側に向かってスイング軌道を描いてきたサービスの場合、ボールにはシュート回転がかかる。ストロークのトップスピンを頭の上でやっている状態とでも表現すれば適当だろうか。厚いグリップでフォアを打つ人が、顔の打点で逆クロスにトップスピンのストロークを打とうとするとシュート系の回転がかかるが、あれをサービスでやっていると考えればよろしかろう。意識的にやって武器にしている人もいるが、本人はフラットを打っているつもりでリバースを打っているケースもある。また、いわゆる羽子板サービスのサーバーは、これを相手のバックサイドに入れる時に意識的に使っているケースもあるようだ。
依頼内容530:スマッシュは毎月発売日にすぐ購入しています。最初から最後のページまで 隅々まで読んでいます。これまで他社の雑誌を色々読み比べましたが、自分的にはスマッシュが一番です。 ところで質問ですが、ラフターは最高のサーブ&ボレーヤーだと見たり聞いたりし たことがあります。しかし自分的にはサンプラスの方がサーブもボレーも上だと思っ ています。足元に沈められたリターンをローボレーやハ−フボレーでコーナーいっぱ いにコントロールしてウイナーを取れるのは過去にも未来にもサンプラスしかいない と思っています。それなのにラフターを最高と呼ぶならラフターにはサンプラスにも 勝る能力があったのでしょうか。よろしくお願いします。
報告530:いつもご愛読本当にありがとうございます。 さて、ラフターの件について、なのだが、何をもって「最高」とするか、で評価の分かれるところだろう。サンプラスのファンである依頼者にとって、ラフターが最高ではサンプラスの立つ瀬がない、これはおかしい、となるのは十分に理解できる。 また、誰が「最高の」と言っているのか、それを誰かが決めていいものなのかも問題としては残る。調査団ではそれを決めるのはファンの声であって、誰か特定の個人や団体、メディアなどの役割ではないような気もしているが、どうだろうか? 二人が現役時代、ラフターは純正サーブ&ボレーヤーという評価をされていたが、サンプラスはサーブ&ボレーヤーというよりも、むしろオールラウンダーの代表格として扱われていたことを思い出して欲しい。 サンプラスはヘンマンのように何が何でもサーブ&ボレー、というタイプではない(最近はヘンマンも違ってきているが・・・・・・)。ベースライン上からでも試合を組み立てられた。そのうえサーブ&ボレーも巧みで、非の打ち所のない選手という扱いだったのだ。確かに晩年はサーブ&ボレーが増えていたが、これは彼の能力をもってすれば、その方が楽にポイントを取れたから、という要素と、ストローカーがあまりにもその能力を上げてきていたために、さしものサンプラスでもベースライン上では不利な戦いを強いられたからと考えた方がよいだろう。つまり、ラフターにとってのサーブ&ボレーは彼のスタイルだったが、サンプラスは一つの手段としてのサーブ&ボレーだったのだ。 ラフターの場合、彼がオーストラリアの伝統を受け継ぐ、オージー正統派のサーブ&ボレーのスタイルを継承していた存在である、という点が大きく評価されていた部分だった。オージー流のサーブ&ボレーというのは、サンプラスのようにすごいスピードのサービスやフォアの強打のアプローチで相手のリターンやストロークを崩してボレーに出るというアメリカン・スタイルではなく、あくまでもボレー勝負のスタイルで、スライスサービスや、スピンサービスで相手を崩し、あるいはスライス系のアプローチで深くコントロールして前に詰め、相手のパッシングショットとネット上で勝負するという実に男臭いスタイルだ。 200キロ超のハードサービスに、ボレーの能力という意味で言えば、サンプラスの方がすごい、となるが、ラフターのようにコントロールされたサービスとアプローチで技と度胸でボレー勝負、というのも見ていて面白い。今日のヘンマンはそのミックスのスタイルに近いが、ラフターの方がストロークの能力が高く、また、ボールに対する執着心の強さ、絶対的なフィジカルのタフさではヘンマンより上で、彼が全米を2連覇、ウインブルドンでも2度の決勝進出の実績があることを考えれば、「最高の」と誰かが言いたくなる気持ちも理解できる。この場合、サンプラスはサーブ&ボレーヤーのカテゴリーではなく、オールラウンダーとして、評価の対象範囲外にいると考えていだたくとよかろうと思う。 最初に戻るが、最高かどうかを決めるのはファンだと調査団では考えている。今はラフターとサンプラスが俎上に上がっているが、ファンの中には「何を言ってるんだ? 最高のサーブ&ボレーヤーなんて、マッケンローに決まってるじゃないか」とおっしゃる方だって少なくはないはずだ。そして、それらは全て間違いではなく、それぞれの心の中で「最高の選手」が存在してもいいと考える。
依頼内容531:サンプラス対アガシ、サンプラス対ヒューイットの試合のビデオを毎日のように見て勉強しています。この二つの試合を見て思うことはズバリ、アガシとヒューイットのリターンの種類です。アガシはずんずん前に出てライジングでしかもスピードのあるリターンを、ヒューイットはスピードはアガシほどではないけれど鋭角に正確に返すリターンでした。 アガシのリターンは前に出てタイミングが早いせいかエースやラケットを弾くようなリターンもありつつ、ファーストボレーを打たれるとぎりぎり追いついてロブで逃げるというシーンが多かったです。ヒューイットはリターンにそれほどスピードがないからか、そして足が速いということもあると思いますがファーストボレーを拾いまくってパスで抜くシーンが多かったです。そこで質問なのですが、サーブ&ボレーヤーと対戦するときはアガシとヒューイットのリターンのどちらを参考にするべきでしょうか。個人的にはアガシのリターンのほうが派手でかっこいいと思っています。
報告531:これまた、ご自身と対戦相手によってどっちが正しい、と杓子定規に言える種類の話題ではないが、依頼者がアガシの方が、とお考えなのであれば、アガシ流を練習されるのもいいだろうし、どうにもそれでは違和感がある、となればヒューイット流にしてもいいだろう。そうやって練習されている間にご自身の流儀やスタイルもできあがっていくだろう。選手を参考にしたい、という場合、その選手のコピーになるのではなく、あくまでも自分のスタイルに合わせていいとこ取り、というスタンスでよろしかろうと考える。 とにかく、全てにおいて「○○すべき」などというものは、テニスにおいてほとんどない、という基本姿勢を持っていて欲しい。そうでないと、あらゆる心身の柔軟性が失われ、起きた現象に対処する能力が損なわれる原因にもなる。決まった出来事に対して一定の回答を出し続けていく能力というのは反復練習によっていくらでも磨けるが、テニスで最も求められているが、鍛えるのが非常に難しいのは、実は、色々に起きる現象に対して瞬時に判断して、適切な対処をする能力なのだ。テニスはこの能力を元に、反復練習によって培われた技術を適切に使用していくスポーツと考えて欲しいと願う。
依頼内容532:ソフトテニスをやっていて、最近硬式を始めたのですが、バックで打てません。ウェスタンのバックハンドってどんなものでしょうか? フォアと同じ面で打ってもいいのですか?
報告532:軟式と比べると硬式はラケットもボールも重い。まずはここが肝心なポイントだ。軟式時代にもし、きちんと全身の力を使ったバックハンドのスイングが出来ていなかったとすると、硬式で同じように打とうと思っても、ラケットは振り切れないし、ボールは飛ばないし、という具合になっているのではなかろうか。 軟式のラケットやボールは軽いため、腕だけで払うように打っても(いわゆる手打ち)、ある程度ボールは打てただろうし、多少打点が狂ってもいくらでもごまかしが効いただろうが、硬式の片手バックでは、打点が少しでも遅くなればフィリポーシスだって叩ききれない。硬式の場合、意識としてより強く求められるのは、最も力が入る前の打点でボールを捕らえることであり、腕の力だけでなく、ある程度以上全身を使ってスイングのパワー(トルク)を作り出してインパクトすることだ。また、ラケットの重さを利用するという考え方もここには必要となる。機会があれば一度、テニススクールの門を叩き、教わってみてもいいと思われる。 ところで、同じ面で、というお話だが、別に何の問題もない。それでボールがきちんと飛び、コントロールもでき、身体のどこにも違和感がない、というのであれば、テニスでやってはいけない、というものはない。実際、フォアもバックもウエスタンのワングリップでストロークをするという選手だって最近は少なくはない。ただ、グリップが厚い分、より打点を前にしないとうまく力が入れにくいだろう。
依頼内容533:ステファン・エドバーグは今何をしているんでしょうか? 高校生の頃、90年前後ですね、大好きで来日した時は大会見に行ったり、いつも ビデオ見ていました。教えて下さい。 最近妙に気になるんです。どうぞお願いします。
報告533:ステファン・エドバーグ。彼の全盛期には本誌は「月刊エドバーグ」と業界内で言われていたほど詳しく彼の動向についてお伝えしていたものだったが……。 最近の彼はというと、TV解説などで忙しいマッケンローやヒンギスのようには実はあまり精力的な活動をしていない。引退後は家族と共に静かな暮らしを望んでいた彼はチャリティ目的以外のエキジビションや、シニアトーナメントにはあまり出場したりせず、表には滅多に表れないため、ニュースソースにもほとんど上がってこない。これは日本のファンの実感からすると意外かもしれないが、実はアメリカではおおむね「スポーツマンシップに優れた素晴らしい選手だったが、地味な印象の選手」という位置づけで(彼がアメリカ人にとって外国人であること、彼が活躍していた当時、アメリカ人選手にライバルと呼べる存在がいなかったことなどが原因といわれる)、彼のニュースが英語系のメディアに乗ることが少ない、というのも原因だろうと思われる。 さて、先日(04年7月)にアメリカのテニスの殿堂選手に選ばれ、その表彰式に姿を見せた。この時にいくつか今の彼に関しての情報が出てきているのでまとめてお伝えしておこう。 ● 彼の今の活動は基本的にスウェーデン国内での活動で、以前に設立した基金の運営と、学校とテニスの両立を実現したジュニア育成のためのアカデミーを設立し、スウェーデンの元デ杯監督と一緒に運営していること。 ● 時々はアカデミーのコートに立ち、14〜18歳ぐらいのジュニアたちを指導していること。 ● 持病の椎間板ヘルニアの影響で、シニアツアーなどのトーナメントに出る意志はないこと。また、テニスの他には、時々スカッシュを楽しんでいること。ただし、まだまだ若いジュニアたちと試合ができるだけの体力はあるよ、と自身では語っていること。 ● チャリティイベントに顔を出すことや、地元スウェーデンの大会のオブザーバーを務めるなどの他にはあまり表に出る活動はしていないこと。 ● 娘のエミリーちゃんが現役時代の父親をほとんど覚えていないことが少し残念である、と感じているらしいということ。テニスの殿堂に選ばれたことで、今後は少しずつわかってくれるのではないか、と密かに期待していること。 ● これは少し前の話だが、イギリスのチャリティイベントのエキジビションマッチに出場し、現役のビヨルクマン相手に勝っていること。 ● フェデラーが子供時代に彼をアイドル視していた、と語ったことや、今のツアーに彼のようなサーブ&ボレーヤーがいないこと、また、テニスに限らず、スポーツマンシップに溢れた選手が少なくなっていることなどから、エドバーグを再評価するムードがアメリカで大きくなっていること。 以上が今のエドバーグの大体の情報だ。 また、何か出てきたら本誌の中で折に触れて報告したいと思う。多分、それが本誌の彼に対する仁義の通し方でもあろうから……。
依頼内容534:エッグボールはどんな原理であんな弾道を描くんですか また、打ち方は?
報告534:ここではエッグボールというボールの定義を、強烈なトップスピンをかけて相手を後ろに押し込むボールのことだとしたい。 原理としては高い軌道を描いたトップスピンでかつ、回転量が多ければ、ボールには下向きの変化が大きめに出てくることになる。高く軌道を描くぶんだけボールの持つ位置エネルギーは大きく、また、トップスピンによって下向きの軌道を大きく与えられたボールのコートに対する入射角は垂直に近づく。したがって高く跳ねる、という理由だ。 そして、ボールのバウンド地点がコートの深くであれば、相手はライジングで取るか、大きく下がって打たざるをえなくなるため、チャンスメイクをしやすい、ということになるわけだ。 まずは打点を前に取り、思い切ってトップスピンをかける練習からスタートしてみて欲しい。スピンをかけすぎればボールは上がらず短くなりやすくなり、フラットにしすぎれば十分な高さと安定感が取りにくくなるだろう。何度も打つことでそのバランスが取れる打ち方が見つけられるはずだ。
依頼内容535:程度の低い質問なので恐縮ですが、選手の名前は雑誌やテレビの放送局によって名前の読み方が違う選手がいますよね?例えばフェデラーはWOWOWだったらフェデレ、サフィンは雑誌によってはマラトだったりマラだったりもします。なぜ選手の名前の読み方を統一しないのでしょうか。よろしくお願いします。
報告535: いや、この問題はわりと永遠の課題で、程度が低くなどない。ただし、この件に関しては遠い昔に一度報告したことがある。一度過去ログも参考にしてみて欲しいが、別々になっていることに合理的な理由は、ない。しいて言えば、統一しようにもできない、というのがその回答となる。 統一するためにはどこかの表記に全てのメディアが合わせる必要が出てくるわけだが、メディアというのは、テレビ、新聞、雑誌全て別々の団体であり、記者も別々。それぞれに独自の基準と考え方が存在し、また、どこかが正しくて、どこかが間違えているという種類の問題でもない。読者の皆様、視聴者の皆様にはご迷惑をおかけしていることといつも我々も感じているし、恐らくそれぞれのメディアの中にも同じことを感じているはずだと思われるが、こればっかりは仕方がない。野球のように機構や協会が登録名として共通の表記でも提示しなければ、恐らくこの先もこのままの状態となるだろう。 ちなみにこれは海外でも同じで、選手が「僕のことはこう発音してくれ」と特別なステートメントでも出さない限り、それぞれ自分の国の読み方で呼んでいる(ちなみにF1のミハエル・シューマッハーはわざわざ記者会見まで開いて「僕のことはマイケルと呼んでくれ」と言ったことがあるらしいが、どこも改めていないようだ……)。アガシなど、どの国でもあまり発音上大差のない選手はともかく、マーチンがマルティンになったり、エナンはヘニンだったり、エナッだったり、エニンだったりとバラバラなのだ。ちなみにヒンギスがインギスと呼ばれている地域もある。一応、母国語は尊重はされるが、「何言ってんだ、俺の国ではMichaelはミシェルなんだぜ」となっているケースは世界的にみて非常に多い、というかそれが普通なのだ。もちろん、ほとんどの選手もそういう文化で育っているので、気にする選手と、そうでもない選手がいる。 また、渾名や愛称も色々で、フランスではエナンに「アレ! ジュジュ!!」と声援が起きるし(ジュジュはジュスティーヌという名前の子供読みの愛称。吉田くんならよっちゃん、美代子ちゃんは、みよちゃんなどと近い感覚だ)、シャラポワはマリアのロシア語でのマリアの愛称である「マーシャ」にならい、「カモン、マーシャ!!」という声援が飛ぶ。ミスキナのアナスタシアはロシアではナスチャとなるが、アメリカではステイシーだし、ビーナスもフランスでは「べなすorべぬす」と呼ばれることが多いようだ。 本誌の場合、仮に選手に呼びかけたとして、「自分ノコトデハナイ」と思われないように表記することを基本方針にしている。また、基本的には選手の使用している母国語に近い表記になるように勤めているが、選手が自分の呼び名に関して何らかのステートメントを出したことのある選手に関してはそれにしたがっている(ドキッチやエドバーグなど)。 また、ATP、WTA共に難しい読み方の選手に関してはガイドラインを出しているので、それにも従うようにしている。 それらのない選手で、どう呼んでいいか判然としない選手に関しては、とりあえず英語読みを当てはめておいて(テニス界の共通語は英語のため)、その後判明次第変更することにしている。例えばKim Clijstersは当初、本誌でもキム・クリスターズと表記したが、その後クリステルスに改めた。これはクリステルスとクライシュテルスのどっちがいいのか? とWTAの広報に確認した結果、「どっちでも大丈夫」とのお墨付きをもらった結果だ。この時に「そのどっちでもいいが、クリスターズはちょっと違う」と言われてもいる。ちなみにこの後、ベルギーの記者にも確認したところ、「どっちでもいいが、アメリカ人はクリスターズとしか発音できねぇんだよなぁ(笑)」と言っていたことも合わせて報告しておこう。 最近で最も混乱したのはオランダのフェルケルクで、03年全仏でオランダ人の記者に現地に行っていた記者が確認した時にはベルケルクと頭が濁って発音されていたのでベルケルクになりかけたのだが、すでにWOWOWさまが中継でフェルケルクとしており、当時の彼の知名度を考えると本誌だけベルケルクでは誰だかわからなくなるのでは?